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杏飴、そして大嘘つき (一)

一 街
一九七八年。わたしは台東区千束に住む、たかだか十四歳のガキだった。わたしが名古屋に引っ越す前の年。中学三年だった大昔。

あんな所に住むことを決めたわたしの親は頭がおかしかったんじゃないかと思う、夜な夜な黄色や黒や朱色のタクシーが行き交い駆けめぐり、きらびやかなネオンがそこかしこに輝き、とんでもなくサラリーマンのおやじ連中がうごめき、信じられないくらいスタイルの抜群の女性達がすがすがしい石鹸の香をふりまいて闊歩していた街。

わたしは、はな垂れ小僧であった頃から、そんな喧噪と地上の星座のようなネオンを見上げ、お姉さん達に駄菓子を買ってもらってはそのスカートで鼻をかんでもらい、純粋無垢に『ムーミン』や『水戸黄門』、三番サード長嶋のいた巨人対阪神を見て育ち、『フランダースの犬』の最終回で少年が飼い犬のパトラッシュと雪の降る途轍もなく寒い夜、教会の壁に架けてあったルーベンスかレンブラントの大きな油絵を見て感動し、夢見るように死んで行く場面で、親に見られないようにして涙を流す情感溢れるなまいきなガキとして育った。

わたしの箱庭であったその街が、江戸時代には遊郭、いや今でも男にとっての遊郭であることは言うまでもない。

(「二 思いでその一」へつづく)

 




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