起床、9:00。
良かった。まだガソリンスタンドは開く気配がない。
ここの人が来てしまう前に出発しなくてはならない。
雨は止み、曇ってこそいるが遠くには晴れ間が見えた。
もう川之江市(愛媛)は目の前だ。
すぐに海沿いに出た。
風が強い。速度も自然と落ちてしまう。
雲は美しい。
嵐の後らしく乱れ狂った様子が窺える雲。
空にヒビが入った様に割れ、光を吹き出している。
瀬戸内海は相変わらず凄い。
10:40頃、川之江駅周辺に到着。
所持金が底を尽きそうだったので、銀行でお金を下ろした後、
ローソンで朝御飯(クロワッサン5個入り、からあげくんチーズ、肉まん)を買い、
公園で食べた、朝から異様な食欲だ。
そして直ぐに川之江を去った。
街並みは工場地帯に変わった。
この辺りは製紙工業が盛んみたいだ。
「大王製紙」「愛媛製紙」の工場が国道11号線に立ち並んだ。
両社の本社なのだろうか、大きな建物もあった。
「大王製紙」は皆も良く使っているであろう、エリエールの会社。
「愛媛製紙」はエルモアなんかの会社。
なんだかこの辺り一帯は、
製紙をやってるだけあって紙の匂いが漂っていた。
あの富士市の魔光炉を彷彿とさせる煙突や、(2日目参照)
木屑を溜め込んでいる場所があったり、
鉄の管が縦横無尽している工場、
表現は多分悪いですが、ホントにFF7の「腐ったピザの下」的な世界が広がっていた。
俺はこういう感じ大好きなんだが。
特にウケたのが、「濃硫酸タンク」。
邪悪だ。
冷たい潮風の中、新居浜市に到着。
間もなくのことだったのだが、
俺は「究極の決断」を迫られることになった。
なぜなら、
マックとガストが隣り合わせていたからだ。
両店を睨み続ける。
四国入って初めてのマック、今の時間ならランチも素敵なガスト。
マックかガストか・・・・ガストかマックか・・・・・・。
悩む事10分近く。
ある事に気づいた。
そういえばマックが見かけないメニューを掲げている。
「中華あんかけバーガー」「マック春巻」
最後にマックへ行った時は(岡山)こんなの無かった。
き、気になる。
俺はマックへ入店することにした。
俺はもしかしたらと思った事を聞いてみた。
俺 「あの中華あんかけバーガーって愛媛の限定ですか?」
店員 「そうですね、今の期間はこの辺りの限定になってます。」
おおー。
食べるしかない。
俺は中華あんかけバーガーセットとマック春巻のセット、\600を頼んだ。
う、美味い。
今までのマックではあり得ないこの不思議な味。
中華とマックが絶妙にマッチ、美味すぎる。
マック春巻(カレー味2本入り)はちと油が強い。
がしかし、本格中華ばり春巻ならではのサクサク感。
こちらも負けじと美味い。
関東にこの味がやってくる日は来るのだろうか?
早く東京でもこの味を。(結局来なかった)
昼食を終えた今の時刻は13:00。
香川を出発してから、どうも疲れが取れにくくなった。
流石にこの辺りで旅の疲れも顔を出し始めたのかもしれない。
気づいてはいなかったが、やっぱり疲れていたようだ。
俺は食後の睡眠に入った。
16:30、マックを出た後、
海沿いの国道11号線を再び走り出した。
松山まであと60km。
美しすぎる瀬戸内海の夕焼けは、
もうすぐ旅が終わりであることを告げるように燃えていた。
日も沈んでしまった18:30。
愛媛の上部(上に尖ってる部分ね)へ続く道と、
山を突っ切って松山へそのまま続く国道11号線と大きく二手に分かれるここは西条。
この辺りは温泉が多い。
最後の山越えを目前に、温泉で疲れを癒したいと思った。
国道11号線沿いに雑誌(スーパー温泉特集)にも載っていた「石鎚温泉」があった。
3日振りの風呂。
受付で入浴券を買い男湯へ直行した。
なかなか近代的な造りの綺麗な温泉で、しっかりしている。
風呂の種類も旅中一番の多さ。
泡風呂、マッサージ風呂(全身、背筋)、うたせ湯(痛かった)、
低周波風呂(今回は電撃にも耐えました)、薬湯、サウナ、露天風呂など。
低周波風呂はかなりキビしかったが、確かに血行が良くなった感じ。
足の疲れがすっきり取れた。
風呂から上がったあとは、温泉内に設けられたお食事処「ゆあがり亭」にてビール。
生中が\250、手作りのおつまみも平均\200程度と安い。
湯上がりのおじさん達の中、テレビを見ながらホロ酔い気分を楽しんだ。
今日はこのまま行けば、深夜には松山に着くだろう。
現在の時刻は21:30。
松山まではちょうどあと50km。
このまま国道11号線で山を越え、松山へ行くつもりだ。
山の間を通る感じなので、そこまで辛くはないはずだ。
山の中へ入り込んでいく。
「桜三里」
春には桜が咲き乱れる全長10km程の渓谷だ。
桜は咲いていないが、
今日は満月が煌々と輝いている。
月がこんなに明るいと思ったのは初めてだ。
街灯の少ない山の中なのに、ライトは全く必要ない。
月明かりでぼんやりと姿を見せる桜三里の渓谷は、
闇から滲み出るように、青みがかった緑を放っていて神秘的だった。
桜三里を走る。
平坦で緩やかな坂が続き、
「あぁ、上り坂が終わった!あとは松山まで下るだけだ!」
と思ったら、再び登り坂・・・・という感じが何度か繰り返された。
平坦で長い坂というのは、とても辛い。
しかし脇には美しい渓谷、春には謳歌を讃える桜三里。
美しく、辛い。
何となく、自分の恋や青春を象徴しているかのようだった。
桜三里を駆ける俺と、俺の体験を重ね合わせた。
そう思って、俺は頑張った。
自分の恋も青春もこの桜三里のように、いやそれ以上に美しかった。
今、そう思える。
それが何より自分の自信となった。
美しく、辛い、この道を、
自分が今までやってきた全てを信じるように、走った。
涙が勝手にでてくる。
今まで生きてきた全てを思うと、
涙が止まらなかった。
止まらなくて、道の開けた場所に倒れ込んだ。
何の涙なのか、良くわからない。
悲しくはない、決して辛くもない、嬉しいのかも知れない。
今まで、ずっとずっと溜め続けてきた涙なのかも知れない。
今、自分の持ってる全ては、
信じている全ては、想い続けた全ては、
全部、全部、俺の中で確かになった。
自分が糧にしている全てがわかっていたのに、
それは本当にわかっていなくて、でも今わかった気がした。
涙が止まると、渓谷に向かって、
「俺は幸せだ」と3回、叫んだ。
そしたらまた嬉しくて泣いた。
言葉に出してみて、幸せであることを確認して、
また嬉しくなって泣いてしまった。
きっと、「帰るべきところ」があるからだ。
「もう一人の自分」もちゃんとそこにいた。
山を越えた。
松山まで、あと19km。
明日の昼にでも、松山港からフェリーで広島へ向かう。
これがラストラン。
きっと旅としての、ラストラン。
心して走った。
旅を思い出して、走った。
旅の間、終始、想っている人がいた。
それだけで全てが、幸せだった。