スティーブ・ジョブズのいない世界にお住まいの皆さま、いかがお過ごしでしょうか。いやぁ、もうね、どうしましょうかね。いや、この先のね、身の振り方というか、暮らし方というか。「おいおいそんなこと知るかよ、オマエの好きにしろよ」とお思いでしょうが、わたくしときたら、何もする気が起こりません。起き上がるのも億劫だときたもんだ。しょうがないので、寝たまま出来る事ってことで、柄にもなく本でも読もうかと思ったりもするんだが、何しろ目が弱くなってぼんやりとしか見えないのでちゃんと読めません。ただページを何となく眺めているだけ。いやもうグダグダですな。そうこうしているうちに寝過ぎて頭が痛くなってきたので、こうしてパーソナル・コンピュータに向かって何やら文字を打ち込んでいるわけですが、自分でも何を書いているのかよく分かりません。ディスプレイもぼんやりしてますからね。もうね、何もかもがぼんやりとしている。この先もずっとぼんやりと生きて、そして、ぼんやりと死んでいくんでしょうなぁ。ふぅーっ。でもね、振込手続きとかよくわからない申請書提出など日々の事務処理や、それから一日数回の食事とか一日数時間の睡眠とか一日数キロの散歩とかその他の日常生活のややこしいことなどはみんな
iMac
とか iPhone
とか
iPad
とか
iPod
とか、あとなんだっけ、あー、Mac
Pro
とか
MacBook Air
とか
Mac mini
とか、あとはえーっと、まぁとにかくそういったパーソナル・コンピュータたちが済ませてくれているので、わたくしがすることは特に何もありません。こうして本文を書く欄に適当な文字を入れていればそれでよし。辛いことも悲しいことも何もかも忘れられます。もうね、自分さえよければあとはどうでもいい。わたくしだけが四六時中笑って楽しく暮らしていければそれでいいのです。いやまぁ、そうだといいんですけど、ホントは世の中そんな簡単には運びません。OS
を百獣の王ライオンにアップデートしようものなら、たちまちこのブログツールは起動不能に陥ってしまいます。専門的なことは割愛するとして、とにかくそういう仕組みになっているのです。新しい機能を享受しようとすれば古いツールは捨て去らなければならないのです。これすなわち野生の法則。そして、ヒトもまた野生に生きる動物であり、この起動不能という事態に自らの手で対処を施さなければなりません。百獣の王の目を掠めて、今までどおりの平穏な生活、コーヒーカップ片手にサンダル履きで口笛吹きながらブログ更新できる生活をなんとか守りとおさなければならないのです。何か良い方法があるでしょうか。はい、ありました。豹に頼ることにしました。わたくしの管轄内にはただ一つ、未だに豹が支配するマシンが残されていたのです。というわけで今、このぼんやりとした文章は、Leopard
走る
Mac
mini(これは
iMac/Lion
によって遠隔操作されている)内にインストールされた
iBlog
で書いています。
1978年、大学の航空宇宙工学研究室には、側面に力の抜けた筆記体で
personal computer
と印刷されたパッケージに入った、両手で抱えられるサイズの8ビットの卓上マシンがころがっていて、優秀な連中はこのマシンに
FORTRAN
を移植しようという試みについて検討していたけれども、わたくしの主な用途は毎日ブロックを崩すというもの。Apple
][
という名前から、このマシンはロンドン、ベイカー街の
Apple Corps
のエレクトロニクス部門の製品だと勘違いしていたんだが、誰が組み立てたにせよ、わたくしにとってこのマシンの用途は立ちふさがるブロックをひとつずつ崩していくこと。どこかに攻め込むこともできず、自陣地にドットを落とさぬように注意深くパドルを動かしながらただひたすら守りに徹し、無意識であったにしろ、やがてやってくる1984年に備えていたのです。ロンドンにも、カリフォルニアにも、東京にも同時にその津波はやって来て、すぐに世界中が浸水してしまうだろうと考えられていました。その浸水を防ぐという使命を持ちながらも、いやむしろ逆に防波堤を崩して、そのニューウェイブを全世界に浸透させようという相反する意思さえ秘めていながら、つまり何かを守ろうとしながらも、同時にすべてを破壊するカタストロフィを待ち望んでもいたのです。研究室には冷蔵庫のようなミニコンがあったし、コンピュータ室に行けば、アルファベット三文字の会社から派遣された可愛い姉さんオペレータが卓越した指使いでパンチカードを繰ってプログラムを走らせていて、学生たちはめくらめっぽうに穴をあけた手持ちのカード束の間に、自分の連絡先を書いた紙切れや、教育上好ましくないグラビアページの切れ端や、電話代の請求書や、ハズレ馬券などを挟んで手渡し、彼女は彼女自身が後生大事に守り抜いている1960年版のアメリカンスマイルを絶やさずに、出来の悪い学生たちによる意図的なバグを片っ端から物理的にフィックスしていくという光景が繰り返されていました。紙くずバグで一杯になったゴミ箱以外は一見華やかに見えるその部屋の空間というのは、実は唾棄されるべきオールドウェイブであり、それに立ち向かうドン・キホーテたちは長い槍の代わりにエレクトリック・ギターのネックを高々と掲げ、腕をぐるぐる振り回し、あたりかまわず唾を吐き、コンピュータは個人のものだ、という手書きのプラカードを持ち、隊列を組んで意気揚々と行進しながらも、結局のところは個人の力では月面への軌道を計算することも出来ないことを思い知らされ、日が沈む頃になると腹も減り、足並みも乱れ始め、考えることといったら自分の保身のことがほとんどという有様。実際にその津波が押し寄せて来た時にはすでに遅し、ほとんど全員がその荒波に呑まれ、遙か彼方へ押し流され、辺りは何も残らずに得体の知れない臭気渦巻く呪われた土地になってしまったのです。