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杏飴、そして大嘘つき (二)

二 思い出その一

小学生の二三年の頃だったと思う、自転車を全力疾走でこいでいたわたしはどういうわけか、突き当たりの道をどちらに曲がればよいのか判らなくなり、そのまま板張りの堀に激突してしまった。額と鼻の穴から血を流し痛さのためか、自分の馬鹿さ加減を嘆いてなのか、さんざん泣いていていた時、通りすがりのお風呂のオネエさんがティッシュを丸めわたしの鼻の穴に押し込み、丁寧に額の血を拭ってくれた。それでも、痛みと、突然の事に気が動転していたわたしはオネエさんに抱きつき、大きな胸の窪みに顔を押しつけ泣き続け、ようやくのこと鳴き声がしゃっくりに変わった。オネエさんはお風呂から上がりたての石鹸の臭いを漂わせながらわたしの頭を撫でてくれた。

(「三 思い出その二」に つづく)

 




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