起床11:30。
おいおい、8:00のフェリーに乗る予定じゃなかったっけ?俺。
3人して急いで出る準備を始める。
13:00のフェリーに乗ることにしたので余り時間に余裕がない。
でも、余裕ぶって「笑っていいとも」なんか見たりしてる。
あぁ、久々に背負うこのバカ重いリュック。
推定重量、18kg。
腰が砕けそうだ。
やはり次に旅をするときは、
「自転車の脇に取り付けるバック」みたいの、あれ欲しい。
12:30頃になって、
そろそろかおるん宅出発の時間となった。
俺はかおるんの愛猫キャロンに別れを告げた。
キャロンは可愛らしく玄関までお見送りに来てくれた。
うちの猫も元気にやってるだろうか。
時間がない。
結構やばい。
フェリー乗り場に着いたのが12:55。
急いで鬼ヶ島行きのフェリーを探す。
切符売り場で往復の切符を760円で購入。
自転車に乗ったまま、直ぐフェリーに乗り込む。
「ホントお世話になりましたー!!」
余り別れを惜しむ間もなくフェリーはもう出航しようとしている。
二人はカメラを構えて、旅立つ俺を撮っていた。
「いってらっしゃい!」
二人は手を振ってくれる。
間もなくフェリーは出航した。
船内の踊り場にでて、
遠ざかる高松の街を眺めた。
船が白波を立てて、海面に足跡を残してゆく。
鬼ヶ島は、そう遠くない。
そう遠くはないのだが、
船出というのは何か、遠くへ行くようなイメージがあって、
妙に「旅立ち」を思い出させ、涙を誘う。
数時間後にはまた高松へ帰って来るというのに、
高松が恋しくてしょうがない。
15分後、女木島(鬼ヶ島)に到着。
船を下りると、いきなりモアイ。
そして「ようこそ鬼ヶ島へ」と鬼の像が。
モアイの意味が全くわからない。
ここはイースター島と何の関係があるのか、真相は闇に包まれたままだ。
港に付けられた会館には、
ウッチャンナンチャンやら水野マキ、TAKE2など、
恐らく番組の企画で来たのだろうが、
いくつか写真が飾られていた。
特に印象に残ったのが、小柳ルミ子の写真。
他の面々に比べ、存在そのものが異様なオーラを放っていた。
鬼が住んでいたとされる洞窟へ行かなくては話にならない。
鬼の像には洞窟まで2.4kmと標されている。
恐らく、あの山の天辺だろうな。
展望台らしいものがあるのをここからでも確認できる。
住宅街の細い路地を通り抜け、山へ続く道に出た。
麓に神社があってそこに白い犬がいた。
動かない。
俺が前を通ると、何か悟ったような目で俺を見つめた。
俺は思った。
この犬、ただ者ではない。
この鬼ヶ島を護っているような、
何か神懸かり的なものをこの犬に感じた。
俺は「お邪魔します」と犬に一礼しておいた。
結構キツい上り坂だ。
2kmくらいだからそう大した距離ではないが、
急すぎるので自転車を押して進んだ。
途中、農作業用の特殊車に乗ったおじいさんやら、
車のトランクを開けっ放しで走り去る車が俺の脇を横切ってゆく。
中腹に古墳があった。「円山古墳」。
もの凄く小さい古墳だ。
せっかくなので、古墳に上がってみる。
そこには小さい賽銭箱があった。
俺は財布をとりだして、3円だけ入れた。
ご先祖に、先の安全を願った。
古墳の直ぐ側に、遊歩道の入り口があり、
道路と二手に分かれていた。
俺は自転車を遊歩道入り口の脇にとめて、
かなり急勾配になっている遊歩道の階段へ一歩踏み出した。
登っても登っても人気がない。
登り切って鬼ヶ島大洞窟についても人気がない。
つーか、洞窟の料金所にも人がいない。
どーゆーこった。
でも、洞窟入り口の鉄柵は開いている。
中は、真っ暗で何も見えない。
ここまで来て、まさか「休業日」だとかいうことはないだろうな・・・・。
しかし、行くしかない。
しかし、この真っ暗な洞窟を行くのか?
無理だ。迷う。遭難する。
リュックからライトを取り出した。
洞窟内を照らしてみる。
ライトの心許ない光は、洞窟内では役に立たなそうである。
意外と広いみたいで、中の構造がサッパリ分からない。
ど、どうしよう。
俺は迷った。
だって、ここに「大人500円」って書いてあるんだから、
人がいて当たり前でしょう。
ん?
微かにテレビの音が聞こえるような・・・・・。
あれ、料金所の奥に誰かいそうだぞ。
奥を覗いてみる。
あ、おばちゃんがテレビつけっぱなしで寝てる。
「す、すいません・・・」
俺は扉をノックした。
おばちゃんがのっそりと起きあがる。
「ちょっと、待って。」
おばちゃん・・・・・・・・。
洞窟内に灯りが灯された。
おばちゃんの必要以上に丁寧なご案内を聞いた後、
俺は鬼ヶ島大洞窟に足を踏み入れた。
赤、緑、青、黄色のライトが程良く洞窟内を照らしていた。
「鬼の力水」なんて湧き水がある。
他にも、洞窟全体を支えている「大黒柱」(太)、
全長400mにも渡るこの洞窟のあちこちには人(鬼)の手で作られたとされる、
小部屋のような穴が沢山開いていた。
この大洞窟内にいるのは間違いなく俺一人。
「鬼」が住んでたなんて洞窟に俺一人。
怖い。
「だ、誰か助けてー!」
突然人の声が洞窟に響き渡る。
俺の声じゃないぞ。誰?
まぁ、良くあるアトラクションみたいなヤツで、
テープかなんかで繰り返し流してるんだろうな。
で、でも違ったらどうしよう。何て思ってビビる。
やはり声は奥にある、「監獄部屋」から流れていた。
さらに奥には、桃太郎の像やら、
「鬼大将の部屋」なんてデカい部屋があった。
また、途中にはアレを模したのだろう・・・・
「真実の口」というのがあって、
岩に鬼の顔の彫刻が成されていて、
嘘つきはその口に手を入れると抜けなくなるという。
聞いた事ある話ですね。
勿論、鬼ヶ島。
手を入れただけで何も起こらない訳がありません。
あぁ、手を入れると効果音。
わかっていても驚いてしまう、そんな自分がちょっと楽しい。
うかつに手持ちのライトなんかで潜入しなくて良かった。
この広さは確実に迷っていた。
例えば、俺がほんの小さな子供だったとして、
ちょっとした好奇心で真っ暗な洞窟に入り込んでしまい、
中で迷ってしまい、
その日は他にお客さんが来なくて、
何も気づいていないあの料金所のおばちゃんはそのまま帰ってしまい、
そしたら、子供はどうなるのでしょう?
下手したら死ぬと思うのですが。
それはおばちゃんの責任になる訳で、
あのような適当な管理はどうかと思った。
なんてちょっと鬼ヶ島に説教してみたり。
その後、
鬼ヶ島の最上部にある展望台へ行った。
鬼ヶ島全体どころか、
まさに360度、瀬戸内海の壮大な景色。
地球は丸いんだなぁ、と自分の人生の中で一番実感させられたこの景色。
高松の街も、瀬戸大橋も、
本州も、瀬戸内海に浮かぶ離島の数々も、
全てが一望できた。
瀬戸内海は本当に、本当に、
雲の流れが美しくて、感動しっぱなしだった。
雲同士がひしめき合って、
微妙で、不思議な形を成していた。
ギターを取り出した。
標高が高いせいもあって少し寒い。
誰もいない鬼ヶ島大洞窟の天辺、
鬼ヶ島展望台で俺は陽が傾くまで大熱唱をした。
時計を見ると、
もう16:40になっていた。
そういえば船がなくなるから16:30には下山始めろって・・・・。
まずい、早く下山だ。
帰りの最終便は17:20。
ちょっと危険かとも思ったが、
下山は自転車だから楽なんだよな。
余裕で下山を果たし、フェリー乗り場に着いたのは17:05。
少し会館で待った後、フェリーに乗り込んだ。
再び高松の街が近づいてくる。
もう一度、二人に会いたかった。
あの、居心地の良いかおるん宅の前を通り過ぎて、
俺は高松を去った。
次なる目的地は、琴平。
あの金比羅神社のある町だ。
通称「こんぴらさん」で知られている。
トシも香川に来たときは、こんぴらさんへ行ったようだ。
2日振りに延々、自転車をこぐ。
少しも体力の衰えは感じない。
高松から国道193号線を下り、国道32号線に出て
あとはひたすら真っ直ぐ突き進む。
途中ベスト電機でデジカメのリチウム電池を購入。
坂が厳しかったので、ローソンへも立ち寄り夕食を取った。
只今の時刻は20:00少し過ぎ。
目の前にラドン温泉という妙な温泉があった。
入りたかったのだが、何とか我慢した。
今日中に琴平に着いてやる、時間の無駄はできん。
そういえば最近妙にパンが食べたくなる。
夕食を菓子パンで済ませるなんて無理、と
旅を始める以前は豪語していたのだが・・・・・。
今日の夕食も菓子パン二つ。
クリームパン(4個入り)と、ミルクビスケットパン。
安いって要素がだいぶ絡んでる気がするが、たまにはパンも良いものだ。
まだ腹が満たされていないのか、
途中またミニストップでフカヒレまんを食べた。
今なら30円引き、というのに負けた。
まだ琴平までは20kmあった。
少し寒くもなってきたので、しばしミニストップで休憩を取った。
ミニストップはもう常連になってしまった。
ミニストップの店内有線では、
旅を始めた頃から変わらず、
RAG FAIRという人らのデビュー曲「ラブラブなカップル、フリフリでちゅー」、
広瀬香美の「月の下で会いましょう」、
キセルの「雪の降る頃に」が流れている。
RAG FAIRは結構好きになってしまった。
最初聞いた時は、オザケンのメロディーと似てるからビックリした。
オザケンのメロディーは大好きだ。
キセルの曲も素敵だ。
自転車に乗りながら口ずさんだりもしてたりする。
俺は今日までの日記を書き、
最近の考えを旅帳にまとめ、再び出発した。
0:00。
琴平駅周辺。
道路は石畳、なんとなくそれらしい建物が多い。
今日は一体どうしたらいいのだろう。
一通り見て回ったのだが、時間の潰せそうな場所がない。
「村さ来」はあったのだが、1時閉店とあって相手にされなかった。
コンビニもローソンが一件、
あとは個人経営っぽい飲み屋しかない。
やはり行くしかないようだ。
あの「らいおん亭」という飲み屋しか使えそうにない。
今日は熱燗で温まって、アーケード街に寝るとしよう。
「いらっしゃい」
頑固そうなおじさんと、おばさん二人が店を取り持っている。
奥には12人程の団体さん、他にはまばらに6人程。
俺 「ここ何時までやってますか?」
おばさん 「まぁ気にしないで座って座って、ソレ重いでしょう。」
俺はカウンターに座り、
とりあえず生中とホルモン焼きを頼んだ。
焼き肉、ラーメン、その他中華全般、何か色々ある。
「ギョウザなんかもあるからね」とおばさんに薦められた。
隣に座っていた中年の夫婦と会話を楽しんだ。
俺の話が店全体に広まり、一時騒然となった。
奥の団体さん達まで俺の方に話しかけてきた。
ちょっとこういうのを期待して、
お客さんに親しみを持たれてそうな
この「らいおん亭」へ来たのだがどうやら大正解のようだ。
おじさんA 「この辺で寝るんだったらな、琴平駅行きなさい!」
おじさんB 「そうそう、あすこだったら夜でも中入れるから。」
おじさんC 「扉は閉められるしな。」
うんうん、
良い情報を聞いた。
これで今日の寝床は決定だ。
でも、
これだけ人数がいて誰も
「うちさ泊まれ、若者!」とか
「寒かろうにうち来るかい?」とか言わない。
ま、別に期待しちゃいねーんだけども。
楽しい時間を過ごした後、
俺は言われた通り、琴平駅で眠りについた。
なかなか快適だ。
今までの野宿ん中じゃ一番いいな。
明日は早くから、こんぴらさんへ行こう。