19日目(1/27) 観音寺〜松山(愛媛)

起床、9:00。
良かった。まだガソリンスタンドは開く気配がない。
ここの人が来てしまう前に出発しなくてはならない。
雨は止み、曇ってこそいるが遠くには晴れ間が見えた。
もう川之江市(愛媛)は目の前だ。

すぐに海沿いに出た。
風が強い。速度も自然と落ちてしまう。
雲は美しい。
嵐の後らしく乱れ狂った様子が窺える雲。
空にヒビが入った様に割れ、光を吹き出している。
瀬戸内海は相変わらず凄い。


10:40頃、川之江駅周辺
に到着。
所持金が底を尽きそうだったので、銀行でお金を下ろした後、
ローソンで朝御飯(クロワッサン5個入り、からあげくんチーズ、肉まん)を買い、
公園で食べた、朝から異様な食欲だ。
そして直ぐに川之江を去った。

街並みは工場地帯に変わった。
この辺りは製紙工業が盛んみたいだ。
「大王製紙」「愛媛製紙」の工場が国道11号線に立ち並んだ。
両社の本社なのだろうか、大きな建物もあった。
「大王製紙」は皆も良く使っているであろう、エリエールの会社。
「愛媛製紙」エルモアなんかの会社。
なんだかこの辺り一帯は、
製紙をやってるだけあって紙の匂いが漂っていた。
あの富士市の魔光炉を彷彿とさせる煙突や、(2日目参照)
木屑を溜め込んでいる場所があったり、
鉄の管が縦横無尽している工場、

表現は多分悪いですが、ホントにFF7の「腐ったピザの下」的な世界が広がっていた。
俺はこういう感じ大好きなんだが。
特にウケたのが、「濃硫酸タンク」
邪悪だ。

冷たい潮風の中、新居浜市に到着。
間もなくのことだったのだが、
俺は「究極の決断」を迫られることになった。
なぜなら、

マックとガストが隣り合わせていたからだ。

両店を睨み続ける。
四国入って初めてのマック、今の時間ならランチも素敵なガスト。
マックかガストか・・・・ガストかマックか・・・・・・。
悩む事10分近く。
ある事に気づいた。
そういえばマックが見かけないメニューを掲げている。
「中華あんかけバーガー」「マック春巻」
最後にマックへ行った時は(岡山)こんなの無かった。
き、気になる。
俺はマックへ入店することにした。

俺はもしかしたらと思った事を聞いてみた。
俺 「あの中華あんかけバーガーって愛媛の限定ですか?」
店員 「そうですね、今の期間はこの辺りの限定になってます。」
おおー。
食べるしかない。
俺は中華あんかけバーガーセットとマック春巻のセット、\600を頼んだ。
う、美味い。
今までのマックではあり得ないこの不思議な味
中華とマックが絶妙にマッチ、美味すぎる。
マック春巻(カレー味2本入り)はちと油が強い。
がしかし、本格中華ばり春巻ならではのサクサク感。
こちらも負けじと美味い。
関東にこの味がやってくる日は来るのだろうか?
早く東京でもこの味を。(結局来なかった)

昼食を終えた今の時刻は13:00。
香川を出発してから、どうも疲れが取れにくくなった。
流石にこの辺りで旅の疲れも顔を出し始めたのかもしれない。
気づいてはいなかったが、やっぱり疲れていたようだ。
俺は食後の睡眠に入った。


16:30、マックを出た後、
海沿いの国道11号線を再び走り出した。
松山まであと60km。
美しすぎる瀬戸内海の夕焼けは、
もうすぐ旅が終わりであることを告げるように燃えていた。

日も沈んでしまった18:30。
愛媛の上部(上に尖ってる部分ね)へ続く道
と、
山を突っ切って松山へそのまま続く国道11号線と大きく二手に分かれるここは西条
この辺りは温泉が多い。
最後の山越えを目前に、温泉で疲れを癒したいと思った。
国道11号線沿いに雑誌(スーパー温泉特集)にも載っていた「石鎚温泉」があった。
3日振りの風呂。
受付で入浴券を買い男湯へ直行した。
なかなか近代的な造りの綺麗な温泉で、しっかりしている。
風呂の種類も旅中一番の多さ。
泡風呂、マッサージ風呂(全身、背筋)、うたせ湯(痛かった)、
低周波風呂(今回は電撃にも耐えました)、薬湯、サウナ、露天風呂など。

低周波風呂はかなりキビしかったが、確かに血行が良くなった感じ。
足の疲れがすっきり取れた。
風呂から上がったあとは、温泉内に設けられたお食事処「ゆあがり亭」にてビール。
生中が\250、手作りのおつまみも平均\200程度と安い。
湯上がりのおじさん達の中、テレビを見ながらホロ酔い気分を楽しんだ。
今日はこのまま行けば、深夜には松山に着くだろう。
現在の時刻は21:30。
松山まではちょうどあと50km。
このまま国道11号線で山を越え、松山へ行くつもりだ。

山の間を通る感じなので、そこまで辛くはないはずだ。
山の中へ入り込んでいく。




「桜三里」

春には桜が咲き乱れる全長10km程の渓谷だ。
桜は咲いていないが、
今日は満月が煌々と輝いている。
月がこんなに明るいと思ったのは初めてだ。
街灯の少ない山の中なのに、ライトは全く必要ない。
月明かりでぼんやりと姿を見せる桜三里の渓谷は、
闇から滲み出るように、青みがかった緑を放っていて神秘的だった。

桜三里を走る。

平坦で緩やかな坂が続き、
「あぁ、上り坂が終わった!あとは松山まで下るだけだ!」
と思ったら、再び登り坂・・・・という感じが何度か繰り返された。
平坦で長い坂というのは、とても辛い。
しかし脇には美しい渓谷、春には謳歌を讃える桜三里。
美しく、辛い。
何となく、自分の恋や青春を象徴しているかのようだった。
桜三里を駆ける俺と、俺の体験を重ね合わせた。
そう思って、俺は頑張った。

自分の恋も青春もこの桜三里のように、いやそれ以上に美しかった。


今、そう思える。
それが何より自分の自信となった。
美しく、辛い、この道を、
自分が今までやってきた全てを信じるように、走った。
涙が勝手にでてくる。

今まで生きてきた全てを思うと、
涙が止まらなかった。
止まらなくて、道の開けた場所に倒れ込んだ。
何の涙なのか、良くわからない。
悲しくはない、決して辛くもない、嬉しいのかも知れない。
今まで、ずっとずっと溜め続けてきた涙なのかも知れない。

今、自分の持ってる全ては、
信じている全ては、想い続けた全ては、
全部、全部、俺の中で確かになった。
自分が糧にしている全てがわかっていたのに、
それは本当にわかっていなくて、でも今わかった気がした。
涙が止まると、渓谷に向かって、
「俺は幸せだ」と3回、叫んだ。
そしたらまた嬉しくて泣いた。
言葉に出してみて、幸せであることを確認して、
また嬉しくなって泣いてしまった。
きっと、「帰るべきところ」があるからだ。
「もう一人の自分」もちゃんとそこにいた。




山を越えた。
松山まで、あと19km。
明日の昼にでも、松山港からフェリーで広島へ向かう。
これがラストラン
きっと旅としての、ラストラン
心して走った。
旅を思い出して、走った。

旅の間、終始、想っている人がいた。
それだけで全てが、幸せだった。