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#169
当時わたしがとある雑誌に書いたコラムから引用すると だそーである。ちょっと大仰だけど、そういうちょっとした「めまい感覚」が面白かったのだ。で、QTVRパノラマムービーをぐるぐる回してみたとき、それと同じような感覚を味わったのだ。それ以来、どうすればめまいが起きるような、単なる臨場感じゃなくてリアルと不自然の境界にあるような面白いQTVRムービーを作れるかってことにハマりはじめたのだ。 日頃見慣れてる風景をQTVRパノラマにすることで、ちょっと違う見え方をする不思議、という感じかもしれない。それが高じてここまできたんである。相変わらずQTVR自体はマイナーなままなんだけどね。 でもマイナーだから意外にQTVRムービーを作る方法は知られてないし、断片的な情報ばかりで、作ろうと思ってもなかなかうまくいかず、わたしのWebページを見て質問してくる人が後を絶たない。そこで、この連載でやってみるかと思いたったのだ。 ・QuickTimeVRとはこんなもんだ 今更QuickTimeVRとは何か、って話はしなくてもいいと思うんだけど、一応お約束だし、もしかしたら「ただ360度分の風景をぐるぐる回してみせるだけ」と思ってる人がいるといけないから、軽くさわりだけ。 QuickTimeVRのVRは「ばーちゃる・りありてー」の略。日本語だと「仮想現実」。んーん、大仰やねえ。まあQuickTimeVRが登場した頃は世の中「VR」ばやりで、他にもナントカVRとかVRナントカってのがけっこう登場してたもんである。QuickTimeVRのどこが「仮想現実やねんっ」と突っ込まれてもちょっと困る。「そういう時代だった」んである。 一応「あたかもその場にいるような雰囲気を味わえる」というのが仮想現実っぽいところなんだけど、まあそんなに深く考えなくていい。 QuickTimeVR(めんどーだから以降はQTVRって略す)には2種類ある。「パノラマ」と「オブジェクト」だ。 視点が円筒形の内側にあるのがパノラマ、外側から被写体を眺めるのがオブジェクトと思っていい、というか言葉でいうとめんどっちーので、概念図をどうぞ。
ウチから見て外側を回すか、外から見て回すかって感じ。この図ではたまたま視点を固定した場合の概念図だけど、逆にいえば、視点がぐるぐる回るのがパノラマで、被写体がぐるぐる回るのがオブジェクトっていってもいいし、太陽の気分になって周りの惑星を回してその風景を楽しむのがパノラマで、惑星の気分になって太陽を回して楽しむのがオブジェクトといってもいい。をを、スケールがでかいたとえ話でいいねぇ。 で、今回はとりあえずパノラマからやる。もちろんオブジェクトVRの話もするけど、それは後回し。 いずれにせよ、再生ボタンをクリックすると自動的に時系列に沿って動画を見せてくれるQTムービーと違い、QTVRは「マウスのドラッグを使って、ユーザーが自分で動かす」というのが新しいところだ。 ・パノラマVRっていったい何をしてんのか 世間ではただパノラマ画像を動かして少しずつ見せてるだけ、って思ってる人がいるかもしれない。でもそれだけじゃあ面白くもなんともないわけ。QTVRが面白いのは、何気なくいろいろと「臨場感を高める」ためにあれこれ頑張ってるとこなのだ。 例えば、次の2つのパノラマVRを見ておくんなまし。
上はタダ単に横長の画像を電光掲示板上で文字がスクロールするように左右に動かせるだけというQTVRムービー。下は同じ画像をちゃんと立体的に、つまり円筒形の真ん中に立ったときにどう見えるかを計算してくれるQTVRムービーだ。いわゆるQTVRパノラマは下の方だ。 QTVRはただぐるぐる回してるだけじゃないことがわかってもらえたと思う。ちゃんと、「それっぽく」見えるように計算して画像を歪めて表示してくれるのだ。だからリアルで面白いんである。 ・QTVRパノラマを作るということ 上の例は、Photoshopで「わたしまけましたわ」という回文をそのままひらがなで打ち込んで横長の画像を作り、QTVR化しただけという単純な代物だ。イヤ別に回文にすることもなかったんだけど、一度「回文VR」ってやってみたかったもんで(笑)。ほんとはもっと長いのがよかったんだけど、思いつかなかったもんでポピュラーなものでご勘弁アレ。 実際には360度分(360度じゃなくてもいいんだけど、基本は360度なのでそのまま話を進める)の写真を用意してQTVRパノラマを作る。 もちろん一度に360度分の撮影ができるカメラはないので(銀塩なら180度分撮影するパノラマカメラってあるけど、極めてマイナーだし)、何枚かに分割して撮影して、Mac上でつなぐわけだ。 単純に考えると、分割して撮影したものをPhotoshopなどのグラフィックソフトでうまくつながるようにつなげばいいじゃん、と思うかもしれない。それで済むのならわたしがこんなに大風呂敷を広げて解説しなくてもいいんである。 というわけで、次の図を見て欲しい。
例えば360度を6枚の写真に分割して撮影し、それを360度分の画像につなぐってのは、こういう作業をするってことだ。画像が重なってる部分を切ってつないでも、ただ六角形状の不自然な絵ができるだけで、下のようにきれいな円にはならない。それはなぜかっていうと、レンズは中央部と端っこで写り方が違うからだ。特にレンズが広角になればなるほどそれが顕著になる。ただ六角形につないだだけだと、角のとこと辺のとこで視点からの距離が違うでしょ。それでは滑らかに見えない。でもQTVRムービーの素材にするには「どっちの方向を見ても、レンズの中央部で撮影したときと同じように見えないと」ダメなんである。 そのため、画像をつなぐときに次の図のような処理が必要になるのだ。
これは3枚の写真をQTVRパノラマ用にひとつにつないだときの処理の概念図。塀に囲まれた土地でQTVRパノラマを作ると思ってもらえればいい。塀を正面から撮ると上段中央の図のように、左右に伸びる塀が映るだけである。でも塀の角にカメラを向けて撮ると、このように遠近がついて映る。で、両者をうまくつなぐにはそれぞれの画像を歪めて合成し、下の図のようにしてやらなきゃいけない。 この作業を行ってくれるのが、QTVRパノラマ作成ソフトの「ステッチ機能」ってヤツ。これはQTVRパノラマ作成においてもっとも重要な処理だ。この処理がうまくいくかいかないかで、あるいはこの処理を賢くやってくれるソフトかタコなソフトかでクオリティが大きく違ってくる。このステップがうまくいってはじめてきれいにぐるぐる回る風景を提供してくれるのである。 つまり、きれいなQTVRパノラマを作るのは「意外にめんどっちー」のだ。 せっかくなので、「きれいなQTVRパノラマ」を作る方法を来週からやる。きれいじゃないQTVRパノラマは、きれいなQTVRパノラマを作るステップの中で面倒なとこを端折ればいいだけだからである。だからこの連載を呼んで「めんどくせー」と思ったら、どっかを端折って楽をすればいい。特に趣味のQTVRでWebサイトに載せたいっていうくらいなら厳密にやる必要なんてまずないからね。 ・QTVRパノラマを作る3つのステップ では来週から実戦に突入する。 QTVRパノラマを作るには3つのステップが必要だ。 撮影→オーサリング→出力 である。出力といってもいろいろあるけど、今回は「Webサイトに載せる」という話に限定するつもりだ。 まずは撮影から。 ちゃんと撮影するにはQTVR撮影用の三脚、もっと正確にいえば三脚はなんでもいいんで、三脚とカメラの間に設置する「雲台」があるといい。QTVR撮影用雲台は既存のカメラ用品を組み合わせてなんとか作ることもできるけど、精度を出すのはけっこう面倒で意外に金がかかるんで、専用のものをひとつ用意するといい。でも悲しいことに日本で普通にそういうものを売ってるとこは(わたしが知る限り)ない。8万円ほど出せばマンフロット社のQTVR撮影用雲台が買えるけど、それは大仰で重たくて高い。 そこで、QTVR撮影機材を多数出している米Kaidan社の製品を日本から買うためのWebサイトをオンラインショップ「パワスタ」の協力で用意して貰うことができた(というか、わたしが「売れるかどうかわかんないけど、扱ってみませんか? 協力しまっせ」とそそのかしたんである)。先週書いた「VR撮影用機材を購入するためのシステム」がこれ。Kaidan社に直接注文するのが不安な人は、パワスタのQTVR撮影機材コーナー(http://www.pawasuta.com/v1/qtvr.html)を利用して貰えるとうれしい。日本語で注文できるし支払いも日本円である。ってなんか宣伝してるけど、いいよね?>編集部。 まだできたてのページだけど、来週までには各製品の解説付のわかりやすいものになっているはずである。 デジカメで気軽にQTVRパノラマを作ろうと思っている人は、乞うご期待である。
荻窪圭のプロフィール
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2001年の温故知新
ここからしばらくQTVR作成講座が続く。この後、QuickTimeもバージョン5になり、CubicVRが登場したものの、QTVRが流行する気配はあまりない。とほほほ。QTVRについてはわたしのページでもいろいろやってたり作品集があったりするのでそちらもご覧下さいませ(2001.10.14)