待て


 失敗続きで「もうどうにでもなってしまえ」と半ば衝動的に駅のホームの端っこを目指して歩き始めるあなたへ。
 「本当はお詫びがしたかった」などという遺書を書いて、自分の首回りのサイズにベルトの輪を作ろうとしているあなたへ。
 この世での縁をすべて断ち切って天涯孤独の身ひとつになり、高所恐怖症のくせにわざわざ眼下の断崖絶壁をのぞき込もうとしているあなたへ。
 そして「あぁ、あの時こうしておけば良かった」と悔やんでも悔やみきれないようなそんな1.0未満な人生をリセットして生まれ変わりたいあなたへ。

 「おっとっと、危ない危ない」で済んでしまうようなちょっとした失敗から、「あぁなんかもうこんな世の中とはおさらばしたいぜ」ってな気分の取り返しのつかない大失敗まで、世の中のおおよそすべての失敗を積み重ねてこられたそんなあなたへ。

 今しばらくお待ちいただきたい。
 わたくしどもが、そんなあなたを夜行列車にお乗せする。
 しばし待たれよ。
 闇の色を湛えた海辺を走らせ、異界への入口に立ちはだかる山脈を越えさせ、そして夜空を映す天の川銀河のわずかな光をあなたの閉じた目元へ運ばせる。
 今しばらくお待ちいただきたい。

Posted: 日 - 2 月 3, 2008 at 03:39 午前      
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