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ブルースマン

電車で隣に座った女性の胸ではなく手に視線が釘付けになったのは、わたしのような暮らしのものでは手が出そうもない大きなダイヤの固まりが指にくっついていたからだ。その女性はわたしよりも若そうだ、品のよい格好。ちょっと顔を見やると知的な感じとほのかな色気。決して派手なわけでもなく、その女性の生活にぴったりと似合っている指輪だった。

わたしは、彼女の誕生日にはとてもそのような指輪を買ってあげることが出来ない、貧乏はこんな時に辛いのだ。そう、きっと彼女の指に、あの光り輝く固まりがのっかていたら彼女も喜んでくれるだろうし、そしてわたしも幸せになれるはずだ。しかし、人のための物欲が目覚めるなんて、一体わたしはどうしてしまったのだろう。

路上でなんぼ弾き語りをしようと、小銭が小さな山になるだけ。どうも、日本人のブルース弾きは、雨の中の浮浪者としか見られないのかもしれない。そう、単なる泣き言を語るだけ、琵琶法師の世界。その時、わたしはアメリカへ行こうと思った。ほんの僅かだが、その理由の中には大きなダイヤを買うことも入っていた。

 




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