対テロ新法案 もっと議論を深めたい(北海道新聞社説)

『北海道新聞』社説 2007年11月9日

対テロ新法案 もっと議論を深めたい


 インド洋で給油を再開するための新テロ対策特別措置法案をめぐる論議が、新たな局面を迎えている。

 政府・与党は今国会の会期を三十五日間延長させることを決めた。何としてもこの法案を成立させようということだろう。

 一方、民主党の小沢一郎代表は法案に反対を貫くと言明し、党として対案もとりまとめた。

 国会では対決ムードが高まっているが、議論はそう深まっていない。

 対テロ新法案については、給油量取り違え問題の解明が不十分なままだ。

 防衛省は組織的な関与を否定している。国会に参考人招致された当時の海上幕僚監部課長も、隠ぺいは個人的判断だったと証言した。

 だが内局が当時、正確な給油量のデータを含めて数字を把握していたことも明らかになっている。

 当時の防衛局長は、防衛商社との癒着が問題になっている守屋武昌前事務次官だ。守屋氏は本当に誤りを知らなかったのか。防衛省は「個人の責任」で片づけようとしているのではないか。そんな疑問がぬぐえない。

 防衛省はイラク作戦への燃料転用疑惑を否定する報告書も発表した。

 しかし、その根拠はあいまいだ。一部入手できなかったデータがあり、実績を踏まえて推測を行い確認したという。無理がある理屈ではないか。

 民主党の対案も問題が多い。

 国連決議があれば給油再開を検討してもいい。アフガニスタンの復興支援では、民生部門に限定して自衛官らを文民として派遣する。国際治安支援部隊(ISAF)には参加しない。

 対案の柱はそういうことだ。

 対テロ戦争の給油支援が軍事活動の一環だということは、いまや常識といっていい。憲法九条に抵触する恐れがある。国連が認めれば給油活動ができるという考えには無理があろう。

 自衛官には武器携行を認め、武器使用基準も緩和するという。海外での武器使用や武力行使には厳格な歯止めが必要なのに、まるで逆行する発想だ。

 「停戦合意後」などとする派遣時期の条件も、いまひとつはっきりしない。政府が自衛隊の派遣先を「非戦闘地域」と強弁したイラク特措法のように拡大解釈される余地はないのか。

 民主党は対案を法案に仕上げることを検討しているそうだ。このままでは憲法上の疑義が消えない。再考を求めたい。

 政府は来週末の福田康夫首相の訪米前に法案の衆院通過を目指している。米国に給油再開の決意を示す狙いがあるようだが、国内論議をおろそかにするようなことがあってはならない。

 民主党の対案も出たことだ。これからは、自衛隊の海外活動と憲法の関係や日本の国際貢献のあり方など、根本論議も深める必要がある。

改憲国民投票法案情報センター