【book】死影 :マイケル・マーシャル
■死影 THE STRAW MEN 2002年
■マイケル・マーシャル〔著〕/嶋田洋一〔訳〕
■ヴィレッジブックス ISBN: 4789725588  →amazonで詳しく見る



突然の事故で両親を亡くした元CIAの男が、両親の死の真相を探ろうとする。「私たちは生きている」謎のメッセージと古いビデオテープが残された手掛かりだった。一方、少女ばかりを狙った連続殺人犯の行方を探す元刑事。彼の娘も犠牲者だった。一見、重なることのなさそうな2つの話。結末はどこへ——。

あーなんかすごくよかった……。

禍々しさと絶望が同居した複雑なサスペンス。読めば読むほど怖くなる。こういう小説がずっとずっと読みたかった。多分、この一冊が私が読んだ中で今年のベスト・ワン。

昔、ある街で起きた銃の乱射による大量殺人事件がプロローグ。
そして唐突に話は始まる。元CIAのウォードが、元同僚のボビーとともに、両親の死の真相を探る話。娘を連続殺人鬼に殺された元刑事のザントと、FBIの刑事ニーナがそれぞれの目的から犯人を追う話。読んでも読んでも、この2つの話がなかなか絡み合わない。終盤近くなったところで、やっと一つのキーワードで繋がっていくのだが……。

ウォードのパートは、ウォードによる一人称で語られる。ザントのパートは三人称だ。読んでいて複雑さを感じる構成ではあるが、ただそうした構成のためだけの技巧ではなく、これも伏線としての意味がある。物語の綿密に織り込まれた小さなピースがいくつも重なり、謎が謎を呼んでいた筈なのに、気がつくとピタリとあるべき場所に収まっていた。クライマックスになって解き放たれた謎が結末へ向っていくのは、読んでいて泣きたくなった。どうしようもない絶望感。怖くてたまらなかった。

手抜きしない細やかな描写も読みごたえがあっていい。何が隠れているかわからないのでワクワクしながら手からこぼれないように大切に読んだ。絵的に印象的なシーンもたくさんあって楽しめた。また、キャラクターたちもいい。キャラクターたちの感情を、細やかにきちんと表現できない物語は失格、と私は思っている。感情移入なんていちいち出来なくていいから、その話の中の誰がいつ何をどう感じたのかわからないと駄目だと思う。この「死影」もそういうところが肝で、私は好きだ。

最後の部分は、中途半端に説明的で、その割には薄く感じるかも。ただ、さほど不満なオチというわけでは無く、これはこれでいいのだとも思うが、「これはちょっと……」と思う人がいても仕方なさそうだ。ただ、訳者あとがきによるとこれは三部作の第一作目だそうで、続きがあると思えば納得もいく。


Posted: 土 - 10月 29, 2005 at 03:22 AM

© 2004 yuminax