|
#217
混沌の屋形船Direct:電池の話をしよう
台風にさらされてえらい目にあった日の夜11時頃、メーリングリストに「NYが大変なことになっている」という表題のメールが入ってきた。慌ててテレビを付けると(最近、テレビを見ていると腹立つことの方が多いので、サッカー以外はまず見ないのだ)、冗談かと思うほど大変なことになってた。やがてあの世界貿易センタービルのツインタワーが2本とも崩壊した。
撮影された映像はかなり遠くから望遠で撮っているのでどんなスケールなのかピンとこなかったし映画のようだったかもしれないが、一度あそこへ行ったことがある人なら震撼したはずだ。わたしも1999年にNYのエキスポへ行った際、世界貿易センタービルを真下から見上げたし、屋上へも上ったのでわかる。あれはとんでもなくデタラメにデカいのだ。
ツインタワーのみならずすでに周辺のいくつかのビルが崩壊しているし、たぶん他にも壊さざるを得ない建物がたくさんあり、地下にあった駅も潰れ、おそらくかなり広い範囲が壊滅したはずだ。犠牲になった人々と犠牲になった建物や土地の冥福を祈るものである。
・ニッケル水素電池の話
デジカメをアルカリ乾電池で動かしてる人はさすがにほとんどいなくなったと思う。もし特殊な事情があったり非常用としてその辺で買ってきて突っ込むという場合は仕方がないが、常用バッテリとしてのアルカリ乾電池利用はゴミを量産しているだけだからだ。デジカメはその構造上、瞬間的に大電流を必要とする。アルカリ乾電池はそれに向いてないため、消耗が激しく、あっという間に使えなくなる。もったいないばかりだ。
アルカリ単三乾電池は4本300円くらいで買える。それで1日持つかというと、たぶん、持たない。単三型電池4本使いのデジカメならギリギリ少しは使えるが、単三型電池2本使いのデジカメだとあっという間にアウトである。液晶モニタをオフにして撮って初めてそれなりに使えるようになるがそれでは楽しくない。
今の基本は充電式のニッケル水素電池であり、ほとんどの単三型バッテリを使うデジカメはニッケル水素電池使用前提の設計がなされているはずだ。
ニッケル水素電池は4本でだいたい1,800円。充電器込みで5,000円くらい。単三乾電池17回分である。ニッケル水素電池はまあ2〜3年は使える。年に10回以下しかデジカメを使わないという人はともかく、普通はあっという間に元が取れるはずだ。ちなみにオリンパスの調査によると、過去1年でデジカメを使用した回数は平均して38回だそうである。
ここまでは大前提。ここからが本題。
・メモリー効果を疑う前に
ニッケル水素電池を長く使っていると、その持ち具合が必ずしも安定してないことに気づくだろう。その通りである。常に同じだけ持てばいいのだが、そういう意味ではリチウムイオン充電池に比べてニッケル水素電池は不安定に見える。使っていると持ちが悪くなったり、フル充電のはずなのに意外に早く切れたりする。
これもまた以前DOS/Vマガジンの連載のために取材したときの話を元にしたり、DOS/Vマガジンで以前電池の小特集を書いた時に調べた話を元にしたりしてるのだが、まあ、Macユーザーは読んでないだろうし、DOS/Vマガジンの方ではすでに記事にまとめてしまったので、ここでそれを再利用しても問題はあるまい。
ニッケル水素電池の持ちが悪くなったとき、何が原因であるか。
1)そもそもフル充電の状態でなかった
当人はフル充電の電池を持ってでかけたつもりでも実はそうじゃなかった、というのはけっこうありがちな話だ。
a.フル充電でないのに充電器が誤解した
ニッケル水素電池の充電にはフル充電をどうやって検知するかでいろいろな方法があるが、一番ポピュラーなのは「急速充電器」である。これは一般に電圧を監視している。電圧以外にも……例えば温度も見ていたりするが、メインは電圧だ。
ニッケル水素電池の特徴として、充電していると電圧がどんどん上がっていき、フル充電を越えたときに電圧が少し落ちるという現象が発生する。ここをチェックして充電を止めるのである。
で、過放電した状態(例えば、使い切ったまま長期間放置していたとか、機器の中に入れっぱなしになっていたとか)のニッケル水素電池を充電すると、最初にグンと電圧が上がっていったん落ちるという現象が発生する。このとき充電器が「フル充電」と判断して充電を止めてしまうと、一見フル充電なのに実は違う、ということがおきるのだ。
充電器がその辺をどれだけフォローしているかが問題。サンヨーの新型の充電器は対策しているそうです。
b.自己放電していた
実は意外に多そうなのがこれ。
充電器っていったんフル充電になると、充電を止めちゃう。あとはもうほっとかれる。
でもニッケル水素電池ってけっこう自己放電をするのだ。ほっとくと少しずつ少しずつ充電した分を放出してしまう。1ヶ月ほっとくとすると、25℃の環境で2割くらい、40℃の環境では3〜4割が減ってしまう。頻繁に撮影する人でなければ電池を充電器に入れたまま、あるいはデジカメに入れたまま2〜4週間くらいほっとくのはたぶん当たり前だと思う。そうすると自己放電して減ってしまった状態から使い始めることになる。
2割というと大電流を要求するデジカメからみればかなりの量だから、自覚できるほどの持ちの悪さとして認識されるだろう。
これを防ぐには、持って行く1時間前、あるいは前夜に一度充電器を電源コンセントから抜いてまた差しなおす……これでまた充電が開始される、のが一番手軽。
2)電池を最後まで使い切れなかった
実はフル充電されていた。でも機器の方がそれをうまく使い切れなかった。このケースで一番知られているのが「メモリー効果」である。だがしかし。
a.接触抵抗のせいで電圧が下がった
一番多いと思われるのがこれ。電池はプラスとマイナスそれぞれの接点でもって充電したり放電したりする。そこでよからぬことがおきるとよからぬ結果になる。
ポイントは2つ。ひとつは接点の汚れによる電圧の低下。一番危ないのが手の油汚れらしい。目には見えなくても、何度も電池を出し入れしていると当然指で両端を触ったりするわけで、それによって接触抵抗が増すわけだ。怪しいときは電池の両端や機器の接点を拭いてやるといい。
もうひとつは接点の圧力。素人考えでは、電池の接点と機器側の接点の接触面積が広い方が抵抗は少なそうだが、聞いたところによるとそれより接点の圧力の方が重要らしい。多くの機器は金属を折り曲げてバネの力で電池を押さえつけてる。でも長く使っているとそれが弱くなってくる。ドライバーかなんかで強引に接点を起こして圧力を高めてみるのもいいらしい。
b.メモリー効果の影響があった
多くの人はニッケル水素電池の持ちが悪くなることをメモリー効果の影響と考えている。でも上にあげたように、それ以外の理由もたくさんある。それも全部メモリー効果のせいにされてはメモリー効果も浮かばれない。別に浮かばれなくてもいいんだけど。
メモリー効果というのはニッケル水素電池やニッカド電池において、浅い充放電を何度も繰り返していると、利用時に一時的な電圧の降下が生じるという現象である。
電池は使っていると徐々に電圧が落ちていく。どの電池もそうだ。アルカリ乾電池は滑らかにぐぐぐぐっと電圧が落ちていくが、ニッケル水素電池の場合は少しずつ電圧が落ちていって、最後にぐぐっと大きく落ちるという振る舞いを示す。
メモリー効果が生じているニッケル水素電池の場合は、ちょっと使ったところで0.3Vくらい一度ガクッと電圧が落ちてしまうのだ。そのあとはしばらくは僅かな電圧の低下にとどまり、ある程度までいったところで正常なニッケル水素電池の振る舞いに近づく。
って書くとわかりにくいけど、実はメモリー効果が生じている電池も生じてない電池も結果として取り出せる電力に大きな違いはないのだ。ただ、メモリー効果によって初期段階で電圧がいったん落ちちゃうのである。
それのどこが問題か。たいていの機器はバッテリの残り容量を電圧で見ているからだ。
デジカメなどの機器では電圧がある程度下がったところで電池切れの警告を出し、さらに落ちたところでストップするような設計になっている。そこを終止電圧という。
メモリー効果の影響が一番出るのは1.2V〜1.0Vの間だ。正常なバッテリは1.2Vから1.0Vまで徐々に少しずつ落ちていくのに対し、メモリー効果が起きているバッテリだと一度かくんと落ちる。そして1.0〜0.8Vあたりではほとんど正常な電池との差はなくなる。
だから機器の終止電圧が1.0Vか0.8Vあたりに設定してあればメモリー効果の影響は考えなくていいのだ。
逆に、機器の終止電圧が1.2〜1.1Vあたりの設定になっていると、メモリー効果の影響は甚大で、フル充電のはずなのに半分以下しか使えないというそれはとても困った状況になる。
現在は多くの製品がメモリー効果が生じることを計算した終止電圧の設定になっているため、利用者がメモリー効果について思い悩むことはない……ということになってる。
ただ、残念なことに、今年発売されたデジカメの中ですら終止電圧が1.1Vと高いものがある。こういう機器の場合、メモリー効果の影響をモロにかぶるため、バッテリの状態によってはあっという間に使えなくなるのだ。
メモリー効果についてまとめれば、普通にデジカメを使っていればメモリー効果は確実に起きる。でもメモリー効果によってバッテリの持ちが短くなるデジカメもあれば、メモリー効果が発生しているバッテリと使っても問題なく最後まで使い切れるデジカメもある、ということだ。じゃあどのデジカメが終止電圧をいくつに設定しているのか……残念ながらわたしが持っている情報は僅かで、具体的な機種名までは言及できない。
メモリー効果が発生した電池を元に戻すには、一度深い放電をしてやればいい。10〜20回につき1回くらい電池を最後まで使い切ってやればメモリー効果は消える。ただし深い放電がいいからといって、懐中電灯にいれて使い切るなんてのはやってはいけない。過放電は電池の寿命を縮めてしまうからである。
3)電池がヘタっていた
電池はなんだかんだいって消耗品であるから、長い間様々な環境の下で使っていると、それなりに寿命が縮み、思ったより電気を取り出せなくなる。
a.寿命がきてた
電池自体がヘタっていたという可能性もある。公称では500回以上の充放電がOkということになっているが、実際にはどのくらい使えば寿命になるかは環境によって大きく左右されるので一概にはいえないってことらしい。2〜3年ならまず大丈夫ってことで。4〜5年たっていたら……寿命は来てなくても、きっともっと大容量のニッケル水素電池が出ているだろうから買い換えてもいいんじゃない?
b.よく暑いところに放置してた
とりあえず電池は暑さに弱い。暑いところに放置しておくと……例えば、夏の車の中に放置して置いたりすると電池は痛み、寿命が縮むそうな。これは一時的なものじゃなくて、電池自体がヘタるわけだから復帰はしない。
c.過放電で電池が痛んでた
暑さとともに過放電も電池の寿命を縮める。さらに放電しきったところでさらに無理矢理放電させるともっとよくない。例えば、電池を4本使うデジカメにおいて、100%充電した電池3本と50%しか充電されてない電池1本を入れて使っていたとしよう。そうすると50%の電池は最初に放電しきってしまうが、他の3本はまだ元気なので、デジカメはまだ使える。でもその状態で使っていると、50%の電池はゼロになってもさらに無理矢理放電させられてしまう→それだけ痛んで寿命が縮む。電池はできるだけ買ったときのペアで均等に使い続けましょうってことだ。
・ではリチウムイオン電池は大丈夫なのか
以上はニッケル水素電池のお話。じゃあ最近採用がどんどん増えてるリチウムイオン充電池はどうか。
ニッケル水素電池に比べると自己放電がほとんどなく、メモリー効果も起きず、容量も大きいので小型化もできるというメリットがある。
さらに、ニッケル水素電池は1本につき1.2Vだが(2本で2.4V)、リチウムイオン充電池は3.6Vである。よって単三型バッテリとの互換性はまったくないが、電圧が高い分デジカメには使いやすい。
リチウムイオン充電池の欠点は高価なことや形状の規格が決まってないため、互換性がほとんどないこと。
それでも小型軽量というメリットが多いのでよく使われるわけだが、リチウムイオン充電池も使い方によっては寿命が縮み、持続時間が短くなるという現象が起きる。
まずはニッケル水素電池と同様、高温に弱い。高温(40℃以上)にさらされているとダメージが残る。ノートパソコンの場合内部は高熱になるので、バッテリのあたりに熱がこもるような構造になっているとバッテリの寿命は短くなるわけだ。そういう意味ではPowerBook
G4は電池のあたりが熱くならないのでよい。パームレストあたりが熱くなるiBookはちょっと不安かも。いずれにせよ内部の温度は外よりは高くなるわけで、ノートパソコンのバッテリはけっこう苛酷な環境で働いているわけだ。
もうひとつ、フル充電の状態で長時間放置していても徐々に取り出せる電力が減っていくらしい。でもこれはしゃあない。普通はフル充電したらほっておくし、PowerBookだってiBookだって机上ではACアダプタをつないで使ってるから常時フル充電の状態なわけだし。
かくして、リチウムイオン充電池も長く使っていると持続時間が徐々に短くなっていくのであった。そういえば、うちのPowerBook
G4も購入当初よりバッテリの持ちが落ちてきた気がする。
とまあこんな感じで電池の話をまとめてみた。参考になれば幸いである。
荻窪圭の近況
とにもかくにも湿気だらけで台風一過の翌日しか晴れてくれないという悲惨な日々が続くわ、NY関連のニュースに釘付けで寝不足になるわで、なんともボロボロである。この原稿は諏訪に向かう「スーパーあずさ」の中で書いている。とても寒い。JRはなんでこの時期にがんがん冷房を入れねばならんのだ。仕方ないのでPowerBook
G4で暖をとっている。ぶるっ。
mailto:ogikubo@mac.com
2001.9.15
|