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ところで先生は特にお好きな町並みというのはありますか?
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私は惚れっぽくて、すぐにここはいいなあ、ここに住んでみたいなあと思ってしまって、どこが一番というのはいえないですね。
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ここは私のために用意された場所だと思うことってありますね。
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とにかく自分で探すのが一番です。
行って見て、歩いて、町の人と話をして、自分で発見する楽しみを味わってほしいですね。そのためには町の歴史を少し勉強してから見てほしいと思います。歴史といっても、年号や事件といった学校の教科書的な歴史ではなく、その町が生まれたいきさつや人々の生活の移り変りということです。
例えば京都の伏見は、今は京都市の一角に過ぎない伏見ですが、もともとは大阪と京都を結ぶ舟運の重要な拠点で、たいへん栄えたところです。
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少しでも、そういう歴史を知っていると見方が変わりますね。私は思い立って出かけ、気の向いた駅で降りて、現地の観光案内所で地図を一枚もらって適当に歩くんです。
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適当に歩くというのは町並み歩きの極意です。
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道に迷うのはおもしろいし。名所だけかけ足で見るのではなく、その途中がおもしろいんですよ。路地で出会った人達とか、小さな店で食べたラーメンがおいしかったとか(笑い)。そういうことが心に残るんですね。
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町は歩かなければ、その良さは見えてこないですからね。
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先だっても新潟の六日町に雪を見に行こうと出かけ、ローカル線に乗っていました。途中にある塩沢という駅で降りてみたんですが、古い町並みがあって、静かでいい町でした。『北越雪譜』を書いた鈴木牧之ぼくしのお墓参りをしたりして。ちょうど次の電車が来るまで楽しみました。
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目的もなくブラブラ歩くというのは旅の理想といえますね。
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また、琵琶湖の周辺はいいですね。公演に出かけて、その合間にレンタサイクルで回ったんですが、堅田の街並みはすてきでした。
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上/長浜の新しい顔、ガラスの館・黒壁
下/山車の上で子供歌舞伎が行なわれる曳山まつり
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ええ、琵琶湖の回りには歩いてみたい町がたくさんあり、民家の宝庫ですね。
古くから西日本と東日本を結ぶ交通の要所として、多くの文化や物資が行き交い、栄えたところですからね。
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近江八幡、大津、彦根もいいですね。
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湖北ではマキノや長浜も。長浜は黒壁とガラス工芸を新たな名物にして成功しましたね。たいへん賑っています。
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しかも長浜には伝統的な子供歌舞伎も残っていて、曵山まつりはすごいですね。
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岐阜県の飛騨古川の町もいいですよ。
高山の姉妹城下町で、昔の高山の様子がわかる町ですね。人口の約一%が大工で、町並み作りの調査をした時に、何をアピールするかとなった時に、やはり大工さんに頑張ってもらわないと、ということになりました。古川の大工の伝統と技術を伝えるために、飛騨の匠文化館というのを設計しまして、釘を一本も使わずに、地元の大工さんたちに造ってもらったんです。
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古川は私もいつかは行きたいと思っているところです。
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また、瀬戸内海周辺には素晴らしい町並みが濃厚に残っていますね。
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ええ。岡山県の牛窓や広島県の靹ノ浦とものうらも感動しました。
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瀬戸内海周辺には観光地化されていないところも、立派な町並みが残っています。
私は瀬戸内海文化圏といういい方をするんですが、規模は小さいものの、瀬戸内海はヨーロッパにおける地中海だと思いますね。
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海賊もいましたし(笑い)。
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地中海にはヨーロッパ文明の原点といえる部分がありますが、瀬戸内海もそうではないかなと。つまり古くから瀬戸内海は大阪との交流の窓口でしたから、日本の文化の一つの原点があると思います。そういう目で見ると、非常におもしろいですよ。
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沖縄の竹富島も楽しかったです。山羊の料理が出たり、生の海老を手づかみで食べたり。こうしてお話をしていると、宿場町から城下町、商家町、港町といろいろな顔の町並みが浮かんで、嬉しくなりますね。
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歴史的町並みには、日本の美があります。日本の文化の本質があるといっても過言ではないと思います。それを残し伝えていくためにも、皆さんに歩いて見てもらって知ってほしいですね。
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医王寺から靹ノ浦を町並みを望む(写真:広島県)
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まだまだ知らない町並みがたくさんあるような気がします。私ももっと多くの町並を見に出かけたいと思います。
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