電波時計とは? 時間情報をのせてある標準電波1を、時計のケースやバンドに内蔵された超高性能なアンテナで受信し、時刻を修正するのが電波時計です。電波時計の動作原理の概要を図1に示します。独立行政法人情報通信研究機構日本標準時グループ[http://jjy.nict.go.jp/](東京都小金井市)で約10台の原子時計によって創られた日本標準時と、福島県田村郡都路村と同双葉郡川内村境界の大鷹鳥谷山山頂付近にあるおおたかどや山標準電波送信所(認識符号:JJY、37°22′N、140°51′E)の原子時計(短波帯の送信所の廃止後に合計3台から6台へ増設されました。)は遠隔制御によって連動しています。送信所からの標準電波は、アンテナを通して受信機に伝わります。ここで増幅を行い、受信パルスをマイクロプロセッサーに送ります。マイクロプロセッサーでは時刻信号の解読を行い、モーターを通して正しい時刻を表示させます。

図1:電波時計の動作原理
| 送信所からの標準電波は、アンテナを通して受信機に伝わります。ここで増幅を行い、受信パルスをマイクロプロセッサーに送ります。マイクロプロセッサーでは時刻信号の解読を行い、モーターを通して正しい時刻を表示させます。 |
昼間は聞こえない海外のラジオが夜間には聞こえたりすることは体験されたことがあると思います。電波は直進するだけではなく、反射や回り込みをします。これらの現象は、電波の周波数と大きな関係があります。地表の上空約60〜300kmには、太陽からの強い紫外線によって気体分子がイオン化された電離層が形成されています。電離層は低い方から、D層、E層、F層とよばれます。送信所のアンテナから送信された電波は、地表に沿って進む地上波、電離層に向かう上空波、地表を離れて進む空間波にわけることができます。それぞれの伝搬は図2のようになります。短波は電離層による反射によって遠距離(地球の裏側までも)まで飛ぶ利点があるので、短波放送として盛んに利用されています。このため標準電波の送信は当初短波帯が用いられていました。ただし短波は季節、時間などによる電離層の変動やデリンジャー現象などの影響を受ける短所があります。一方、長波は、周波数が低いため地上波として比較的長距離伝搬まで安定した送信を行うことができます。このため、日本でも、標準電波の送信に長波を使うようになりました。短波使用時と比べて、精度が格段に向上しました。

図2:電波の伝わり方
| 標準電波で用いられている長波は、地上波として比較的長距離まで安定した送信を行うことができます。 |
はじめに述べたとおり、日本ではおおたかどや山標準電波送信所(図3)から標準電波の送信を行っています。
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図3:おおたかどや山標準電波送信所の模型
| 高さ250m、送信周波数40kHz、送信機出力50kW。(21世紀夢の技術展、2000-08-06、東京ビッグサイトにて撮影) |
この送信局は、1999年6月10日(時の日)に運用が開始されました。施工業者は業務用アンテナで有名な電気興業株式会社です。それまでは、茨城県三和町(つくば市ではありません)にあるNTT名崎送信所から送信されていました。NTT名崎送信所は実験局だったため、送信出力が10kWと弱く、送信所から半径500kmくらい(青森から大阪くらい)までしか受信することができませんでした(図4の緑・太線の同心円)。
現在の長波標準電波は、周波数は40kHzで送信出力50kWです。受信範囲は時計・気象条件等によって異なりますがが、送信所から半径1000kmくらいまで受信できるようになりました(図4の青・太線の同心円)。九州・沖縄を除いて、ほぼ全国で受信できるようになり、各社から電波時計が発売されるようになりました。2001年には第二の長波標準局が九州にも建設されましたので、九州・沖縄も受信できるようになりました。

図4:電波時計の受信エリア
| おおたかどや山標準電波送信所=青、 はがね山標準電波送信所=赤、名崎送信所(旧)=緑で各500km単位の同心円で表示。太線で示した同心円が電波時計の受信可能なエリアの目安。おおたかどや山標準電波送信所移転後に九州・沖縄を除くほぼ全国で受信ができるようになりました。 |
電波時計は通常、内蔵の水晶時計で針を進めています。電波で送る標準時刻は、原子時計を基にしています。実用的な原子時計の誤差は30万年に1秒以下で、月15〜20秒ずれる普通の水晶時計とは桁違いの精度です。下記の写真(図5)はセシウム一次周波数標準器の模型です。実用的な原子時計はラックに収まるようなコンパクトなサイズで、市販品もあります。
日本標準時は通信総合研究所の中にある約10台の磁気シールドされた原子時計によって決められています。二つの標準電波送信所とは遠隔監視制御装置で連動しています。従って、日本標準時は、福島県(おおたかどや山)や佐賀県・福岡県(はがね山)だけではなく、東京都(小金井市)も発信地と言えます。

図5:セシウム一次周波数標準器CRL-01の模型
(21世紀夢の技術展、2000-08-06、東京ビッグサイトにて撮影)
| 1967年国際度量衡総会で1秒はセシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位(F=4,M=0およびF=3,M=0)間の遷移に対応する放射の91億9263万1770周期継続時間と定義されました。この一秒を正確に実現し、かつ測定もできる装置がなければ使えません。表示高精度でかつ自分自身の正確さを評価できる装置を一次周波数標準器といいます。通信総合研究所にあるセシウム一次周波数標準器CRL-01は170万年に1秒しか狂わない優れた時計です。 |
電波時計仕様の腕時計の価格は実売価格5千円〜6万円です(1993年頃の価格10〜12.5万円)。年差5秒以下の水晶時計が10万円以上することを考えるとコストパフォーマンスは高いと言えます。目覚まし時計2千円くらいのも発売されています。