『社会新報』主張 2007年10月24日
駆け付け警護
迂回改憲への巧妙な布石打つ発言
アフガン戦争支援問題が焦点化する中、元陸上自衛隊イラク先遣隊長の自民・佐藤正久参院議員による「駆け付け警護」発言の持つ意味が再浮上してきた。
佐藤議員は、もしイラクでオランダ軍が攻撃を受ければ「情報収集の名目で現場に駆け付け、あえて巻き込まれる」状況を作り出すことで「駆け付け警護」を行なう考えだったと述べた。この発言は8月10日のTBS系ニュースで流された。
これは中国侵略を拡大した関東軍の一連の謀略をほうふつとさせるものだとして、波紋を広げた。それだけでなく想定されたケースが、安倍前首相が設置した集団的自衛権に関する有識者懇談会が検討対象とした4類型の1つ、海外で行動を共にする他国軍への駆け付け警護に当てはまることにも注意する必要がある。
集団的自衛権行使容認をもくろむ勢力がこの間、一貫して追求してきたのは、他国軍の武力行使との一体化を違憲とする従来の政府憲法解釈の壁を突き崩すことであり、武器使用権限拡大はその突破口と位置付けられてきた。イラク派兵直前に自衛隊が作成した内部文書が、任務妨害排除のため、あるいは自己の管理下にない他国軍援護のための武器使用は「積極的な武器使用」であり認められていないとしつつ、「武器を使うことについての積極的な意思がなければ」武器を持って駆け付けることなどは構わないとしたのは、そうした事情を裏から物語っている。
安倍政権の退陣で改憲正面突破路線は雌伏を余儀なくされているように見えるが、より巧妙な実質改憲戦略への警戒を怠ることはできない。憲法記念日のころ、先の有識者懇の4類型について民主党幹部から、個別的自衛権もしくは国連集団安全保障の問題として整理可能との見解が出され、9条擁護を社論とする大新聞にもこれに同伴する論調が見られたことは示唆的だ。
折も折、民主・小沢代表からISAF(国際治安支援部隊)参加論が飛び出した。これを、派兵恒久法をめぐる議論の土俵作りに役立つとして、政府・与党は内心歓迎していると見た方がよい。さらに新テロ特措法案は、あたかも対テロ戦争全体から「海上阻止活動」だけを切り離すことができるかのように装いながら、対米軍後方支援を常態化し、他国の武力行使との一体化違憲解釈の空洞化推進を狙うものだ。新法案の成立とともに、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を阻止しなければならない。