たらいまわし・本のTB企画「第3回 全作品を読みたいor読んだ作家は誰ですか?」


おかぼれもんさん「第2回 納涼 霊の文学」で、読書体験の乏しさにうーむと悩んでいたら、第3回が始まっていました。
参加者の皆さんに比べて読書量が圧倒的に少ないので、こちらはわりと簡単に答えが出ます。
順序が逆になりましたが、LINさんの「第3回 全作品を読みたいor読んだ作家は誰?」を先に。



いきなり作家の写真です。
この写真を見る限りでは、コメディアンとして天性の資質を持っています。

1937年生まれですので、現在67歳ですね。
有名な作家ですが、写真は他に一葉くらいしかありません。
TVや公の場に出たことがないのでほとんど誰も顔を知らないのです。
したがって、J.D.サリンジャー(1919〜)とよく比較されますが、サリンジャーがもう40年前に足を洗って隠遁したのに対して、この作家は現役です(正確に言えば1997年までは...)。

一方この作家は作品の特長から、ジョン・バース(1930〜)とも比較されています。「メタフィクション」であるというわけです。バースは大学で教えたりTVに出たりして自らの作品に対しても饒舌に言及しています。「金曜日の本」というエッセイでは小説の手法についても書いています。
対してこの作家は自分の作品に対して言及することはありません(たった一つ例外があります。後述)。

そろそろこの作家の名前を明かさなければいけませんね。
彼の名前はトマス・ピンチョンと言います。アメリカ人です。
ピンチョンという姓に興味を引かれるかもしれませんが、由緒ある家系のようです。

今読める彼の小説作品を挙げておきます。

・「V.」(1963)
・「The Crying of Lot 49」(1966)〈競売ナンバー49の叫び(日本語版は短編「殺すも生かすもウィーンでは」含む〉
・「Gravity's Rainbow」(1973)〈重力の虹〉
・「Slow Learner - Early Stories」(1984)〈スロー・ラーナー〉
・「Vineland」(1990)〈ヴァインランド〉
・「Mason & Dixon」(1997)

「Mason & Dixon」以外は日本語版が出ています。
高校生の頃、「V.」の原書を辞書片手に挑戦しましたが、あえなく挫折。その後すぐに出版された日本語版の「V.」を買いましたが、日本語版でも見事に挫折(笑)。数年後再挑戦してようやく読了できました。

1984年頃、「ニューロマンサー」を書いてサイバーパンクの旗手と言われたウィリアム・ギブスンが、彼を敬愛していると漏らしたおかげで日本でも脚光を浴びますが、難解だというレッテルを貼られます。
ですが、その後日本語版が出版された初期の短編集「スロー・ラーナー」の序文「のろまな子」では、昔書いた作品について言及し、若い頃に書いた手紙などと同様、今読み返してみるとなんとも気恥ずかしいもんだと書かれていて、中年のオッサン等身大のピンチョンが垣間見られます。

この「スロー・ラーナー」や、まるでマンガみたいな「ヴァインランド」はとても読みやすく面白いので入門としてはお勧めです。



最新作、「Mason & Dixon」は血を流して建国したアメリカ合衆国の影の部分(?)に日本の読者は圧倒されるでしょう(というかテクストの量に圧倒されますね、毎度のことですが)。
すでに彼の小説のジャンルはメタフィクションとかいうジャンルを越えてしまっていて、今では「Big Novel」(笑)と言われています。

Posted: 土 - 8 月 21, 2004 at 02:00 午後      
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