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杏飴 そして大嘘つき (十三)

十三 解散2

暗くなりかけていた言問通りを歩いている、ただただ嫌な気持ち、それが悲しみと気付くとあっという間にわたしの身体中に充満した。何故なのかな、どうしてこんな気持ちになるのか、馬鹿みたいだ。
わたしの頭は考えたくても、ちゃんとした答えを出したくない思い、それが故単に自分の頭が馬鹿なんだと繰り返し繰り返し考え続ける。本当にチューニングが悪かったんだ、いや、違う、サウンドの方がバラバラだった。それはまだ練習が足りなかったからか。メンバーの誰かがまだへたくそなだけ、佐々木のギターの音量がでかすぎた、あいつが悪いわけではない、正直な男だ。わたしよりリズムの乗りはいい。最近の麻紀の態度が気に入らないからか、いや、彼女はわたしの同い年でしかない。そう、みなとても単純で素朴なだけだ、だれもがあの当時、まだ子供でしかない。思ったことを正しいと信じ、それが実現すると信じ、実現しないのは他人に原因がある、そんな思考しか持ち合わせていなかった。
じゃあ、何故、気分が悪いのだろう。わたしは大鷲神社の鳥居の前の杏飴やの前に立っていた。真っ赤で少し酸っぱい杏と周りの柔らかい水飴の味。
もう今では食べたくない。レモンでも爆弾でも丸かじりしたい気分だった。
様々な思いの中で、なぜかわざと避けていた思いが心に浮き上がったのがその時だった。
ミナコが悪いのか。いやいや、それは違う。理由がない。いや、あいつは気が強い、頭が切れる、セザンヌとルノアールとゴッホ、チャイコフスキー、ショパン、ポール・マッカートニーが好きな、陽気で、ボーイッシュな髪型を、少し早口で、背が高い(まだ小学生の頃、わたしよりも背が高かった)、わたし達バンドの良きメンバー、そして一番の幼なじみだった。
だが、もうミナコを友達の気分で思い起こすことはない、当たり前のことだと、夕暮れの中気付いたわたしは泣いていた。わたしはミナコのことが好きだったと気付かなかったのだ。子供みたいに泣きたくなかった、わたしは涙をこらえ、「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウエア」を口ずさみ、言問橋のうえから川に向かって唾を吐きかけた。

(了)
05/1/28

 




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