anpo 06/11/15
「集団的自衛権の行使を可能にせよ」−−平和・安全保障研究所の提言
平和・安全保障研究所(西原正理事長)は10月26日、「集団的自衛権の行使へ――普通の民主主義国家としての責任を」とのタイトルの提言を発表した。同研究所は防衛庁と外務省の主管する財団法人で、この提言は理事長の西原正前防衛大学校校長、渡邉昭夫副会長・青山学院大学名誉教授、田中明彦研究員・東京大学教授の3氏が執筆したものである。
提言は従来の政府による憲法解釈によれば、「個別的自衛権の行使の限界」として「必要最小限度の防衛力」と「専守防衛」があるが、「こうした憲法解釈から導き出された厳しい制約は21世紀の日本の安全保障環境には合わなくなってきている」として、これを撤廃することを冒頭で提言している。
そして、その上で周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法が集団的自衛権の行使をしえないことから、自衛隊の軍事行動の根拠として個別的自衛権行使のみに「固執することの限界」があり、さらにまた、北朝鮮に対する国連の制裁措置を実施するうえでも、個別的自衛権行使のみに「固執することのもう一つの限界」があると断定し、「日本が普通の民主主義国家として国際社会で積極的な役割を果たそうとしても憲法上の限界に直面」しているとの認識を示している。
こうした理路から提言は安倍首相が実施しようとしている集団的自衛権行使の洗い直しについても、安倍首相の発言を分析すれば、それは「個別的自衛権拡大案」にすぎないと批判して、「個別的自衛権の行使範囲をより柔軟に拡大するという考えは限界に来ている」とたたみかけている。この点で、提言は安倍構想よりもタカ派の立場から安倍批判をしている。
提言はそれ故に「日本が責任ある民主主義国家として、そして同盟国としての役割を果たすには」「集団的自衛権の行使こそが重要であると考える」と結論づけている。
そうすれば、周辺事態法の「不自然な規定」は「不要」になり、北朝鮮への国連の制裁措置実施についても「より適切な役割分担に基づいて、米軍とともに行動することができるようになる」と提言は述べている。
そして、そのことを可能とするために、集団的自衛権の行使は合憲であるとの憲法9条の解釈変更をすみやかに実施すべきだと提言している。
その理由として提言は「長期的には」「憲法を改正して、こうした論争の起こる余地のないようにするのが賢明である」が、しかし、「憲法改正には予想以上の時間がかかる」ことを指摘している。
提言の論理は、冷戦期に確立された政府の憲法解釈――それはその時期に自衛隊の膨脹を合理化するものであったが――が、ポスト冷戦の時代に入って、自衛隊の役割が「国土防衛」から「周辺事態」へ、また「グローバル事態」へ拡大したことから、そのことを実施するうえで桎梏となっていることを示している。その意味で提言は規制事実の合理化と今後の自衛隊の役割拡大のための居直りの論理だということができよう。
(06年11月9日記・松尾 高志)
Posted: 水 - 11月 15, 2006 at 11:03 pm