ガストでヨウヘイ達と別れ、まもなく俺は天竜川を越え、三重県に突入した。
これで4県目。此処まで来ても実際4県しか跨いでないのはちょっと少ない気がした。
この辺りは川が多い。
夜の河川は奥の方がうっすら光を放ち少し気味が悪い。
遠くの方で何者かが呼んでいるようにも聞こえる川のせせらぎ。
程なくして俺は四日市市街へ入った。
ここはJR四日市駅と京阪四日市駅が800m程の間隔で対立して置かれている。
普通の駅前を想像すると、何かしらマックやらコンビニやら携帯ショップが建ち並んでいるのだが、
JR四日市駅は都会的な雰囲気はあるのに駅前は何でもないビルばかり。
都会的な建物が続く駅前に対し、駅そのものはまさに無人駅。
JR四日市駅だけが廃れ、異様な雰囲気を放っていた。
それに比べ、京阪四日市駅前は駅ビル(近鉄)もあればマックも、お洒落なカフェもある。
コンビニに至っては駅をグルっと回っただけで4つもあった。(しかも全部ampm)
このあたりはJR勢力が弱いのか、この街は分かり易い例だった。
7時になるのを待ちマックに入る。
もうすっかり定番となった充電タイム。
この先のルートを考える。
ちょっと遠回りルートだと、ずっと東海道を走ることになる。
もう少し南下してから北上、琵琶湖の下先端に出ることになる。
もう一つは、四日市から鈴鹿スカイラインを通って、湯ノ本温泉を通過し、琵琶湖大橋に出るルート。
何より温泉に入りたいし、琵琶湖大橋も渡れるかは知らないが渡りたい・・・。
しかしコンビニとかは東海道を通った方が全然あるだろうし、こちらは鈴鹿山脈ド真ん中なので、近道だが辛い事必至。
遠回りをすれば折角の観光名所を二つも見逃すことになるし、結局山道になることに変わりはないし・・・・。
で、結局湯ノ本温泉に行く事にした。
つまり「辛い近道ルート」の方。
一眠りしたあと、そちらへ向かって行くと、
段々とその輪郭を現す鈴鹿山脈の皆様。
でかい、近くに寄れば寄るほどデカいっすよ、あなたたち。
しかし俺は箱根の山を越えた男、貴様らまだまだ箱根に比べたら
ちっちぇーんだよ!(そうでもない)
この時間帯から登り始めると、鈴鹿山脈さん達と熱い夜を過ごす事は確実。
俺は覚悟を決めた。
いただきます。
日本中の道にはJAFが設けている「道の駅」という休憩所が点々とあって、
旅をする者たちには欠かせない憩いの場がある。(俺もこの旅始めて知ったんだけど)
普通の旅行客とか、場所によってはトラックの運ちゃん大勢、旅の人は余りいませんが
俺は「道の駅」の雰囲気が大好きだ。
昔で言うなら、さながら宿場町みたいなやつなんだろう。
今日もまた鈴鹿山脈をいただく前に「道の駅」があった。
「道の駅・菰野ふるさと館」
ギターが好きだというナウなおばちゃんが俺に親切に湯ノ本温泉について教えてくれた。
「この前年代物の40万もするアコギ弾かせてもらったのよ」と嬉しそうに話してくれた。
とても良いおばちゃんだったのだが、化粧の濃さが気にかかった(汗)
おばちゃんに教えてもらった通りに俺は湯ノ本温泉へと向かう。
今だと500円くらいで入れるところが結構あるから、と色んな場所を教えてくれた。
俺は「希望荘」という鈴鹿中腹あたりにある公共の宿に行くことにした。
湯ノ本温泉駅を越えて鈴鹿スカイラインの看板が目に飛び込んできた。
「希望荘」もスカイライン沿いにあるので通りに入った。
整備はされているが延々続く坂道。
見下ろせば四日市の街並みが美しい。
途中いくつもの温泉宿が建ち並ぶ鈴鹿スカイライン。
そのどれもが競い合ってる感じで結構宿の中は活気があるように見える。
しかし山道に人気はなく、皆が皆、車で俺を横目に通り過ぎていく。
途中すれ違ったおばちゃんの5人組は温泉帰りと見えた。
あとは誰ともすれ違うことはなく、「希望荘」にたどり着いたのだが。
フロントで525円支払い、4Fの「ゆうすげの湯」へ向かう。
入浴のみで来てるお客さんは結構いるみたいだ。
露天風呂から広がる、もう遙か下に見える四日市の街。
山道の疲れもブっとぶ程、壮大な景色の中、温泉浸かりっぱなしの1時間。
俺はもう風呂にハマった。
銭湯・温泉、最高。
つーか、旅の途中に入る銭湯や風呂ってのはホント癒される。
もう風呂なしではやっていけない気がする。
もう3日連続で入ってるし。
これがあるから明日も頑張れる、とそれくらい風呂が好きになった。
風呂から上がった俺はロビーで、ビールと共に湯上がり気分を楽しんだ。
気づいたら寝ていたようだ、外は早くも暗くなり始めている。
日帰りの客が多かったせいか「希望荘」はもう落ち着いていた。
俺も早く発たなくてはいけない。
明日の朝までには琵琶湖に到着だ。
勢い余って「希望荘」を後にした。
まだまだ上り坂は続く。
「希望荘」より先はもうスカイライン沿いに宿はない。
自転車を押しながら登り坂をやり過ごさなくてはいけない。
やはり道はひっそりと静まり帰り、道行く人もなく、街灯も全くなく、怖いくらいの闇が果てしなく続く。
100均でライトを買っておいて良かった。
流石の俺でもこれはかなり怖かった。
暫く歩いても車の一つも通らないのだ。
肝試しどころのさわぎじゃない、途中滝があって、恐らくここで自殺した人も・・・・
何て考えてしまい、俺は歌い出した。
滝を越えたくらいでそろそろ、滋賀県突入の筈、と足を速めた。
鈴鹿トンネルを越えれば、滋賀県。
どうやらそれらしいものが見えてきた。
ん?
何か立ってるぞ?
遠くて見えない。
人か?
んー違う、何かの看板だな。
俺は走った。
「この先、冬期通行止につき、全車両・歩行者は通行禁止」
・・・。
・・・・・。
・・・・・・・・・・。
え?
何が?
ははは、またまた、ご冗談を。
行けるだろーこんなの。
トンネルを覗いてみる。
そこはまさに黄泉へとでも繋がっていそうな真っ暗闇。
生暖かい風が頬をかすめた....。
普通トンネルってオレンジ色のライト点いてるよね。
ち、ちきしょー!!!(狂)
一気に坂を下り出す。
さっきまで俺が登ってきた、長い道のりを、長い上り坂を逆走。
下り坂は普通楽しいのだが、楽しい訳がない。
どうりで「希望荘」以降、車すら通らなかった訳だ、と今やっと自分のミスに気づいた。
そういえば、スカイラインに入った時、「鈴鹿トンネル通行止め」って書いてあったような・・・・。
もう無常観一杯一杯で下り坂を大爆走。
そして、
迷子になりました(没)。
大爆走しずぎたせいでどっかで道を間違えたようだ・・・・。
何て、ツイてない日なんだ。
太陽が沈んじまったから方角もわからない。
街の明かりも全く見えない。
やっぱり車も通らない。
民家もない。
やばい。
やばすぎる。
俺はとにかくどこかに出ることを祈って、真っ直ぐに走り続けた。
おっ!
何かある!
ちょっと明かりも点いてる!
人がいるかも・・・!
あーとにかく誰か助けてー。
とにかく何でもいいからと、その建物に近づいた。
「湯の本斎場」
・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
何でもいい、とは言ったかもしれんが、
せめて生きてる人にして欲しかった。
あぁ、来たか遂に、「お迎え」が。
こんなオチってどうなんでしょう。
死にたくねー。
しかも温泉観光でなんて嫌だ。
俺は生きて帰らなくちゃいけない。
もう、ここまでオチがついたら、このまま真っ直ぐ走るしかないっしょ。
俺は、再びこの斎場へ来ない事を祈って(死)走り出した。
はぁ。
何もねーよ。
戻るか。
と思った時。
後ろから常用車が。
こ、これは!
付いていけばきっと街に出る、と思い全速力で後ろを追っかけた。
そして、遂に、
明かりのある交差点にでた。
歩いていたおばちゃん二人に道を尋ね、山を下り、
俺は命からがら湯ノ山温泉を脱出した。
そして、再び四日市市街に戻ってきた。
改めて、地図を再確認すると、
鈴鹿スカイラインは冬期通行止め、とちゃんと記してあった。
もっと早く気づいていれば・・・。
もう時間は午後7時。
これでは間に合わない。明日には琵琶湖の予定なのに。
どうにか通れる最高の近道を探し出し、
俺は国道306号線を通り、とりあえず亀山まで出ることにした。
亀山からまた東海道が続いている。
もはや無難にこれしかない、と思った。
「急がば回れ」の意味を今日はホント実感した。
もう回っちゃいます。
鈴鹿市を越え、亀山市街。
時間はとうに午後10時を回っていた。
とりあえず東海道沿いのコンビニで考えよう、と俺は更に関という処まで走った。
ミニストップで考えに耽る。
もうすぐ今日が終わってしまう。
あぁ、温泉には入れたが、一日、もったいないことをした。
このあとどうしたらいいものか。
夜通しで山越えか、もしくは・・・・ヒッチハイク?
とにかく行くしかない。