軟骨


 「あなたは日本という国を愛しているんですか、どうなんですか、この美しい日本を愛しているのかいないのか、いったいぜんたいどっちなんだよ、はっきりしてくださいよ」なぁんて、半ばキレ気味に訊かれ、おいおいこいつは困ったなぁ、などとオドオドしながら、今はやめといた方がいいんだろうけど、グビグビっとビールを飲んだりして、酔っぱらいつつごまかしながら、何とかこの場をやり過ごせぬもんだろうかと思案中、二十代の若者と一緒に焼き鳥を頬張って、美味いもんも不味くなるような話に我が耳を傾けるフリをして、心の中では「これもお仕事お仕事、営業だよ営業」と自分に言い聞かせ、今はとにかくナンコツだよ軟骨、オヤジ、ナンコツもう一皿おかわり、こうなったら世界中のナンコツを食い尽くしてやる、店中のナンコツを全部ここへ持って来いっ、と別方向へ逆ギレしているヤマタツです、こんばんは。

 不味いと言われると、それはそれで話のタネとして食べてみたいよなぁ、などという心の余裕もどこへやら、このわたくしヤマタツの人生、まず間違いなく君よりも残り少ないんだ、不味いもん食べてるヒマはもうない、美味いもんを持って来い、美味いナンコツを持って来い、オマエのその鼻っツラを指さしながら言ってやるが、もはや不味い国になんか住んでるヒマはない、美しい国で生活させろ、愛すべき国に住まわせろっ、とさらに逆ギレヒートアップ。

 はっきりしろと言うのではっきり言うが、もちろん愛してますよ、日本。
 溢れんばかりの愛国心。愛国主義と言っていいかもしれません。日本列島を形成する各島の形を愛しているし、列島の風土も愛している。日本列島に住まう多くの人々を愛しているし、育んできた数々の芸術も愛している。誤解を恐れずさらに言うなら、日本の憲法を愛しているし、日本の政府も愛している。ナンコツを頬張りながらさらに続けるならば、北極海に面したとある国の形も愛しているし、ユーラシア大陸内陸部の小国の風土も愛している。北米大陸に住んでいるとある人を愛しているし、地中海に面したある半島国が育んだ芸術も愛している。北大西洋にある列島の憲法を愛しているし、南太平洋のとある孤島の政府も愛している。
 そして地球上で唯一国境線の存在しない大陸を愛しているし、月面ではディオファントスやオイラーといったウチの近所のクレーターを愛している。「ヤマタツさん月に帰るの巻」(2005/7/22)を参照されたし。

 ドキュメンタリー・ショウ番組(ドキュメンタリーもニュースもショウ番組ですぞ、念のため)によれば南極大陸や南氷洋では過酷な気候の中で、生きているものたちは食うか食われるかの生存競争を繰り広げているらしい。少しばかり殺伐としているように見えるかもしれないが、もちろん地球上のどこででも、この国のこの町のこの店だって似たり寄ったりだ。勝ったとか負けたとか言いながら、鳥の死体を食べている。勝つことが実は敗北に失敗していることだと思い知らずに、そして負けることが実は敗北に成功していることだと気付かずに、焼かれた鳥類や揚げられた魚類、そして煮込まれた植物や菌類、つまり他者の死体を寄ってたかってボリボリ、ムシャムシャ食べまくっている。そういうわけで、美しい日本の私は不味い神田のナンコツを愛している。
 日々の日記@。ヤマタツ生きてます。ナンコツ噛み砕きながら。

Posted: 日 - 2 月 18, 2007 at 01:26 午前      


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