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源氏物語

 学生時代の知り合いが、いまはどうも源氏物語の若き権威になっているらしい。大学の講師として源氏物語を教えているそうだ。まあ、知り合いといっても、もう15、6年も会っていないけれど。
 書いた本人はとうの昔に死んじまっている。いまさら、様々な解釈をつくり出したところで、紫式部が語りたかったこととは、きっと何一つ合致しないだろう。千年の後に、一学問として分析に供されるとは本人にとってどんな思いであることか。

 比較する物語は当然のごとく無い(なにしろ世界初の物語なのだから)、良い悪いの基準も無い。
ただ、「おもしろい」物語であったにすぎない。

だからこそ、この本を芸術だとおれは思わない。芸術とは、他者がそう思うだけのものだ。本人にとって、芸術であるはずが無い。芸術を意識して本を書こうなんて奴はまがいものだ。
紫式部は「書くこと」に楽しみを覚えていたにすぎない。作家が唯一独占できる権利、書くことを楽しむ権利を行使しただけのことなのだ。

 




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