anpo 06/10/25


集団的自衛権の洗い直し「検討」−−政府の解釈改憲=自縄自縛からの「脱却」

 安倍晋三首相は9月29日、所信表明演説で集団自衛権の行使にむけて「研究」することを明言した。安倍首相は組閣直後の初の記者会見(9月26日)で、記者の質問に答える形でこのことを表明していたが、所信表明演説での言明は歴代首相の中で初めてのことである。
 安倍首相はこう述べている――「日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法に禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即して、よく研究してまいります」。
 首相就任以降の安倍首相のこの問題への取組みは以下のとおりである。
 まず、9月26日の組閣にあたって内閣法制局長官を交代させた。この背景には「今年7月、坂田雅裕内閣法制局長官は、首相官邸の官房長官室に安倍氏を訪ね、『戦後60年、政府が積み上げてきた論理がある。歴代首相が9条を踏まえてきた国会答弁だ。憲法解釈の変更は困難です』と説いた」(「朝日新聞・10月1日付」)ことがある。この坂田氏を内閣法制局長官からまず取り除いたのである。
 次いで、同日の初の記者会見で記者の質問に対して、総裁選挙を通じて「幾つかの事例については具体的な事例を申しあげました。その中で研究していくべきことは研究していかなければならないと思います」と答えた。その趣旨は日米同盟おいて「双務性を高めていくことにつながっていくと思います。それこそが、まさに同盟においては極めて重要」だからであると説明した。
 29日、所信表明演説の後、塩崎泰久官房長官が午後の記者会見で、安倍首相が「研究」に着手する意向を示したことについて「憲法解釈や国防など複数の役所にまたがる問題ならば、首相のもとになんらかの形で勉強する場を設けるのが筋だ」と述べ、首相直属の勉強会の設置を検討する考えを示した(「日本経済新聞」・9月30日付)。
 安倍首相がこうした動きに出たのは、これまで自民党政権が解釈改憲によって、自衛隊を存在させ、その軍事力の増強を推進してきたが、その解釈改憲の論理が、現在、また今後の自衛隊の役割・任務・能力の拡大にとって桎梏となってきたことがある。いわば自縄自縛の事態に陥っているからである。言い換えるならば、これまでの解釈改憲の論理で膨れ上がった自衛隊の実態がその論理を変更しなければ機能し得ないというところまで到達したことを示している。本来ならば坂田前内閣法制局長官の言うとおり、集団的自衛権の行使に踏み出すならば明文改憲するのが筋であるのだが、安倍首相は個別事例研究という手法によって、これまで出来ないとされてきた自衛隊の軍事行動を、明文改憲以前の段階で部分的に拡大して、可能にしようとしているのである。
 こうした事態をひきおこしている自衛隊の実像について、認識を深める必要があろう。

(06年10月5日記・松尾 高志)

Posted: 水 - 10月 25, 2006 at 08:38 am        


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