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石にかかれた言葉

その昔、人間が自分のことしか考えていないのは、あまりよろしくないということで、石に決まり事を書いた神様がいる。その決まり事の中で、「既に相手ある女性を誘惑してはいけない」、そんなことをすれば電撃の矢を頭のてっぺんに食らわすぞー、といった恐ろしい脅しがある。
わたしは別にそんな恐ろしい目には遭いたくないのだけれど、その女性に言い寄ろうとしていた。なぜなら彼女はわたしに美しく微笑みかけてくれた。微笑みが美しい女性はだれだって愛すべき女性なのだ。わたしは、イチコロだった。
しかし、イヴが食べた林檎の毒も、何千年も後にはある程度は解毒されている。わたしは、ほんの少しばかりの理性のもと、それはいけないことだと反省をし、頭の回路を修正した。そのような行為では誰も幸せにはなれない。つまり、
「困る人が一番少ない行動が、最も正しい行動」
そういうことだ。わたしは、捨身をするインドの王子さまになることにした。
カチッ、これからわたしがとるべき行動を再プログラムしたあとにスイッチを入れる。
うまく電流が流れ、すべてがほんの何ヶ月か前のように、自意識欠乏状態にもどり、お互い、ニコニコした会話を交わすようになれればそれで幸せに違いない。
「こんにちは」
「・・・・・」
ふむ、紀元前からの言い伝えは、なぜにこれほどにも正しいのだろう。一度こんがらがった男と女は、何の詮索も無く挨拶していた時には、二度と戻れないようだ。そして、電撃の矢を人間に射込む神様よりは、少し優しい神様もいるぞと語り歩いた男は、次のように云った。
汝の敵を愛せよ!
憎まれていても、嫌われていても、そんな人を愛しなさいとは、何とも難しいことをいうものだと思ったけれど、その男の云うことは道理にかなっている。やはり彼女のことを今まで以上に好きになってしまうに違いないからだ。
そして、結局は堂々巡り?

 




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