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| 写真、生命の息吹 | | 作成日時: Nov 10, 2004, 07:56 PM |
電車にわたしが座った後、隣に母娘が並んで座る。
娘の方がなにやら白黒写真を取り出し、母親と何かしら話をしている。わたしはiPod-miniでU2をガンガンかけていたので何を言っているか判らない。横目で見やると、なにやらレントゲンかCTスキャンの映像のように見え、怪しい影が映っている・・・ああ、きっと家族が癌か何かの病気なのだろう、暗い話なのかと思いきやニコニコしている。
はっとした。娘が指で、何か小さな形あるものを指さしていた。それは、ちいさなちいさな赤ちゃん、空豆のようだ。ああ、それは超音波の写真だったんだ。黒い空間みたいに見える彼女の子宮の中に白く写っている小さな人間の未熟な形・・・。
わたしは、赤ちゃんの父親より早くその写真を見てしまったわけだ。その気まずさもさることながら、実はうれしくなる、こみ上げる幸せのような感情。隣の見ず知らずの女性に、来年は生まれ出る赤ん坊が宿っている。わたしは誕生に立ち会う父親のような錯覚にとらわれた。彼女は写真を見終わると、黄色地におむすびみたいな顔をした赤ん坊の絵が描かれている母子手帳を広げて、いろいろな数値やテキストを読んでいた。
平和はどこにでも普通にあるのに、わたしたちはその幸せの間に転々として存在する憎しみや殺しあい、病と死にしか気づかない。なんと不幸な「目」しか持ち合わせていないのだろう。無言のまま電車に乗り、ぼんやり日の暮れた風景を見ても仕方がないのに、それよりも、彼女にみんなで「おめでとう、なんてかわいい空豆みたいな赤ん坊!」と云ってあげるべきなのに。
今日のその時は、わたしが何年も味わったことが無い、充満する幸せを感じた瞬間だった。 |
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