古い奴だとお笑いでしょうが…

出張から帰ってきたら、今年最初の薔薇が満開だった。
最初の白薔薇
剪定するつもりだった枝を蕾がついたので残したものだ。
伸び切った枝の先で真っ白な花が重そうに揺れていた。

夜は京橋のフィルムセンターにやくざ映画を観に行った。
マキノ雅弘晩年の秀作「昭和残侠伝 死んで貰います」である。
ぼくの裡にはもともと「古い日本人」の部分があるが、
年齢とともにそれがだんだん表面に浮かび上がってきたようだ。
「死んで貰います」は東映仁侠映画群のなかでもとりわけ好きな一本で、
1970年の製作というのがいまとなっては意外なほど、新しいものは何もない映画。
コクのある描写は「伝統芸能」そのもので、やくざ映画というより人情劇・世話物の印象である。
荒木道子の盲いた母と高倉健…生さぬ仲の母子の交情。
主筋の高倉をかばおうと敢えて人前で殴って見せる板前の池部良(安宅の関の弁慶である)。
優男だけにどこか「遊び人」らしい色気を漂わせた池部が、
流れ者が先代の主に拾われ堅気として暮らした十数年の恩義に報いようと死地に赴く。
止める高倉に「これが男の花道です」といいながらドスの封印を切って「ご一緒させていただきます」。
いい芝居だね、見せ場だね。
大向こうから声がかかりそうだ。
そして、殴り込みに行く高倉を止めたい気持をぐっと堪えて、
「死なないで。そして、これからは私だけのための義理と情に生きて」と見送る藤純子の芸者。
泣かせるね(この頃の藤純子は、まさに零れんばかりに美しい)。
…ここには新しいものはなにひとつとしてない。
だがマキノ雅弘の熟達した腕で古い世界の情緒をたっぷりと見せてくれれば、他には何もいらない。
スクリーンに展開するいたって古風なドラマを見つめながら、心地よい酔いに身を委ねるだけだ。
日本人でよかった、ね。

こんな映画をみた夜は、古くて静かな酒場で盃を傾けたくなる(もちろん日本酒でなければならない)。
最近、近所に格好の店を見つけた。
「播州」といい、70歳前後の主と姉弟、親子三人でやっている小さな店だ。
播州
まるで骨董品みたいな雰囲気が好ましい。
戦後すぐからある建物で、いまの主が経営するようになってから既に45年たつという。
なんでも晩年の井伏鱒二(荻窪在住で著書に「荻窪風土記」がある)も通ってきたらしい。
三十代の息子が作る料理は洒落すぎず、それでいて味は一工夫あって旨く、値段も高くない。
荻窪駅のそばの中央線の線路沿いにあるのだが、
通勤路から外れているので長いあいだ気がつかずにいた店だ。
温燗の酒を嘗めながら(こういう店では、やっぱり冷より温燗がいい)、
細魚の刺身、鯛の刺身の荏胡麻あえ、蛸の子を炊き込んだものなどをつまんだ。
…日本人でよかった、ね。
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梅は咲いたか桜は…

ここ数日のあいだに丹波はめっきり春めいてきた。
午前中は連日深い霧に覆われているが、午頃には晴れて、暑いくらいになる。
コートなんか着ていられない。
市内の公園では、陽気に花のつぼみがほころんだ。
花
ぼくは花の名前には疎いので、これが梅なのか、桃なのか、それとも桜なのかワカラナイ。
「風流」を気取ろうにもこれでは情けないが、いずれにせよその類の花には違いない。
春の足音がもうすぐそばに聞こえてきた…
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テレビのない宿

今回の出張は日本旅館に泊まっている。
丹波市春日にある「丹波の宿・恵泉」という旅館で、
古い日本家屋が好きなぼくはホームページの写真を見て気に入って予約をとった。
恵泉
こういう宿に泊まると落ち着けるのである。
意外なことにキリスト教の教会が経営しているらしいのだが、部屋にテレビがないのも気に入った。
テレビ屋のぼくがいうのもなんだが、テレビなんぞは五月蝿くってイケナイ。
一週間に一度か二度、見たい番組があれば見る。
あとはないに越したことはない。
ぼくの場合、仕事に出ているときは、
酒を飲んでいるか読書、さもなければパソコンに向かって夜の時間を過ごす。
テレビを点けることはまずないので、ま、あってもなくっても同じことなのだが。

ビールが大嫌いなアサヒドライなので、我が侭を言ってサッポロ・ビールを入れてもらった。
酒は地元の「玉つるぎ」。
有機野菜や合鴨など地元の食材を使った料理も旨い。
(ぼくには量が少な過ぎて辛いけれど…)
ごはん(米)がとても美味しくて、
地元の農家が農薬と化学肥料を従来の半分に減らして栽培しているものだという。
宿の人もなんとなくおっとりしていて、「ほっ」とするので、ちょっとばかり酒を飲りすぎた…(笑)。

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「今あなたがここで倒れたら」

兵庫県丹波市にロケに来ている。
今回のロケの最大の目的は、
丹波市内の開業医が中心になって結成した市民グループ「丹波医療再生ネットワーク」が
医療危機をテーマに「映画」を作っているので、 その撮影の様子を撮ることだ。

この映画は「医療再生ネットワーク」のメンバーである歯科医の和久雅彦さんが台本を書き、
地元のアマチュア劇団員を起用して作るドラマ仕立ての短編(20分くらいになりそう)である。
題して「今あなたがここで倒れたら」。
老いた父親が突然脳梗塞で倒れ、
しかし、医師不足のため、地元で救急の受け入れができないという物語で、
医療の危機を広く市民に知ってもらおうというものだ。

きょうは、こちらの撮影が一段落したので、本業はちょっとお休みにして映画作りを手伝った。
「いまあなたが倒れたら」
監督兼カメラマンは地元の民放でニュースなどを撮っている人でそれなりの経験があるが、
あとはアマチュアばかりの手作りなので、悪戦苦闘ぶりを見るに見かねて手伝ったのである。
こちらは「映像のプロ」のはしくれだから、

絵作り(映像の組み立て方)のアドバイスをするくらいのつもりだったのだが、
気がつけば役者さんに演技をつけたりしていた(爆)。
もともと映画監督を志したこともあるくらいの映画好きなので、
つい夢中になって我を忘れてしまったわけである。
本業のドキュメンタリーを撮る何倍も疲れてしまったが…。
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