21日目(1/29) 広島滞在〜東京行き高速バス

つぼ八を出た俺は駅前に向かっていた。
そういえば地下街があったはずだ、朝までそこで休むことにしようと思った。
まだ雪は降り続けている、寒くて仕方がない。

広島駅地下街。
バスのアナウンスが意味もなくひっきりなしに流れ続け、けして静かではない。
彷徨いている人々が6人程度いる。
地下へ降りると、皆俺を怪訝そうに見た。
ある通路にはダンボールの塀が立ち並んでいた。
ホームレスの寝床になっているのだろうこの地下街は。
彷徨いてる人々は、ちょっと朝の早い会社員かと思ったのだが、どうやらホームレスみたいだ。
俺はショーウィンドウの前に腰を下ろした。
寝袋をひき、中に入りギターを取り出す。
静かにギターを弾く。
すると一人のおじさんが話しかけてきた。

おじさん 「ここの人じゃないね、どっから来たんだい?」
俺 「東京です。この自転車に乗って、ここまで。」
おじさん 「ほー良くやるのう。ギター弾いて金稼いどるんか?」
俺 「いえ、何か弾きたくなるんで持ってるだけです。」


「そっかそっか。」といっておじさんはフラフラしながら去っていった。
頻りに俺の寝袋を見ていたような気がするのだが、気のせいか?
どうやら気のせいでもないようで、寄ってくるホームレスは皆俺の寝袋を見ている。
これが欲しいのだろうか。あげる訳にはいきませんぞ。
これは寝るのが危険な気がしてきた。
と、考えてはいたもののどこでも寝れてしまう俺。

午前6時、警備員に起こされる。
「ちょっとここどいてもらえるかな?」
「あ、はい。すいません・・・。」
俺はそそくさと外へ出た。
まだ真っ暗。
コインロッカーが午前5時から開いていたはずだ。
今日は観光に集中したいから、このクソ重いリュックを背負いながらではマズい。
コインロッカーのある駅の一室は暖房もかかっていて、別に警察も来ない。
従ってホームレスも数人いる。
俺はリュックを下に置いて、中から最低限の荷物を取り出す。
そして昨日無印で買ったトートバッグに詰め込む。
iBOOK、旅帳2冊、タオル、ティッシュ、テレコ、防寒用セーター、以上。
勿論ギターは持ったままだ。
俺の相棒。

荷物を整理するととりあえずコーヒーを買い、室内に腰を下ろす。
ギターケースに落書きをしたくなったので、ポスターマーカーを取り出し、より一層グチャグチャにしていく。
一人のホームレスに話しかけられた。
少し話をした。
懐かしい東京の話もした。何か30年前に行ったきりだそうで、目白を知っていた。
ホームレス 「あの辺は坂が多かったのを覚えてるよ。駅前の大きな坂の途中にある喫茶店で良く女とお茶したもんだ。」
確かにあの辺りは、軽く山くらいの坂が続いてる。
旅に出た為、サボることになってしまったドミノ目白店(ヘルプ)を思い出す。
暫くすると、おじさんは他のホームレスと一緒に「○○が暖かい」という話で、そこへ行ってしまった。
俺は落書きを続ける。
少し外が明るくなり、平日の駅前ラッシュが始まった。
たまに外に出て煙草を吸い、フラフラと歩き回り、
午前7時半、ちょっと早く広島に着いてしまったと泉からメールが来た。
俺は急いでギターとリュックをかついで外へ飛び出す。

新幹線乗り場前にバスは到着すると言っていた。
噴水のような何かの前で俺は待つ。
学生が多い。みんなして俺の方を振り返る。
この辺りは路線電車「広電」が広く一般的な交通手段のように思える。
それだけ広電乗り場にはあらゆる人々が群がっている。
メールが来た。
どうやら逆側にいるようだ。
今からこっちに来てくれるという。
多分、駅の両側どちらとも栄えているという都市はこの辺りでは、ない。
きっと反対側は廃れているんだろうなと思った。
暫くすると、遠くから見慣れた泉の姿が人の流れの中に見えた。

全く良くきたもんだ。
まずは賞賛してやりたい気持ちで一杯だ。
コインロッカーに荷物を入れに行く。
そして、この自転車も休養だ。近くの自転車置き場に100円で預けておく。
そして俺達は広島観光へ出かけた。

もう一人旅は終わった。
今日という一日はもう観光に一生懸命に。
泉は、日帰りで19時の高速バスに乗って帰るようなので、
俺も帰ることにする。折角なんだから一緒に帰りたい。




最後の、この一日は、
日記に多くを残さず、自分の心にしっかり焼き付けとこうと思う。
きっと忘れる事は決してできない日なので、日記にも書くことはないか、と。
とにかく最後に相応しい、楽しい一日だった。




大ざっぱに、観光した場所を挙げる。
宮島・厳島神社(世界遺産)。 →おまけ
名物広島お好み焼きを昼食にした、「麗ちゃん」にて。
広島城。
広島原爆ドーム(世界遺産)。
平和記念公園
ツル)、ストリートも結構いた。
そして微妙に夕食で、「釜飯酔心本店」へ。カキにフグづくしで贅沢を!

駅に着いた俺は先ず、泉を残し、コンビニへ向かいリュックを我が家へ送った。
駅ビル1階のお土産屋で、ドミノピザへお土産を。
広島の地酒なんかも買って、コンビニへバスで食べるお菓子やら飲み物を買って、時間は18時50分くらいに。
泉は、こっちのマック限定の「中華あんかけバーガー」に心奪われたようで買っていた。
あれは美味い。

どうやら、遂に、
この旅も終わる時が、終点が来てしまったようだ。
旅が終わる、このバスに乗り込めば、もう東京に着いてしまう。

荷物を持ち、バスに乗り込む。
高速バスは初めてだ。泉は結構乗っているようだが。
人は少ない。指定された奥の方の席に俺達は座った。

バスは発車する。
俺は、旅の全てを思い出そうと、旅帳を開き、写真を見て、思い出の曲を聞いた。
少し前のことなのに、もう遠く昔のことのようだ。
走った距離の分だけ、遠ざかって見えるのかもしれない。
書き貯めた曲、想いを綴った文章、鮮明に思い出される思い出の数々。

バス消灯後、俺は泣いていた。
旅を終えた喜びと、もう一度旅に出たいという強い思いが、グチャグチャになっていた。
頭の中では、トシも旅で聞いていたという、くるりのワンダーフォーゲルが流れていた。

真っ暗なバスの中で、最後の一日が終わった。




時折バスの中に差し込む高速の灯りが、
決して明るくはなく、闇にも浸らず、
月明かりに照らされていた孤独な道々を、
走り続けた数々の夜の黙を風に乗せる様に、

只、流れていた。