『信濃毎日新聞』2007年10月22日
9条守る主張は「中立」にそぐわない 後援見送り
今年2月、松本市で開いた「第18回平和のための信州・戦争展」の際、松本市教育委員会が「憲法9条を守る主張が前面に出ており教育行政の中立にそぐわない」と、後援を見送っていたことが21日、分かった。松本市は「平和行政に取り組んでおり拒む理由はない」と後援。改憲が論議される中、これまで「平和」とセットで当たり前に語られてきた「護憲」の扱いが、行政の中でもぶれ始めている。
戦争展は毎年、市民グループなどでつくる県内4地区の実行委員会が持ち回りで開催。18回展は中信地区実行委(筆頭代表委員・大串潤児信大准教授)が、9条を守る立場からの講演や、戦時中に食べた「薄焼き」の試食、原爆詩の朗読などを2日間行った。
これまでは開催地とその周辺市町村が共催や後援の立場で参加。18回展は、実行委が昨年12月下旬までに関係自治体に後援を要請し、松本市のほか塩尻市、安曇野市など10市町村と各教委が後援した。
ところが、同様に後援要請があった松本市教委は今年1月中旬、後援見送りを実行委に口頭で伝えた。チラシに「9」の文字が大きくデザインされていた点や、9条を題材にしたポスター展などの内容から判断、教育委員にも報告したという。
松本市で前回開いた2002年の際には、松本市教委も後援していた。しかし、市教委教育政策課は「改憲があまり話題になっていなかった02年とは時代背景が違う」と説明。「9条の学習ならよいが、(改憲に)賛成、反対となると『政治色』が出る」とし、「苦慮した上の判断」と強調する。
また、実行委が今回初めて後援を申請した木曽郡木曽町教委も「定例委員会に諮った結果、委員の間で意見が一致しなかった」として、後援を見送った。開催趣旨にあった「軍都(松本)」などの表現に対し、「主張に偏りがないか判断に迷う」といった意見が出たという。
一方、松本市として後援したことについて、同市秘書課は「市は毎年、広島平和祈念式典に中学生を派遣するなど平和行政に取り組んでいる。9条をめぐる展示内容を含め大きく平和の範囲と考え、後援を判断した」とする。
実行委事務局の小島十兵衛さん(58)=松本市=は「公務員には憲法を擁護する義務があるのだから問題はないはずだ。改憲、護憲のどちらに転んでもいいようにという行政の過剰な自己規制は残念」と話している。