食堂のおばちゃんが俺を起こした。
「あら、こんなところで!寒くない?中入って行きなさいよ!」
俺はちょっと悪い気がして、早々に起きあがった。
自販機の前でボーッと寝袋に足を突っ込んで、頭が目覚めるのを待つ。
カロリーメイトを取り出した。
もう車達は勢いよく国道を走っていた。
車の流れに乗って、自転車に乗った変なおじさんがこっちに向かってくる。
ママチャリだ、しかし旅っぽいぞ・・・。
おじさんは俺の前で自転車を降りた。
「どっから来たんだ?」
おじさんは超笑顔だ。
おじさんは寺巡りをしているらしい。
今日も寺に泊めさせてもらった後だという。
驚きなのが、このおじさん北海道の釧路から来たらしいのだ。
このママチャリで?!
時間こそ俺よりかかっているらしいが、その根性はすごい。
終点は高知だという、ここから岡山にでて南下して四国に渡るそうだ。
しかし、
「君こそ良くそんな小さい自転車で来れたなぁ、ギアもついてないだろう?」
と、おじさんは言った。
んん、確かにギア無しで良く山越えが出来たものだ、自分でも信じられない。
俺はおじさんと一緒にファミマで朝御飯を買い、旅の話をしながら食べていた。
おじさんは一足先に、先に続く山目がけて走り出した。
行く方向は同じだからまた会うかもしれない。
俺はゆっくりと朝食を取っていた。
俺もそろそろ発つとしよう。
おじさんから遅れること約30分、俺も山の方目がけて走り出した。
直ぐ側にあった千種川を越えていく。
走り始めて一時間くらいだろうか。
何処で追い抜かしたのか、さっきのおじさんが後ろから声をかけてきた。
「おーい!もう追い抜かされちゃったかぁー!やっぱ若いと違うねぇ・・・」
俺は坂道の為、自転車を押して歩いていたのでおじさんと並んで歩いた。
すると、おじさんは坂道にも関わらず自転車にまたがり、
「んじゃ、先行くぞ」
と言い残し、また先を走っていってしまった。
きっとまた俺が追い抜かすんだろうな・・・・(汗)
俺はゆっくり坂を歩いていた。
また暫く走ると、なかなか風情のある地蔵が2体、道の脇に立っていた。
俺は写真を撮ろうと思ったのだが、少し躊躇した。
こういうのって無闇に撮ってもいいものなのかな?と思った。
んー地蔵って神様みたいな、神仏の一種だよな。
例えばこういうところに立ってる地蔵ってのは多分、道行く人や車の安全を見守ってるんだろうな。
写真を撮るのって失礼かな?
むむ、普段ならこんな事は微塵も考えずに撮るのだがな・・・・。
ここは一礼して去ることにしよう。
ここまで安全に来れました。
あなたのおかげかどうかは知りませんが、これからも安全に行けるようお願いします。
ローソンが見える。
案の定、おじさんの自転車が止まっている。
おじさんは雑誌を立ち読みしていた。
俺は立ち寄らず、そのまま、ローソンを通り過ぎた。
一坂越えたところに、大きな貯水池があった。
大きいなぁ。遂見とれてしまい、写真を撮ろうと自転車を降り、池に近づいた。
おじさんにまた抜かされはしないだろうか?
今来た道を窺いながら池の写真を撮る。
一休憩してもおじさんは現れなかった。
多分もう会うことはないだろうな。頑張って下さい。
高知までの無事を願っています。
池からトンネルを通過し、下ったところにサンクスがあった。
俺は少し小腹が減ったので、チョコチップスナックを買った。
これを食べると高2の夏を思い出す。
体育祭の為、193の都市(団長)と共に、副団長の俺は夏休みを全て費やしダンスを作り、
団のみんなに指導をし、青春の夏を過ごした。
あの頃はこのチョコチップスナックにもお世話になった。
2日分の食事の一切を、このチョコチップスナック一つ(9本入り)でやり過ごした。
人は極度に疲れていると腹があまり減らないのか、
これで6食分、全然問題はなかった。
今考えると余りにも酷い食生活だ。
一夏で体重は4、5kgは減り、体脂肪も10%以下に落ちた。
だが、この旅では異様に腹が減る、一日5食は基本である。
しかし、体重も体脂肪もかなり落ちている。
運動量が半端じゃないのだろう。
懐かしい青春の味で俺は小腹を満たした。
全部は勿論食べてない、次の食事もこれになるだろう。
やはりコイツは金の節約にもなるし、腹も結構膨れる。
ヤマパンに感謝である。
備前市に入った。
まさに名産というか伝統工芸は「日本刀」。
「備前長船」は一流の日本刀として余りにも有名である。
道行く看板にも「備前長船」の文字がしょっちゅう見受けられる。
俺は、どうにも刀という物を振ってみたい。
前世っつーもんはあまり信じないが、きっと前世があったなら侍だったに違いない。
まぁ別に侍でなくとも騎士でも良いのだが。
何かを、「叩く」とか「蹴る」じゃなくて、「斬りたい」衝動に駆られることが良くある。
むかつく奴とかは、イメージの中で必ずブッタ斬っているのだ。
そんな備前市に少し興奮したりした。
岡山はもうすぐだ。
標識には「岡山 30km」と標されている。
これならあと二時間で着く。
山道といえど、俺の時速は最近平均15kmを保ち続けている。
市街地なら多分時速20kmは軽い。
始めの頃に比べ自転車の速度は上がった。
さぁ、夕方には雨が降る、ラストスパートだ。
岡山市街。
路面電車も走っている。
さすが「桃太郎の街」。通りの名前も「桃太郎通り」と粋だ。
結構ここも都会だ。
ウェンディーズを見たのは旅を始めて以来、初だ。
マックも吉野屋も完備。アーケード街もある。
なかなか良い街ではないか、俺はそう思いつつもやはりマックに入る(定番)
そういえば、こちらの地方ではある「ペアマック」というやつは東京ではやってないのだろうか?
ポテトSとナゲット3個で\190円というセットなのだが。
ナゲットのソースも「ハラペーニョチーズ」というのがある。
京都あたりからペアマックを見かけるようになった。
腹も減っていたので、普通のセットを頼んだ。
チョコチップスナックは夜のおやつにとっておこう。
まだ昼14:30。
今日もコンセントをゲットすることはできなかった。
俺の大好きな端の席に座る。
と、腹が満たされると相変わらず眠くなる・・・・。
俺は一眠りすると、女子高生の団体に囲まれていた。
部活のミーティングが開かれている。
でもまだ眠い・・・・。
ちょっとうるさいが、また眠りについてしまう・・・・。
気が付くと、外はもう雨が降り出していた。
時刻は21時。
ちょっと寝過ぎか?
女子高生の団体も既に消えている。
寝ぼけ眼で、この際閉店までいるか、と思ったのだが、
隣にかなり気合いの入ったのギャルが3人やってきた。
うるさいし、香水の匂いがかなり臭い。
これは居座れたもんじゃない、俺は怒り混じりに立ち上がる。
あ、そういえば京都で買ったビニール傘、自転車に掛けっぱなしだったな。
この雨じゃパクられてるのが普通だよな・・・。
パクられてなかったら、この街相当いいとこだよ。
自転車に戻るとやはり傘は無かった。
俺にとって傘がどれだけ大切なものか分かってんのか!
分かり切っていたことだが、無性に腹が立った。
雨に打たれながら俺は市街地を走り出した。
とりあえず雨宿りできそうな場所を探す。
一旦コンビニに入る。
これだけ探しても見つからないとは・・・普通ファミレスの一つくらいあるだろ。
思い切ってコンビニのおじさんに聞いてみる。
「この辺、24時間やってるファミレスとか喫茶店みたいのありますかね?」
おじさんは申し訳なさそうに答えた。
「この辺りは全然ないんだよねー。そうだな・・・・今工事中だったかな・・・あ、大丈夫か。
この辺だと一件だけ、珈琲館っていう喫茶店があってそこが朝5時までなんだよね。
場所はね・・・・。」
と、おじさんは丁寧に俺に道を教えてくれた。
俺はその珈琲館へ行くことにした。
おじさんの言うとおりに来たのだが、珈琲館がどうしても見つからない。
困った。俺は諦めてしまった。
仕方ない、今日は銭湯行って、酒でも飲んで寝るとしよう。
アーケード街があったから、寝る場所は大丈夫だな。
近くのイレブンでビールとおつまみを買うと、俺は銭湯を探し始めた。
アーケード街から少し離れたところに銭湯を見つけた。
極々普通の銭湯で、風呂場の電球が半分消えてるあたりの廃れっぷりが少し気に入った。
風呂をあがって、荷物が邪魔だ、と常連らしい親父に注意された。
すぐにどけたのに、その後も延々とグチっていた。
「なぁ兄ちゃん、そこ置いたら俺が着替えられんやろ?
わかるなぁ?おい、そこに置いたって同じや、トイレに入れへんやろ。
わかるなぁ?はよどけや。」
と、何かその後も、ずっと舌打ちをされたが、あまりバカらしい親父なので無視してテレビを見ていた。
銭湯を出ると、アーケード街へ向かい、ダイエーの従業員専用入り口の前に場所を落ち着けた。
ビールを飲みながら、ギターを取り出し、今までに出来た27曲をまとめ始める。
まばらに人が通る。
よく見ると、目の前にインターネットカフェがあった。
近寄って見てみる。
ワンドリンク頼めば、時間無制限ネットし放題?!
ワンドリンクは300円程度だ。
こりゃ明日行くしかないな!
なんか美味そうなランチもあるな。ドリンクとセットで760円。
明日の昼はこれで決定だな。
酒が回ってきた俺は、良い気分のまま、 直ぐに眠りについてしまった。