anpo 06/11/05
防衛庁の「省」昇格法案の狙い
安倍首相は10月29日、相模湾上の護衛艦「くらま」艦上で「危機管理体制の充実強化や国際社会の平和と安定に取り組んでいくことは政府の喫緊の課題だ」として「防衛庁を省に移行させ、国際平和協力活動を自衛隊の本来の任務とするなど必要な体制整備を行う」と訓示した。これは3年に1回、自衛隊創設記念行事として行われる海上自衛隊の観艦式で述べたもので、防衛庁の省昇格のための法案を今国会で可決・成立させるとの決意を表明したものである。
この法案――「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」は小泉内閣最後の前国会に政府が提出し、趣旨説明をしないままに継続審議としていたもので、10月27日に政府は法案の趣旨説明を行い、国会での審議が開始されたものである。
法案の目的は二つあり、一つは防衛「庁」から防衛「省」への昇格で、これは従来の「自衛隊管理官庁」から「政策官庁」への脱皮をはかるもので、業務計画案では内局に「戦略」をあつかう新組織を立ち上げることを計画している。防衛庁は現行憲法の下で再軍備は憲法違反だとの強い世論の下、総理府(現内閣府)の外局としての扱いでしか創設できなかった。「普通の国」ではみな「省」(ミニストリー)であるにもかかわらず、それよりも格下の「庁」(エージェンシー)であることを余儀なくされてきたのである。この意味で、今回の「省」への昇格は憲法の精神の破壊行為とも言うべきものである。
それだけではない。もう一つの目的がこの法案にはある。それは従来、「国土防衛」のみが自衛隊の「本来任務」とされてきた自衛隊法第3条を改正して、周辺事態における自衛隊の作戦行動、さらにグローバル事態における作戦行動(これを「国際平和協力活動」と名づけている)を従来「付随的任務」とされてきたものから、新たに「本来任務」として格上げすることを目的としている。
このことはアメリカ軍が軍改革を行い、「対テロ戦争」を遂行していることに呼応して、自衛隊もアメリカ軍との共同作戦実施のために自衛隊改革を実施し、「対テロ戦争」に参戦していることを既成事実として認めるとともに、こうした周辺事態を超えたグローバル事態における作戦行動を今後展開していくための布石としての意味をもっていると言える。事実、「米軍再編」の名の下に実施された「同盟変革」(アライアンス・トランスフォーメーション)の協議では、自衛隊の役割・任務・能力をグローバル事態に対処すべきものとして拡大するという日米安保協議委員会(2+2)での合意文書が存在する。この日米合意を実行にうつすための不可欠な法整備の一環として、この法案が提出されているのである。国土防衛の自衛隊から海外展開任務を本務とする自衛隊への、自衛隊の性格の大きな変更がこの法案にはこめられているのである。事実、今年度の防衛白書はこのことを「新たな役割を果たしうる組織」とするための省昇格であると規定している(110ページ)。
このことは日米同盟が新たな段階に入ることに相即した法整備である。こうした安倍内閣の政策展開を傍観することは許されない情勢となっている。
(06年10月30日記・松尾 高志)
Posted: 金 - 11月 10, 2006 at 07:14 pm