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はじめに


 人類がこれまでにつくり出した温度は、高温では水素爆弾の中心の約1億度から、低温では断熱核消磁で到達した銀の原子核の約1億分の1K(絶対温度)まで17桁以上の広い範囲にわたっている。これに比べれば、日常生活は常温(約20℃)を中心とした数十℃の範囲で、非常に狭い温度範囲に限られている。(下図参照)
 温度を変えたとき、物質の性質が大きく変化するのはよく目にする。このことは、基礎科学だけではなく、実用的な応用にとっても重要な意味を持つ。例えば、天然ガスは-162℃以下で液化されて日本に運ばれている。液化することにより、体積が数百から千分の一になるので輸送には便利である。中央新幹線として開発が行われているリニヤモーターカーでは超伝導磁石の冷却に液体ヘリウムが用いられる。液体ヘリウムの温度は-269℃である。
 今回のおもしろ物理教室では、液体窒素を使った実験を行う。液体窒素の温度は-196℃であり、 この温度では超伝導現象など奇妙な現象も見られる。 UFO型の金属とその外径より僅かに大きい内径のドーナツ型の 金属を用いた熱膨張の実験、 酸素の沸点(-183℃)が窒素よりも少し高いことを利用した酸素の液化、 液体窒素の気化を利用した フィルムケースロケットの実験などを参加者が自ら行う。
 「理科離れ」と言われて久しいが、詰め込み型の教育が生んだ要因が大きいだろう。 講義よりも実験の方がはるかに科学への関心を抱くと思う。今回のおもしろ物理教室では、「-196℃の世界」と言う日常とは全く異なった世界でおこる奇妙な現象を自ら体験することによって、科学への好奇心を抱いて頂けてもらうこが大きなネライである。

広大な温度範囲で起こるいろいろな現象
温度は絶対温度の対数で示していることに注意。
絶対零度は、下方無限大のところにある。


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