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「ホルスの目」

梅田のとある店にひっそりと置かれていた「本場パピルス紙に書いた絵」、幾つかある中、でかい目玉の絵がわたしのことを睨んだまま視線がつきまとってくる。よく言う、蛇に睨まれた蛙状態で、わたしはその絵と暫くご対面していた。
「そちらは、『ホルスの目』ですよ」
若い女の店員が、にっこりと微笑みながら、わたしに説明してくれる。
「将来を見透す力や目の前の相手の心を読む力があると言われています、それと幸福と繁栄の象徴でもあるんですよ!」

別にそれほど欲しかったわけでもなく、誰かに買われてしまうのも惜しい気がしたからか、二千年か四千年の昔に、エジプトの人々が崇め信仰したという神の目に畏怖を感じたからか、大枚はたいて買ってしまった。こうして部屋に戻っても、テーブルの上に立てかけお互いにらみ合っている。
「また無駄遣いして! そんな気味悪いもの」
妻は相当にご立腹、それというのも彼女に無断で相当の支出をしてしまったからだ。こればかりは反論も出来ず、食器洗っといて!との捨てぜりふの後先に寝られてしまう。

象徴というのは自然に生まれるものではなく、誰かが言い出して初めて効力を発揮するものだ。「ホルスの目」は、太古の昔に王様か誰かが、こんな怖い目をした神がいることを民衆への脅しと、敬わせ、ついでに自分はその子孫だといったのかもしれない。
ところが今や、我が家ではその大仰なパピルス紙に書かれた「ホルスの目」は、子供のおもちゃ箱に入っている。「怖くないのかい?」、息子は青を強調した色遣いが気にいったらしく、それが「目」だとも思っていない様子。どうもホルス神は、ここ日本では無邪気な子供の心に宿ったのかもしれない、ウルトラマンの人形と同じく子供の遊び相手として。

 




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