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『Anything Goes』

酒瓶を抱えて帰る途中、ちょっと車止めに当たっただけで、久しぶりに買った高いワインの瓶が割れてしまう。神への暴言を吐く。残りの安い酒は瓶も分厚いらしい。

店の中で彼女はバッハを弾いている。少し髪を切ったのだろう、彼女の首筋がライト越しに見えた。そして髪の先に少しウエーブをかけたようだ、口には出さなかったが似合っていると思う、素敵だ。

教師のつまらない前置きに彼女はいつも辟易する、「ステアじゃなくシェイク」したマティーニ、一つ覚えのカクテル、そう映画で覚えたんだよね。あまり気にもせず、ワイングラスに注ぎ彼女に渡す。
「ちょっと、ださい」
「ワイン割っちまったしさ。これで我慢」

「何か弾く?」
「ふむ、それでは何かCole Porterの曲」
「それじゃ、『Anything Goes』ね! はい、踊って!」
「それは無理、無理」
不動産屋が来るまで、あと2時間。教師がリクエストをし、占い師は弾き続けた。

 




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