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「ガラパゴスの箱船」 カート・ヴォネガット(1985)/ハヤカワ文庫

カート・ヴォネガットが人類の暗愚を描く、わたしお気に入りの傑作「ガラパゴスの箱船」(1985)

語り手は「あの世への青いトンネル」をくぐることを拒んだ、造船所の溶接工。
成る可くして成る、人間の進化による悲喜劇。そして、そこにほんの少しの偶然から人類という種が生きながらえる様を、淡々と、いつもながらの口調で語り綴る。
ヴォネガットのアイロニー、特にこの作品では、人類に対する哀れみがこれでもかというくらい語られる、非常に悲しくもしっかりと主張する力強さ、そして同情!

所々に引用される警句、箴言。
その中で、ネスト構造を詩として扱った傑作

もちろんきみが大好き、
だから子供をつくろう。
その子もきっとそっくり
親とおなじことをいう。
「もちろんきみが大好き、
だから子供をつくろう。
その子もきっとそっくり
親とおなじことをいう。
「もちろんきみが大好き、
だから子供をつくろう。
その子もきっとそっくり
親とおなじことをいう−−−」
以下このくりかえし。
___ ノーブル・クラゲット(1947-1966)
(作者の素性不詳)

この詩の通り、百万年の間ガラパゴス諸島サンタ・ロサリア島で生きながらえる人類。多分自らを地獄の業火で焼き尽くす文明しか考えられなかった人類が、ちっぽけな細菌と、エクアドルの経済危機で、「救われる」。読むものが感じるのは、よかった、よかったと云えるエンディングではなく、その救いしかないのかという、絶望ではないだろうか。
その通り、真実をわかりやすく説く、現代の正直者ヴォネガット。これでもまだましだろう?と、云っている。
そして、この物語はまだ、百万年の猶予をもって、ある種の予言書として読まれ続けることだろう。

最も幸福な人生は無知の中にある、
悲観と歓喜をまなぶ以前に。
__ ソフオクレス(紀元前496ー406)

 




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