『愛媛新聞』社説 2007年11月13日
対テロ新法案参院へ 疑惑解明も中身の審議も足りぬ
インド洋での海上自衛隊の給油活動を再開するための新テロ対策特別措置法案が、衆院特別委員会で与党の賛成多数により可決された。きょう衆院本会議で可決、参院へ送られる。
党首会談で民主党の小沢一郎代表は条件次第で成立に協力するとも伝えたという。だが辞任騒動後は「足して二で割る手法は通用しない」と言明した。
与野党逆転した参院は主戦場になるが、成立の見通しがないことに変わりないわけだ。
与党が衆院で再議決しようにも、委員長ポストを握る民主党が審議や採決を延ばせば会期の再延長が必要になる。再議決に持ち込んでも野党が福田康夫首相の問責決議案を可決し、緊迫する可能性が出てくる。公明党の慎重論も根強い。
それでも衆院委で採決した与党には、敵失に乗じれば解散しても有利に運べるかもしれないという判断があろう。一方で修正協議にも応じるという。硬軟両様の揺さぶりを感じる。
日米首脳会談に臨む首相にとって一定の成果になることも大きい。先ごろ来日したゲーツ米国防長官は給油の早期再開を促し、首相は努力を約束した。
首相にすれば衆院通過は「大連立構想」に続く米側へのアピール材料にちがいない。だが、それこそ給油の本質が対米支援である表れではないか。
海外での武力行使などを禁じた憲法に抵触しないか。テロ対策の成果はどうか。日本の貢献策は非軍事も含めどんな姿が望ましいか。本質はあくまでそうした点で、国民も知りたい。
旧法延長を決めた昨年の臨時国会の委員会審議は衆参で計三日にすぎない。状況をねじれ国会が一変させた。不十分ながら一定の情報開示もさせた。
一方、審議時間は守屋武昌前防衛事務次官の癒着問題などにも費やされた。それらが不要というのではない。むしろ、イラク戦争への転用疑惑や給油量訂正の隠ぺいは文民統制を骨抜きにする危うさをはらむ。いくら厳格な仕組みをつくったところで順守されなければ意味をなさないという問題もある。
法案の中身以前の話だが、徹底解明にはほど遠い。たとえば防衛省は全件調査で転用疑惑を否定したものの、推定を交えた内容で説得力は乏しい。
法案の問題点にも迫りたい。一番は国会承認の削除で、法案成立で文民統制を担保するという理屈は納得しがたい。承認には衆参の議決が必要になる。その回避が狙いではないのか。
民主党はようやく対案の法案骨子をまとめた。国会の事前承認を課したうえで民生支援のため自衛隊部隊を派遣、小沢氏の提唱する国際治安支援部隊(ISAF)参加は本隊でなく地域復興支援(PRT)とする。一方、国連決議にもとづく国連の活動なら給油にも道を開く内容だ。だがこれで党内がまとまるのか、疑問がぬぐえない。
与野党は党首討論など開かれた場で国際貢献策を競い、国民に選択肢を示してもらいたい。これこそ信を問うにふさわしいテーマにもなるはずだ。