【book】記憶の食卓 :牧野修
■記憶の食卓 2005年
■牧野 修〔著〕
■角川書店 ISBN: 4048736442  →amazonで詳しく見る

名簿屋で働く折原は、ある名簿の中に自分の名前を見つける。薄っぺらな名簿に14人の名前と顔写真。一体何の名簿なのかさっぱりわからない。名簿に載せられている人物の共通点は、連続殺人事件の被害者が何人かいること。折原は調査をはじめるが……。


牧野修、これは久々に良かったです。怖い。気持ち悪い。系統的にはもうちょっとファンタジックな方が好みなんですが、この話はかなり良く出来ていて好きです。

知らなければ良かったと思うほどの罪ってなんだろう。自分がしてしまった何か、思い出せそうで思い出せない何か……。記憶のしっぽを掴みそこねた時の気持ち悪さったらない。それが何か恐ろしいことに繋がっているとしたら。

主人公・折原も何か思い出せそうで思い出せない。今回出てくる人物達は、「食」に何らかのこだわりや感情を持っています。折原はチャーハンがなぜか食べられない。でもその理由を思い出すことができません。名簿に載っているうち、まだ生きている人物たちを探して歩きます。それぞれ「食」に関して問題があるわけですが、一人に会う度に怖い展開に……。

また、折原のパートとは別に「食べること」に不快感を持っている少年の話が平行して語られます。こちらも不思議な感覚の話で面白い。10代の頃は私も食べることに否定的だったので、何となく気持ちはわかるように思いました。どちらかというと、メインである折原のパートよりもこちらの方が盛り上がり方がすごくて、好みだったかも。手の平にうっすら汗をかくほど怖かった。

メインの折原の話の方は、次から次へと予想外の話に転がっていって、最後の手前で「何だそりゃ」な感じ。あーまたいつものわけのわからないパターンかしら……と思いきや、最後はキレイにまとまっていました。今回はとても着地が美しかったように思います。ものすごい展開の割にはあっさりしたラストですが、「読んだ」というスッキリした気持ちになったので良かったです。

ところで、牧野修のどこが好き、と聞かれたらイチもニもなく、彼のセンスなわけですが、

——生きていることの肌触りをどこかで薄気味悪く感じている遠藤でさえ、感動に似た何かを感じていたのだから……(本文47ページより)


今回もこの一文で凍りました。こういう感性が好きです。この一文のためだけでも、あー読んで良かったなあと思ってしまうわけで……。そんな風に思える作家さんてあまりいないので、いつもなんだかんだと文句をつつも、唯一の存在だなと思っています。


Posted: 日 - 12月 18, 2005 at 01:01 AM

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