21-May-08, Music of Steve Reich - Concert #1重苦しい和音の響きとともに「Daniel
Variations」の演奏が始まった瞬間、そのただならぬテンションに一瞬ひるみ、空気の中にじわっと拡がった苦味をのどの奥に飲み込もうとしていた。
待ち焦がれたスティーブ・ライヒ公演を前にして、ある種躁状態だった私をなだめ、諭すかのように第一楽章が淡々と進んでいく。日本初演となる「Daniel Variations」。CDでその演奏を聴いた時から、とにかくその重さと厳しさの印象が強い。特に第一楽章と第三楽章はマイナーキーで、なおかつテンションコードが連なるタフなセクション。ライヒが選択したテキストの持つ意味と音楽的不穏感が相乗的に溶け合い、これまでのライヒ作品の中でも重厚さではトップクラスのものができあがった。片や対照的に第二楽章と第四楽章は穏やかなメジャーキーで、パルスの上を比較的隙間を保ったフレーズが様々に形を変えながら演奏されていく…。とにかく、目の前でライヒの曲が演奏されているという事実に対する喜びがあると同時に、この曲の持つ何か簡単に近づけないような威厳というか、威光というか、そういったものに気圧されないように張り詰めているうちに、演奏が終わっていたというのが正直な感想だ。 * * * マレットが振り下ろされる。 パルス。 ついに始まった。 あの60分間が、これから目の前で、生で展開される。 そう思うだけで身体に震えがくる。口元が緩む。 作曲家ライヒの代表作であり、クラシック音楽の文脈だけでなく、その創作のスタイル(口頭伝承)や機能的に配置された楽章構造など、あらゆる意味でエポックメイキングな作品である「18人の音楽家のための音楽」。約60分間切れ目なく演奏されることによって築き上げられる巨大な建築物の細部に目をこらせば、時にチャーミングで、時にナイフのように鋭い様々な創意がちりばめられていることを確認できるだろう。そうした細部へのまなざしとは角度を変えて、俯瞰/鳥瞰でとらえることによって見えてくるゆったりとした力強い流れ、セクションからセクションへの推進力を感じることもできるだろう。と同時に、メロディアスでなおかつダンスミュージックのクリエイターたちも虜にしたリズミックなシークエンスパターンは聴き手に対して非常に直感的にダイレクトに伝わる特徴を持っている。この日の演奏は、アンサンブル・モデルンに若干の堅さが感じられたが(モデルンによる演奏を納めたCDでは、その軽やかな演奏が印象的だったために、余計にそう感じたのかもしれない。)、それを差し引いても初「18人」の自分にとってはやはり衝撃的な音楽体験だった。 * * * 演奏が終わってロビーに出てみると、皆一様に興奮が隠せない様子。見かけたひとりの女性はその目を潤ませて、油断をするとこぼれ落ちそうになる涙を抑えながら熱心に感想を口にしていた。 * * * 明日もまだある。もう一度これが聴ける。 そう思うと自然に笑みがこぼれてしまう。 Posted: 木 - 7月 3, 2008 at 02:17 午前 | |
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