夕張医療センターの一年

「夕張医療センター」が無事一年を生き延びて、きょうから二年目に入った。

破綻した夕張市立総合病院の経営を引き継いだ村上智彦医師が、
去年4月1日に開設したのが「夕張医療センター」である。
かつて170床あった総合病院を19床の診療所にダウンサイジング、
老人保健施設を併設し、訪問診療に力を入れることで地域医療の再生に取り組んできた。
財政破綻した夕張市からは一銭の金銭的補助も受けられない、
伊関友伸城西大学准教授の言葉を借りれば「日本一苛酷な公設民営化」であった。
一年たって、
重油の値上がりなどで光熱暖房費が膨れ上がり苦しい赤字決算にはなったものの、
その一方で「地域医療の再生」は村上医師の描いたプラン通りに進んでいる。

ぼくたちは去年の秋に放送した「NHKスペシャル」で、
老人保健施設に入所したお年寄がリハビリを通して見違えるほど元気になっていく様子を描いた。
それがいまは、
元気を取り戻したお年寄たちが自宅に戻り、
「訪問診療」「訪問看護」「通所リハビリ」「ショートステイ」など
考えられる限りの手立てを尽くしてお年寄の「生活の質」を支える段階に入っている。
医療の役割が「治療」や「回復」に留まらず、
高齢になって障害を抱えても「どれだけ快適に暮らせるか」がテーマになっているのである。
村上医師の考える「地域医療」は従来の「医療」の枠には収まり切らないもので、
医療を梃子にした「地域の再生」をも見据えている。

そういう理屈はともかく、
お年寄が見違えるほど元気になっていることに目を瞠る。
去年の夏の終わり、老人保健施設に入所するところを撮影させていただいた93歳の男性。
その頃は車椅子に坐ったままでほとんど身じろぎもせず、話しかけても答えは返ってこなかった。
失礼ながら、このまま枯れていき、亡くなる方なのかと思っていた。
(後で聞けば、先生方もそう思っておられたとのことである。)
それが、いまは村上医師と冗談を言いあい、
13歳から菓子職人として昔気質の親方に鍛え上げられた、その思い出話に興じるのである。
こうした姿がまさに「地域医療の再生」を具現化したものであり、
高齢化が進む「地域の再生」にもつながっていくのだろう。
経営やシステムの問題として医療再生を語るよりも、
人間の可能性のドラマとして再び「夕張医療センター」を見つめてみたくなった。
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