『信濃毎日新聞』社説 2007年10月12日
小沢民主党 アフガン政策の危うさ
テロとの戦いの問題で、民主党の小沢一郎代表が月刊誌への寄稿などを通じて独自の考えを明らかにした。
アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への日本の参加だ。記者会見で、これを盛り込んだ法案提出を検討する意向を示した。
ISAFの活動には武力行使も含まれる。アフガン本土は治安が悪く、インド洋上より危険なのは明らかだ。そこに出て行くという。
先の参院選で民主党は躍進し、参院第一党になった。衆参ねじれの中で存在感は高まっている。責任の重さはこれまでの比ではない。政権担当能力も試される。
ISAF参加は、海外での武器使用や集団的自衛権といった憲法上の問題をはらむ。民主党が政権の座を自民、公明党から奪おうとするなら慎重な党内論議が欠かせない。
ISAFは2001年、国連安保理決議に基づき発足した。北大西洋条約機構(NATO)の指揮下、37カ国が参加している。旧政権タリバンや国際テロ組織アルカイダの掃討などを担う。各国軍に多くの犠牲が出ている。
憲法9条は、国際紛争を解決する手段として武力の行使を認めていない。政府はこれまで、海外での武器使用を必要最小限の正当防衛か緊急避難措置に限定してきた。小沢氏の論はこれを覆すものだ。
小沢氏は、国際社会全体で平和、治安を守るための国連の活動は、個々の国家が行使する自衛権とは全く異質と主張する。ISAFに多くの民生活動があるとしても、憲法に触れないと言い切れるか疑問だ。
政府だけでなく、野党からも憲法違反だとの批判が出ている。
かねて国連専用部隊の創設を唱える小沢氏である。だが、なぜ今ISAFなのか、唐突な感じは否めない。民主党が昨年まとめた政権政策の基本方針や参院選マニフェスト(政権公約)では、具体的にISAFへの参加を挙げていない。
民主党には旧社会党系議員ら護憲派もいる。党内は必ずしも一枚岩ではない。論議に2カ月余かけているとはいえ、本当に意見が統一できているのか、にわかに信じ難い。国連のお墨付きさえあれば何でもできるという発想も乱暴ではないか。
政府は、海上自衛隊派遣の根拠となっているテロ対策特別措置法が11月1日で期限切れになるため、近く新法案を提出する。米国主導の戦いに協力する構図が続く。
一方、インド洋での給油がイラク戦争に転用されたのではないか、との疑惑は膨らむばかりだ。
与党も民主党も憲法の原点に返って参加自体を見直すべきだ。