音楽地理学

Introduction to Music Geography

音楽地理学

 音楽は、楽しい。人の心を癒し、元気や勇気を与え、同時に多くの世界の人々とのコミュニケーションを図ってくれる。地理学の立場からみれば、世界各地から発信される音楽は、国や地域の歴史、文化、そして社会のあり方を考える素材である。フォークソング(民謡)あるいは民族音楽等はもともと時代性や地域性を反映したものであり、最近の音楽においてもそれは同様なことを見いだすことができる。
 さて、私がめざす『音楽地理学』は主として学校教育における地理学習を楽しく、豊かに進めるための素材を提供しようとするものであり、学問的体系を構築しようというものではない。いわば地理学習への興味と関心を喚起するためのものである。本来、地理学習において「音楽の地域性」を素材とする場合、最も重要なものはまさに音楽としての「旋律」「音階」の地域差であると思われるが、それは音楽の専門家集団にまかせることにしてー本当は、私自信能力がないことー、ここでは歌の「題目」や「歌詞」に表れる地理の要素を重視し、それを地理学習の中でどのように再構成し、授業にどのように取り入れていくかということを音楽地理学の内容としたい。

 こうした音楽地理学の発想は、江波戸昭『歌でめぐる世界の国々』古今書院、1967年、同 「世界の民謡」音楽の友の社、1970年、副島義也『現代歌謡の社会学』によるものであり、とくに江波戸の「荒れ野のバラ」、副島の「歌謡曲にみる地理的移動論ー津軽海峡冬景色」には深い感銘を受けた。それ故、私の音楽地理学はまさに先人の延長線上にあり、その意味でオリジナリティはない。しかし、江波戸、副島の事例にさらに多くの事例を加えることができれば、より地理学習を楽しく、豊かにすることができるのでないかと思われる。

 21世紀になっても「学校地理」は地名と物産を暗記し、知っていることだと思っている人々が多いのは、小・中・高の地理がつまらなく、無味乾燥であるという反面教師である。グローバル化する時代において「世界」を理解するために地理学習は重要な役割がある。地理学習を楽しく進める一つの方法として「音楽の地理学」はいかがでしょうか。