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わたしのミューズ

わたしが初めて会った作家は女だった。二十六歳で、美人で、スタイルがよく、とてもユーモアがあった。身長は私よりも少し低く、ハイヒールを履いたときは私よりも高くなった。
彼女は高校を卒業、しばらく会社勤めをした後、退職。スナックで働き始める。なんてことはない、「遊ぶ金が足りなかった」だけのこと。その後は、風俗へと転身、「ホストクラブ遊びが癖」になり、「収支を合わせる必要があった」ためだと話してくれる。
彼女は、よく本を読んでいる。
「今の日本人作家は良くわからないわ、それにお気に入りもいない」
「それじゃ、どんなのを読んでる?」
「中学生の頃は、太宰治、結構読んだわね、それから夏目漱石、志賀直哉、それから・・・、まあ、もう死んじゃった人たちばかり、安心して読めるでしょ。」
「安心って?」
「なんか、捉えられるって感じがするの」

「赤と黒」を読む女に会ったのは彼女が二人目だった。今日、彼女の鞄に忍ばせてあった。なにも、好き好んでこの本を選ぶのもおかしなやつだ。
「でね、わたしは自称、作家。笑わないの!」
(ならばくすぐるのを止めてくれ)
「証拠は? 何か書いたものがなければ作家とはいわないよ」

彼女は私をくすぐるのを止める。

 あなたは狂っている
 でも本当のこと
 わたしは平気
 私のことだから

 あなたは味方
 でも嘘に違いない
 わたしは味方
 でも本当かわからない

 彼女はわたしの耳元で囁くように語る。ふむ、作家じゃなく、詩人か。もしかしたらわたしのミューズとなってくれるのかもしれない、もしかしたら。

 




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