【book】残像 :ジョン・ヴァーリィ
■残像 1978年
■ジョン・ヴァーリィ〔著〕/冬川 亘・大野万紀〔訳〕
■ハヤカワ文庫 ISBN: 4150103798
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個人の記憶を保存する〈記憶キューブ〉とクローン技術により、死からの再生が可能となった未来の話「カンザスの幽霊」。水星の美しい風景を舞台にクローンの姉弟の話「逆行の夏」、〈共生者〉とともに土星の環で生きていく者達の芸術を描いた「歌えや踊れ」。そして、三重苦の人々で作り上げられたコミューンの新しい文化を描いた表題作「残像」等、SF作品9編の短編集。



最初に読んだヴァーリィがこれでした。
今は古本じゃないと手に入れにくいんでしょうか。これ面白いんだけどな。

短編集全体の印象を一言であらわすなら「フラワー」。70年代独特の、フラワーチルドレン的な感覚に溢れているというか。SFならではの発想の柔軟さに加えて、精神的・肉体的な自由さがあります。どの作品も既成の考え方からは少し外れた倫理観を持つ未来を描いています。
例えば、それが自分と自分のクローンの特殊な関係であったり、性別をファッションとして捉えるなど、とにかく破天荒です。そういう「縛られない」ところがヴァーリィの面白さなのだとも思います。結果的に私の持つモラルや生理的嫌悪感にひっかかる作品も多かったんですが、それでもなぜかこの本好き。とんでもないことを当たり前のように書いていることに抵抗しつつも、それを楽しみながら読む本なのかもしれません。
一番、私の好みに合っていたのは、斬新な時間旅行物の「空襲」。何らかの特殊部隊が作戦遂行に向けて動き出すところから唐突に物語は始まり、何が何なのかわからないまま話が進行していきます。遥か未来の人々の残酷な運命、その醜悪さがいいと思いました。何も考えずに素直に読めたのはこの作品だけでした。表題作となった「残像」は、いい話だとは思うんですが、共生社会の中で疎外感を持つ主人公の気持ちが理解できず、また彼のとった解決方法も私には理不尽に思いました。読んだ後のむなしさがたまらなかった。
(2000.03.02/2005.12.02加筆修正)

Posted: 金 - 12月 2, 2005 at 02:16 AM

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