「島根デー」

「しまねの地酒フェア 2008」というイヴェントに招待していただいたので、
会場の有楽町「交通会館」に出かける。
招待客は名刺を名札として胸につけることになっているらしく、
別に取材に来たわけでもないのに、会社の名前を背負って利き酒をするというミョーなことになった。

ぼくは島根県松江市の生まれで、生家の向かい側が米田酒造(「豊の秋」)という造り酒屋だった。
だから、というわけでもあるまいが山陰の酒が好きで、
世間ではあまり認知されていないが、島根・鳥取は全国でも有数の酒どころだと思っている。
今回ぼくのところに招待状が送られてきた理由は定かではないが、
中国山地の山あいにある木次(現・雲南市)に佐藤忠吉さんという方がおられて、
有機農業の取り組みの一環として、
「八反ながれ」という古い酒造好適米を復活させて無農薬で栽培し、
それを原料に地元の小さな蔵(木次酒造「美波太平洋」)で「斐伊川おろち」という酒を醸している。
その佐藤さんと親しくしていただいているので、そんなご縁もあって誘っていただいたのかな、とも思う。

ぼくが松江にいたのは9歳まで(東京オリンピックの年)で、
大学を出るまで育った広島、仕事で前後17年を暮らした北海道での生活の方が長い。
現住所の東京も、前後二回勤務した合計がもう13年になり、いまや「本籍地」でもある。
にも関わらず、「故郷」といえばやはり松江であり、自分は「島根県人」だという意識が強い。
(二つ違いの弟になると、このあたりの意識はたぶん全く違うだろう。)
米は横田(現・奥出雲町)で無農薬栽培した「仁多米」を毎年送っていただいているし、
醤油はやはり奥出雲町の「井上醤油」(昔ながらのやり方で2年間熟成させたもの)を使う。
休暇のときに「帰省する」のはまず「第二の故郷」で家のある釧路なのだが、
そうでなければ島根県に行ってしまうことが多い。
両親が広島で健在なのだが、そちらにはあまり寄りつかない…考えてみれば親不孝な話ではある。

「しまねの地酒フェア」には22の蔵が出展し、純米や大吟醸を中心にした自慢の酒の味見ができる。
知る人ぞ知る「簸上正宗」(奥出雲町)など飲む機会が比較的多い銘柄以外にも、
出雲市の「十旭日(ジュウジアサヒ)」や「天穩」が意欲的な酒造りをしていることを知ることができた。
また、「豊の秋」「李白」の陰に隠れて印象が薄かった松江の酒「國暉」の充実ぶりにも目を瞠った。
「隠岐誉」は日本酒も旨いが、「海藻焼酎」と銘打った「わだつみの精」が美味しいことに驚いた。
わだつみの精
これは米と海藻、米麹を原料に(ラベルに「海藻30%以上使用」とある)樫樽で長期熟成させたもので、
まるでアイレイ・モルトのような強烈な香りがする。
類似のものを思いつかない極めて個性的な焼酎で、一目惚れ(一口惚れ?)して一本買い込んだ。

ほろ酔いで日本橋まで歩いて、
島根県の物産を集めた「にほんばし島根館」(三越本店の向かい)で、
井上古式醤油、サバフグのたたき(美味!)、フグ皮の刺身、エボダイの一夜干しを買って帰り、
萬祥山窯(出雲市)のぐい飲みで一杯やった。
酒は千葉県の「不動」の口を切ったのがあったのでそれを飲んだが、
さながら「島根デー」であり、久しぶりに「ふるさとの香」に酔った。
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