7日目(1/15) 関〜京都市街

とりあえずミニストップを出た俺は国道1号線を走り出した。
段々と上り坂が増えてくる。
俺はヒッチハイクを試みようと思った。


先ず自転車をたたむ。
荷物を軽くまとめて、道路脇に置く。
そして、空に向かって真っ直ぐに親指をたてる。

車が来た。
緊張の一瞬、人生初のヒッチハイク、最初に通る一台目・・・・!


と、思ったのだがやめた。
なんか、照れる。
はっきり言えば、恥ずかしい。
俺は、
「良し、あと三台通ったら、始めよう」なんて子供みたいにしゃがみこんだ。
三台通った。
良し、次こそは!

・・・・・と思ったが、やっぱり恥ずかしい。
これを、3回程繰り返した(爆)。
自分でも笑えない程、度胸がないことが解った。

こんなことじゃダメだー!
良し、次、ちゃんとやらなかったら俺は死ぬぞ、と決め込んだ。
以前にも説明した通り、俺はこういう時に「死への制約」(注5)を設ける。


来た。
いけるぞ、俺!
親指を立てる。
トラックが猛スピードで向かってくる。
運転手は俺を見ていた。
が、やはり通り過ぎていった。

なんだ、一回やりゃ楽勝だな、と思った。
続けざまにその後1時間、俺はヒッチハイクを続けた。
何か最後の方なんか、めっちゃ笑顔で、
跳びはねながらヒッチハイクしてた。

半ばヤケクソに。
つーか、こんな変な奴、誰も乗せてくれない。
でも、楽しかったから良かった。
これで俺はヒッチハイクという技を身につけた。


この後も、自転車で進みながらたまに休憩がてらヒッチハイクをし、俺は滋賀県へと突入した。
(結局、1台もつかまらず。)


鈴鹿山脈の空は朝を迎えようとしていた。
もう山は越えもうすぐ琵琶湖というところまで来ていた。
あと数キロ、体力も限界が来ている。
看板に大津市内の文字が現れると俺はすぐ様コンビニのトイレへ駆け込んだ。
尿意も限界だった。

今まで気づかなかった、なかなか明るくならないと思ったら曇ってるじゃないか。
しかも駅前を歩く人々は皆、傘を持ち歩いてる。
天気なんて暫く気にしてなかった。
まさか恐れていた雨が来ようとしてるとは、昨日の天気からは想像もつかなかった。
琵琶湖へ着いたのだが、空は真っ白。
微かに霧がかっている。なんて憂鬱な天気なんだ。

十四山で出会ったヨウヘイは、「琵琶湖?ありゃ海だよ海!デカ過ぎ!」と言っていたが、
確かにデカい。果てが微かに、ホントに微かに見える。
波立たない海、琵琶湖。
初めて見た琵琶湖がこんなに曇っているだけあって、
これからの琵琶湖に対するイメージは「辛気くさい」「幻想的」みたいな、そんな風になってしまいそうだ。
俺は湖岸でギターを弾いた。
壮大な景色は何も考えなくても、景色が音を語ってくれる。
俺は只それを自分の感性のフィルターに通して、メロディーなりコードなりに置き換える。
曲を作るならやっぱ旅が一番だ。

雨が降り出した。
駅前へダッシュ、もう言わなくても解ると思うがマックへ駆け込んだ。


雨が止むのを待つ間、俺はコーヒーを飲みながら爆睡した。
山越えの疲れが爆発した。
9時就寝、友達のメールの着信音で目が覚めた。
もう昼の11時半。まだ雨は止んでいない。
メールはT高校の友から来ていた。
友人は京都へ修学旅行に来ていた。
最初は京都御苑へ行くそうだ。
俺はコレに間に合わせたかったから山越えを急いだのだ。
せっかくのこんな偶然、会わない手はない。面白いじゃないか。
早く京都へ向かわなくてはいけない。
外へ出るとひどく寒かった。雨こそ小降りになっていたがこれは辛い。
もともと京都では暫く休むつもりだったから移動はしなくて済むし、まぁ大丈夫なのだが。
「雨の京都」ってのも始めてだし、なかなか風情があっていいじゃないか。
京都まで移動してしまえばもう大丈夫、やっと中間地点まで辿り着こうとしている。
良くやった、ゆっくり休んでくれ俺の身体。


東山トンネルを向けると下り坂になり京都市街へ続いている。
京都は中学の修学旅行以来の訪問だ。
イメージはかなり違う、俺達は修学旅行なんかでは
京都の「都会的な部分」は殆ど省いて見学をして回り、
「古都京都」の部分を刷り込むかのような日程を組まされる。
実際京都はかなり都会だ、若者のファッションにしたって東京に全く引けをとらない。
それは京都市街に入って直ぐさま実感した。
京都では普通に、観光をしよう、と思い「るるぶ京都」を購入した。
んー流石に良い所が沢山だ、京都住みたい、と本気で思う。

と、ここで一緒に肉まんを買ったのだが、カルチャーショック。


俺 「あと、肉まん一つください。」
店員 「はい。○○はお付けしますか?
俺 「え、何ですか?」
店員 ○○はどういたしましょうか?」
俺 「え・・・・?あ、いや、いいです。」


○○いるか?なんて言われた事ないから何を言ってるのか解らなかった。
多分、京都より西側に住んだ事のある方は普通なんでしょうね。
東京に帰っても、「○○つけてください」って言ってみようと思います。

えー正解はですね、「カラシ」です。
「よろしかったでしょうか」に続き、文化の違いに仰天です。
始めて言われたのが、ここ京都な訳で、この「肉まんにカラシ」という味は俺にとって「京都の味」となってしまった訳です。
「カラシ醤油」は家で食べる時とかやりますけどね。

さて、こんな事件が起きたのも既に京都御苑前のサークルKでの事。
俺は京都についた訳です。
爽快、俺はホントにここに来たかった。
古都で和みたかった。幸せだ。俺は今京都にいる。


京都御苑は中学で来たはずだが記憶にない。
つーか中学の記憶なんぞ、もはや殆どない。
御苑は大きかった。自転車で乗り込み、砂利道をゆっくりと走る。
「今、京都御苑にいるよ」
T高校の友人にメールを送った。
「えっ!もう京都なの!?」と帰ってきた。
今、京都御所にいるらしい。(御所とは御苑の中にある建物です)
警備員のおじさんに聞いたが、ここは予約がないと入れないらしい。

警備員 「今日は今、予約で団体さんが一組入ってるよ。」
 「都立T高校の2年生ですよね。」
警備員 「んん?そうだったかな・・・・あぁそうだね、都立T高校さんだね。」
 「友達こん中にいるんすよ。旅の途中なんですけど丁度良く京都まで来たんで。(笑)」
警備員 「ほう。もうすぐ出てくるからその辺で待ってなさい。」

俺は近くに団体さんのバスを見つけた。
「都立T高校様」
おぉ、来てるね来てるねー。
ちょっと嬉しかった。
こんなとこまで来て、知ってる人に会えるとは。
テロで修学旅行が送れてなきゃ会うわけがないし、俺が思い立たなきゃ会うわけがない。
つまりビンラディンと俺のフィーリングがマッチしたということになる。
やっぱり何かあると思ったよラディン
やっぱり僕らは通じ合ってるんだね。(爆)

門から続々と高校生が出てくる。
ホントに騒がしい。
自分もあの中にいたら、はしゃぎ回ってるだろうな。
高校生達は集合写真の撮影に入った。
撮り終えたクラスがバスへ乗り込んでいく。
その際に俺の前をみんな、「何あれ?」みたいな目で見つめ通り過ぎていく。


友人が出てきた。
時間がないらしくほんの一瞬会っただけでバスの中へ消えていった。
あっという間に高校生達は京都御苑を去っていった。
後にメールが来たのだが、もう一人の友人(注6)が実はバスで俺に気付き、
手を振っていたそうなのだ。

俺はまたギターを取り出して弾いた。
すると、ジャージ姿の若い男女らが走って御苑の中へやってきた。
みんな俺の方を振り返ったが、すぐにまた走り出し何周かすると、男女は別れ、別々に準備運動を始めた。
もう3時くらいだからきっと部活だろうと思った。
部活の練習でこんな伝統も趣もある場所を使えるとは、ホントに羨ましい。
俺のいた軽音部も、こんな場所でみんなで野外バンド練でもしてみたかったな。
学生たちは生き生きしている。
たまに俺の方を振り返って何か話しているが聞こえない。
変な人と思われるのは決して構わないが、「変態?」はよしてくれよ君ら。

そんな学生らを見ていると、曲がどんどん書ける。
俺の真上で松の木を整えている庭師のおじさんたちも、何となく趣を感じた。
あぁ、やっぱ京都は最高だ。


また、雨が降り出したので俺は、本日2度目のマックへ。
(京都のマックの色が、赤ではなくて茶色なのは有名だがご存じだろうか?)
充電をすると俺は再び「るるぶ京都」を開いた。
今日明日で行きたいところを探す。
久々に酒を存分に煽りたいところである、京都に乾杯だ。
こんな寒い中では風情もくそもないので、何処か良い店は・・・・と。
おお、「立ち飲み」。
「一人でブラりといくのなら立ち飲み。」とある。
そんな店が三軒ほど載っている。
「バー風の洒落た店」と「店員が全員60歳以上の変な店」と「駅前のサラリーマンの常連が集まる店」の三種類。
まぁ、俺を良く知る人なら、俺が何処に行くかくらいわかるだろう・・・・。
当たり前だ、

「店員が全員60歳以上の変な店」に決まっている。

粋じゃないか、いいじゃないか、店の名前は「あ”」(あちょぼ)と言う。
七条大橋の交差点にある。ちょっと距離はあったが、少し寝た後俺はそこへ向かった。


店にあった張り紙。
「当店ではたらいているものは、全て六十歳以上です。
 お客様に精一杯サービスに努めますが、ちょっと遅くなったり、注文を聞き間違えたり、忘れたり、
 お運びがゆっくりになってもご辛抱ください。お願いします。
 老人力でガンバルスタッフ一同
 株式会社 J.B.S(ジイさんバアさんを仕組みする企業の略)」


ふははは。
何て粋なんだ、江戸っ子なんて言ってられないね。
おう、どんどん遅れやがれジイさん、バアさん!
俺は串カツ(2本\150)を何種類か計六本と、おでん(平均\80)二品、あと野菜炒め(\300)と、
スーパードライ大瓶(\350)を二本、くらい(かなり良い気分、かなり腹一杯)平らげ、
お会計も何と\2000以下!
立ち飲みって安いねぇ、美味かったし、店長のジイさんいい人だったし文句ないねー。
関西にくると、立ち飲みの店が結構頻繁に見れます。
一人で飲む時は是非、立ち飲みで。友達も出来やすいし、何より安い。
俺は良い気分で雨の京都を傘も差さずに走り出し、
同じく「るるぶ京都」に載っていた銭湯「船岡温泉」へと向かった。
「あ”」とは逆方向の千本今出川の方だったうえにちょっと迷った。
ここの大正時代創業から変わっていないという天井絵が見たかった。

もう0時を過ぎてるのに結構な人数がいる。
若い人が多い。
俺はサウナ・露天風呂・薬湯など全部ちゃんと堪能し、閉店間際に風呂をあがった。
脱衣場の天井絵を見て、京都にいることをしみじみ思い、銭湯を出る。
近くでポカリスウェットを買い、一気飲み。
さて寝床は決めてある。
さっき見つけた烏丸五条の薄暗いビルの下か、京都御苑
京都御苑は夜でも門が開いていた。
常時、御苑警察がパトで巡回しているが、影に隠れてしまえばわかるまい。
俺は御苑前についた。


雨で霧がかる京都の町。
その中で異様な程の濃霧を見せつける京都御苑。
俺は門に立ちつくす。
中の様子は霧に包まれて全く伺えない。
怖っ。
やっぱビルにしよ。


あれは誰が見ても寝る気にはなれない。
本気で公家の霊とかみたいのが出てる最中なんだと思います。
御苑内はきっと彼らのどんちゃん騒ぎが繰り広げられ、雨の夜は誰も入らないように霧が・・・・。
いや、マジで怖い。
無理だって、俺でもあれは寝れません。
呪われます。
いや、ある意味、飲まされるし酔わされる。
「羅生門」を思い出させてくれました。


(注5)「死への制約」
→妄想家の人ならやると思うが、例にして挙げると、
 あと5歩であの電柱を通り越さなきゃ死ぬ、とかそういった類いの暗示。良くやるんです。

(注6)もう一人の友人
→現在、PVでそれなりにスタッフをやってくれているミサの事である。