『徳島新聞』コラム鳴潮 2007年11月15日
日本国憲法の誕生のいきさつを描いた映画「日本の青空」(大澤豊監督)を徳島ホールで見た。安倍晋三前首相が改憲を唱え、今また憲法に抵触しかねない新テロ法案が国会の焦点になっているためか、初日の夜の会場はほぼ満席だった
安倍前首相は改憲の根拠の一つに、米国からの押し付け憲法であることを挙げていた。しかし、この映画を見ると、日本人学者らによる「憲法草案要綱」が成立に深くかかわっていたことが分かる
その中心にいたのは在野の憲法学者、鈴木安蔵(一九○四−八三年)だ。鈴木らは平和主義に基づき、国民主権や言論の自由などを盛り込んだ草案をGHQ(連合国軍総司令部)に提出。その民主的な内容が評価され、GHQ案に影響を与えた
憲法に男女平等を盛り込んだのはGHQにいたベアテ・シロタ・ゴードンさんだが、鈴木らも「男女ハ公的並私的ニ完全ニ平等ノ権利ヲ享有ス」と明記している。必ずしも押し付け憲法とは言えないだろう
テロとの戦いを続ける米軍などにインド洋で海上自衛隊が給油活動を再開するための新テロ法案が衆院で可決された。鈴木らが憲法に込めた平和主義の理念は遠のくばかりだ
「日本はむしろ軍隊放棄を他の国に教える平和運動の指導者になるべきでは」。かつてベアテさんが語った言葉を、あらためてかみしめたい。