#208
混沌の屋形船Direct:QuickTime VR セミナーレポート、あるいはプロが語るVR作成のコツと様々なVR作成機材たち、あるいは21世紀最初のQTVR作成講座 −その4−


 6月5日と6日、QuickTime Newsを受け取っている人なら知っていると思うが、アップルコンピュータにてQuickTimeVRセミナー「Nuts & Bolts of QuickTime VR」(http://www.apple.co.jp/hotnews/2001/0705qtvr/index.html)が開催されたのである。QTVRとなれば行かないわけにはいかんやろなあ、その上なんかCubicVRについての便利な情報でも手に入るかな、と思って朝も早くからでかけたのだ。1回の定員が50人で、全部で4回行われるので計200人。けっこうなものである。

 「Nuts & Bolts of QuickTime VR」はアメリカをはじめとして、シンガポール、マレーシアなど世界中を回っているセミナーで、日本では初の開催。講師はシカゴ出身のフォトグラファー Dennis Biela氏である。彼は写真家でありKodakやアップルのカメラマンでもあり、QTVRの専門家でもある。特にクルマ関係には強いそうな。

 セミナーは前後編に分けておこなわれた。前編はQuickTimeVRの事例集。後編はその実践。

 セミナーの内容をなぞってもしょうがないので、面白そうな内容だけピックアップしてお伝えしよう。

・彼は何を使ってパノラマムービーを作っているか

 Kaidan社の雲台にCANONレンズを装着できるデジタル一眼レフ。オーサリングはアップルのQuickTime VR Authoring Studioだ(そういえば、バージョンアップしてよ>アップル)。

 そうそうシンプルな実演として、EOS D30+14mmレンズを使い、会場でパノラマムービーを作って見せた。これがそのときの撮影風景なり。


・彼は何を使ってオブジェクトムービーを作っているか

 VRTOOLBOX社のVR Worx 2.0である。オブジェクトムービーの撮影例としてKaidan社の自動回転式ターンテーブルとeBay社のソフトを組み合わせ、DVカメラで撮影して簡単にオブジェクトVRを作ってくれる「Spin Image DV」(http://www.spinimagedv.com/)と、Kaidan社の手動回転式「Pixi Turn Table」(http://www.kaidan.com/products/PiXi.html)を紹介。彼は前者を「デジタルターンテーブル」、後者を「アナログターンテーブル」と呼んでいるらしい。

 で、彼は今スミソニアンの航空宇宙博物館QTVRを作ってるらしいのだが、火星探査機のバイキングのオブジェクトVRを作るために巨大な回転台を作ろうと思って寸法を測ってたら警備員に「触るな」と怒られ、回りにレールを敷いて等間隔で撮影しようと思ったら「ひっかかってキケンだからダメ」といわれ、しまいには「おれがそれにひっかかって転ぶ」とまでいわれたので泣く泣く「床のタイルの数を数えながら等間隔で手に小型デジカメを持って撮影した」と……まあ余談が面白いかどうかは別にして、要するに「撮影の型にとらわれるな。カメラの高さが一定していてほぼ等間隔で撮影できていればそれなりのオブジェクトVRは撮れるのだ」ってのがポイントだ。カメラの高さが重要なのは、回転させたときにオブジェクトが上下に揺れてはカッコつかないから。

 もうひとつオブジェクトムービー関連の話として、彼が使ってるVRTOOLBOXのVRWorxの話が出た。実はこれのオブジェクトVRオーサリング機能はけっこう優れていて、上下のブレを抑える「De-wobble」やサウンドの追加、特定色を切り抜いて背景に写真やパノラマムービーを埋め込める「Matte機能」なんかがあっていろんなオブジェクトムービーを作れるのだ。

 ちなみに「VRWorx」の日本語版は開発中だが遅れている、とのこと。そういえば春には「VR Worx 2.5」でCubicVRがサポートされるとかいってた気がするんだが、どーなったのだ? まあいいや。

 ちなみに、彼の結論とわたしの結論は一緒。パノラマムービーを作るなら「QuickTime VR Authoring Studio」、オブジェクトムービーを作るなら「VR Worx」がいい。

・彼はいかにしてCubicVRを作っているか

 やっぱ今回のポイントはここかな。

 実はCubicVRを作るには2つの方法がある。

 ハイクオリティのものを作るなら、デジタル一眼レフカメラに広角レンズを付け(今回はサンプルとしてキヤノンのEOS D30に14mmのレンズをつけてた)、Kaidan社のCubicVR対応雲台で作成するというもの。彼が使っていたのはQuickPan Magnumってシリーズだが(http://www.kaidan.com/products/qps1.html)、廉価でシンプルなKiWiシリーズにも同等の製品が出ている(http://www.kaidan.com/products/kiwi+_spherical_2.html)。この雲台は水平方向の回転以外に、上下もサポートしているのが特徴だ。

 でも仕事ではD30じゃなくて、KodakのEOS-1をベースにした「すんげー高い」デジカメを使ってる。35mmフィルムサイズのCCDを搭載したデジカメってことだ。その方が画角が広くて使いやすいからね。

 それを使って、上45度、正面、下45度のそれぞれに対して12枚の写真を撮り(つまり、合計36枚だ)、専用のソフトでステッチしてCubicVRムービーをオーサリングしているのだ。

 その機能を持っているのはRealViz社のStitcherというソフト(http://www.realviz.com/products/st/)。最近やっとMac版が出た。これはかなり優れたソフト(らしい)で、アバウトに撮った写真でもきれいにつないでくれるし、ドラッグ&ドロップでこれとこれをこうつなぐって指定していくだけでいいし、CubicVRも作れる。気になる価格は……ちょっと高くて「$495」(今年の8月末まで価格らしい)。デモ版もダウンロードできるので試してみるのもいいだろう。

 わたしは実はNYのEXPOで買ってくるつもりなので(ブースを出すみたいなのできっと売ってくれるでしょう)、そのうちレポートする予定。

 CubicVRのもうひとつの作り方は先週何気なく紹介した魚眼レンズを使ったもの。COOLPIX 990+ニコン純正魚眼レンズ+KiWi990という組み合わせ。

 先週、読者からオリンパスからも魚眼レンズが出てたって指摘がきたが……実は知ってて無視しました。すまんです。C-900系のデジカメって機能的に画質的にも過去のモデルという認識があって、まあいいや、と。ご容赦アレ。C-3040zoom系に魚眼レンズが出るといいのだけどねえ。E-10でもうれしい。

 まあともかく、魚眼レンズを使うと2枚撮るだけでOk。撮影時に重要なのは「ノーダルポイント」と呼ばれるレンズの中心(というか焦点というか)。要するに回転の中心軸をどこにするかってことで、それについてはこの連載で何度か取り上げているのでまあよいでしょう。

 ちなみに魚眼レンズでポンポンと撮影した2枚の画像からCubicVRを作るフリーウエアが欲しい人は「わたしにメールをください」といってた。よってここでは紹介できないのであった。まあ現在知られているものとしては「PTSticher」(http://home.no.net/dmaurer/~dersch/Index.htm)が有名だが、パラメータを手で書かねばならないのでちと敷居が高い。わたしてきにはもっと簡単に作れてMacOSX対応の池田氏のFish2CubeX(先週軽く紹介したヤツ)が公開されるのを待つのもいいかな、と思う。


・CubicVRで足下の三脚を消すにはどうするか

 これ、誰しも気になるところ。彼はふだんは三脚の部分を黒く塗りつぶして文字を入れたりしてるらしい。でもどうしても真下の絵も欲しいときは、最後に真下の写真を撮っておき、Photoshopで合成するのである。まあそれはしゃあないわな。


・QuickTime 5.0から採用されたスキン

 これはちょっと面白い。VRとは直接関係ないのだが、QuickTime 5.0のメディアスキンを使ってQTVRムービーを見せてくれたのだ。メディアスキンについては「http://www.apple.co.jp/quicktime/products/tutorials/mediaskins/」に詳しく解説されているので参照するといい。けっこう簡単に作れそう。


・一発でパノラマVR素材を撮るおもろい装置「The SurroundPhoto reflector」

 ユニークな装置として、こんなのも紹介された。簡単にいえば、ドーナッツ型のイメージを一発で撮影して手軽にパノラマ画像を作っちゃおうというもの。クオリティは落ちるが、1回のシャッターで360度撮影できるので、動きが激しい場所でもピシッと撮れるし三脚もいらない。それが「The SurroundPhoto reflector」(http://www.VRi.ca/myVR/html/mainwhat/whatis.html)である。価格も$69と安い。

 ただ、これで撮ったものをオーサリングするにはひとつにつき「$6.99」かかる。払わないと、ムービー中に製品のロゴが入る。うーむ。ちょっとやってみたいのだが、$6.99は高いかも。


・未来の技術ビデオVR

 別途プラグインがいるけれども、ビデオVRも面白い。これはアップルじゃなくてBeHere社の技術(http://www.behere.com/ChangingTheWayYouViewTheWorld.htm)。ビデオカメラに「SourroundPhoto」のような半球形の反射板を付け、ビデオを撮影し、動画を上映しながらリアルタイムで360度回転させていろいろと見られるというもの。


・パノラマVRを撮るときのデニスの手順

 せっかくなので、彼が披露してくれた仕事でパノラマパノラマVRを作るときの手順を紹介しておこう。

1) フォーカスは約2mに固定。

2)カメラ位置を固定する。カメラを真下に向けてレンズの中心に回転の中心がくるようにする。

3)ノーダルポイントの調整。これは重要!

4)雲台の水平の調整。

5)カメラが水平になっているかチェック。これは重要!

6)露出を測る。露出はマニュアル。窓が開いている昼間の室内で撮影するときは、室内の明るさに合わせた露出と、外光に合わせた露出の2枚撮影をする。でもってPhotoshopを使って2枚を合成する。

7)撮影時はかならずリモコンを使う。手でシャッターを押すとブレるから。

8)撮影しているといつもどこからスタートしたか忘れる(笑)。これはわたしも同じだ。

9)撮影が完了したら、Photoshop 6のドロップレットを使ってドラッグ&ドロップでまとめて下処理をしちゃう。90度回転させて画像解像度を縦800ピクセルにする(でもWebクオリティなら縦640とか512とかでもいい気がする)。

10)QuickTime VR Authoring Studioにかける。重要なのはレンズの設定。圧縮率はフォトJPEGの50%に。

 である。


・おまけ

 では最後にオマケ。わたしが先日作成した世田谷八幡宮境内のCubicVRである。ちなみに、三脚の跡もないリアルCubicだ。もっとも足下はPhotoshopのスタンプツールをつかってシコシコと消したのだけどね(泣)。ファイルサイズは約210KBと小さいので、QuickTime 5をダウンロードし、ぜひCubicVRの世界を体験してみてくださいませ。

 詳しい作り方は……近日中にやりたいと思ってます。撮影からレタッチでごまかすところまで。しばしお待ちを。


世田谷八幡宮境内CubicVR

 ちなみに、後ろにあるでかいわっかは「茅の輪」といって、世田谷八幡宮では6月30日と12月20日に大鳥居の中とここに設置される。正面より∞型にこの輪をくぐると悪疫を免れるんだそうな。みんなちゃんと∞型にこれをくぐってお参りをしてた。わたしもちゃんと∞の型でくぐってみた。

 

荻窪圭の近況
 頭も身体も脆弱にできている荻窪圭は気温が30度を超えると脳に熱がこもり、睡眠障害をおこし、ほげーっとしたまま1日を過ごしている。いつも7月ってこんなに暑かったっけ? 梅雨ってきたんだっけ? ああ、再来週にはもうニューヨークぢゃないか。ニューヨークも暑いんだろうなあ。
 そうそう、謹んでG4 Cubeのご冥福をお祈りします。買いはしてないけど、好きなマシンでした。ほんと。今サブ機として働いてるPowerMac 7600が老衰したら代わりに買おうと思っていたもの。わたしが思うに売り方が中途半端だったんじゃないかなあ。モノとしては悪くないし、ああいう位置づけのマシンってあってもいいと思うもの。iMacでは物足りない上昇志向コンシューマには15インチの液晶モニタをセットにして割安にして「オールインワン液晶デスクトップ機」として、プロ系ユーザーには静かで場所をとらない作業用マシンとしてうまくアピールできていればよかったのにと思うだよ。ともあれ合掌。

mailto:ogikubo@mac.com


2001.7.5


200X年の温故知新

温故知新するにはまだ早すぎるのでコメントなし、だそうです。