10日目(1/18) 海老江〜神戸〜明石(兵庫)

国道2号を走る。
コンビニで地図を見て現在地を確認する。
神戸まではこのまま行けば着くな。
あ、途中にあの場所がある。
夏には熱い歓声と青春の汗が迸る、あの聖地が。
俺はココへ寄ろう、と思った。
青春を醸し出す場所に俺が行かない訳にはいかないだろ。
もう結構近くまで来てるな。
ふふ、楽しみだ。
何なら「土」を持って帰りたい気分だ。

程なくして、標識に現れる聖地の名前。
あと3km、歓声が聞こえてくるようだ。
このクソ寒い中だが、俺の心は早くも、有り余るの熱さに沸騰寸前だ。
国道2号を離れ、海沿いの街道へ続く道へ逸れる。
さぁ、どうやら見えてきたようだぞ・・・・。
おお、何と神々しい建造物。
夏の人々の立ち並ぶ姿が、その影がまだ残っているかのように、熱いオーラを感じる。
そう聖地とはまさしく、

高校球児の聖地、甲子園。

熱いぜ、あっつすぎるぜ甲子園。
(野球に全く興味は無いが)

君らの青春は俺の心に響き渡ってるぞ!(しつこいが野球に全く興味は無い)

甲子園球場を周回してみた。
そして、コンビニの袋から取り出す。
聖地を汚すべくビールを飲み干す俺。
間違った青春を甲子園に持ち込んでみた俺。
意味もなく甲子園球場と写真を撮る俺。

いやあ、甲子園、最高。

良し、ほろ酔いで俺、出発。
青春パワーで復活。
自転車をこぐ足にも自然と力が入る。
高速の高架下のこの道をひた走る。
とても走りやすい。
平坦に続く道は神戸まで俺をすんなり運んでくれた。


夜も明けぬ早朝午前4時、俺は神戸市街へと到着した。
海沿いに広がるハーバーランドの街並み。
暫く神戸駅の周りを探索してみる。
今、開いているのはコンビニ数軒と、ロイヤルホストに関西独特のファミレス「フレンドリー」のみ。
ロイホは高いし、ドリンクバーもないし・・・・
フレンドリーに行ってみるしかないな。
ドリンクバーがあることを祈る。
いいね。
あるよドリンクバー。
これでゆっくり寝れるよ。
未開の地、フレンドリーへ入店する。

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「いや見ての通り1名です。」
「あ、お好きなところでどうぞ。」

店内を見渡す。
不意に旅人らしいおっちゃんを発見する。
おっちゃんも俺の方をいぶかしげに見ている。
おっちゃんの近くの窓際の席に俺はどっかり荷物を置いた。
おっちゃんの方を見て俺は微笑みかける。
「旅、してらっしゃるんですか?」
おっちゃんは俺と同じくして折り畳み自転車を持っていた。
「旅っちゅうのと違うかもしれんが、まぁそんなもんかな。」
「どちらまで行かれるんですか?」
俺は聞いた。
「こっから北の方やな。家があるんや。」
どうやら帰るところらしい。
俺達は話を始めた。

おっちゃんは「高橋さん」。
まだ独身の42歳。自転車で各地を回ってる様子だ。
何やら数珠やらお守りやら色々身に纏っている。
とても陽気なんだが、どこか寂しさがにじみ出てるところを隠し切れてない。
おじさんの方から積極的に話を進めていた。

「君は何処まで行くんだ?」
「そうですね、一応広島を終点に考えてるんですけど、時間があれば九州の方まで。」
多分九州は無理だろうが、勢い余って俺は言った。
「九州まで行くんだったら、沖縄まで行った方がええって。
 知り合いおるからその人んとこいくといい。紹介しといたる!
・・・・。沖縄とは随分ぶっ飛んだものだ。
困ったな。流石に沖縄までは今回全く考えてない。
「んー、ちょっと沖縄は考えてなかったですね。
 飛行機になっちゃうし、そんなお金持ってないんですよ。」

高橋さんの勢いは止まるところを知らない。
「なんや、沖縄なんか鹿児島やら長崎行ったらフェリーでとるぞ。」
しまった、その手があったか。
もう後には引けなくなってきた。
「そういえばその手もありますね。じゃあ沖縄行くこともあるかも知れないですし・・・・お願いします。」
俺はとりあえず、高橋さんの沖縄の知り合いの住所と電話番号を頂いた。
あと高橋さんは、紙に「○○(俺の名前)さんです。訪ねて来たらお願いします。山本昌弘」と書いて俺に渡した。
どうやらかなり世話好きな人みたいだ。
更に、高橋さんは結構こうやって知り合いを増やしてるらしく、
手帳を取り出し、「名前と住所、電話番号書いたってや。」と言った。
俺は手帳を受け取り、懐かしい我が家の住所と電話番号を書いた。
手帳には、旅先で知り合った人たちの住所などが沢山書いてあった。

「ギターは旅に必要あるんか?」
「ええ、旅先で曲、閃きますし、手元にないと落ち着かないんですよ。」
俺は全く思った通りの事を言った。
高橋さんは旅にそういった余計なものがあるのを嫌うようだ。
また、
「ずっとでかい国道走ってきたんやろ?
 それじゃあかんのや。土地の事知るんやったらな、迷っても狭い路地通っていかなきゃいけん。」とも言った。
更に、
「そうやって先へ先へどんどん進もうとしないで、一つのところに留まってみな。
 わかるやろ?何もわからんのや、神戸ではゆっくりしていかな。じゃないとあかん。」とも言った。

高橋さんには非常に悪いのだが、俺は人の考えを押しつけられるのが大嫌いだ。
納得もしたが今はやりたいままにやる。
後半話したことは、ホントに「余計なお世話」な事ばかり話してくれた。
ちょっと反論したらやっぱり高橋さんは俺の言うことを聞き流した。
ああ、この人は、無理だなと思った。
話し合えない人とは仲良くなれん。うちの親父と同じだ。
と悟り、一段落したところで俺は軽く眠りについた。


起きると9時に。

高橋さんはまだ隣に座っていた。
「ほら、もう陽も登ったし、店の人が掃除はじめとる。邪魔になるからはよ出るぞ。」
俺はまだゆっくりしてようと思ったのだが、高橋さんに外へ連れ出されてしまった。
外で俺達は自転車にまたがり、それぞれ逆方向へ進み出した。
良い人なのは分かるが、ちょっとおせっかい焼きで困った。
眠い。まだ眠い。

俺は神戸ハーバーランドのドミノピザへ向かった。
アストリアというビルの地下食堂街にドミノはあった。
ここのドミノはイートイン形式で、マックなんかと同じくしてファーストフード感覚でピザが食える。
全国にこの形態のドミノは3店舗しかなく珍しい、というだけで来てみた。
実際来てみるとなかなか良いではないか。
とにかく安い。
通常の宅配ドミノだと、Sサイズ1枚最低\650はかかる。
しかしサイズはSサイズオンリー。
種類もまだ5種類だけ。

俺はカウンターへ乗り出し注文を言う。
社員帽の女の人が出てきた。
「あの、実は俺、東京の吉祥寺店からやってきたんですけど、社割ききますか?」
「えっ!ど、どうもお疲れ様です。クルーの方ですか?」
「ええ、まだレベル1ですけど。」
ホントは社割はいけないような感じだった。
でも社割をきかせてくれた、35%引きである。流石ドミノ、話が分かる。
一応俺の持ってるドミノのキーホルダーとストラップを見せたら信用してくれた。
俺はサラダコンボで、ピザはマヨじゃがに。ドリンクはアイスカフェラテ。

暫くするとピザが焼き上がり、女の人が俺の席まで運んできた。
「ごゆっくりどうぞ。」
いやいや、再び懐かしいドミノの味。
朝食から良い気分だ、しかしこのサラダの容器とかフォークを入れてある容器とか持って帰りたくなる。
帰って自店のみんなにお土産で持って帰りたい。
俺は持って帰れるものはリュックにしまい(俺じゃなきゃ只のゴミ)
ひとまずドミノを眺めながらゆっくりと食後の休憩を楽しんだ。

旅に来てまで買い物なんざする気はなかったんだが、
気分が買い物になってきてしまった。
7Fの「キロストア」(パーグラムマーケットみたいな店)という古着屋を眺めていたらどうしても。
俺は買い物かごを手に、グラム数を一生懸命気にしながら広い店内を見て回った。
重い荷物を担ぎながら、服を物色するのはかなり辛い。
俺はラガーシャツカラージーンズをかごにブチ込んだ時点で危険を感じた。
これで4450円か、割と安い。
と、ついつい買ってしまった訳で。
まぁ金はまだ大丈夫、初めての旅でこれだけ節約してきたんだからこれくらいいいじゃないか。
と、やり過ごした。

ここで一通り目的を果たし、俺はハーバーランド・神戸周辺をブラついていた。
気にかかったのは服の汚れ具合、そういえば静岡から洗っていない・・・・・。
俺はコインランドリーを探し始めた。
ない、ない、ない。
んー住宅街の方にないっつーのはどういうことじゃい!
俺は半ば諦めかけて繁華街を歩いていた。
見渡せど見渡せど、あるのはパブやらタバコ屋やらピンサロやらばっか。
こんな昼間っからキャッチのおっさん達が活動してるとは変な街だ。
おっさんにも声をかけられつつ、とぼとぼと疲れをひきづって歩く。

突然現れたコインランドリー。
繁華街・・・・いやむしろ・・・・○○銀座みたいな場所の中心部に。
仕方あるまい、ここしかねーだろ。と、俺はコインランドリーの中に入った。
リュックから、出町柳店で少しだけ頂いた洗剤を取り出す。
こんなものまで少し拝借させてもらっていたのだ。(笑)
200円を洗濯機に投入し、洗濯槽洗浄ボタンを押し、洗剤を入れ、服を脱ぎ、放り込む。
さっき買ったラガーシャツを来て、ランドリーの隅っこに座りギターを取り出す。
こんな○○銀座なランドリーでギターを弾く俺。
これが昼間じゃなかったら結構危険な目にも遭う気がするのだが、まだ昼の3時。

洗濯が終わり、乾燥機に服をブチ込む。
小銭がなかったので近くの自販機でコーヒーを買って細かくした。
そして乾燥機に金を投入しようとした時に、壁の落書きに俺は気づいた。
クリック。

写真の様な落書きが良く見れば、至る所にあるではないか。
なんてことだ。このランドリーは・・・・・
ゲイのたまり場だったのである。
やばいぞ俺。
日没が限界だ。奴らがやってくるに違いない。
その場に居合わせてしまったら・・・・・
まさに、
ライオンがシカを食べるように、
ハムスターがひまわりの種を食べるように、
ドラえもんがドラ焼きを食べるように、
おばちゃんが鼻クソを食べるように、
俺もゲイに喰われてしまう。

一刻も早くここを脱出しなくては。
早くしやがれ乾燥機。俺の「男」がかかっている。
俺はギターをさっさとしまい、乾燥機が止まるのを待ちかまえていた。
それらしい人が通る度、ちょっと焦ったりしながら20分が経つのを待った。


コインランドリーから逃げ切る事、約30分。
俺は銀行で金を下ろして、神戸市内でネットのできるカフェやらマンガ喫茶を探していた。
しかしどうにも見つからない。
タウンページによれば、どうやら神戸市内にそのようなものはないようだ。
いたしかたあるまい。
まだ神戸にはいたかったのだが、
ゲイの集まる街だと分かった以上、ここに長居するのも危険だ。(爆
野宿なんてもってのほかだしな。
勝手かどうかは知らんが、俺の独断でここ神戸は港町でもかつての震災地でもなく、
「ゲイの街」となった。

そして神戸の街を離れる事、数10分。
すき屋で大辛牛丼を食った俺は、更に進み、そうネットカフェを探しながら進み、
見つからず、あまり動く気などなかったのだが淡路大橋まで来てしまった。
この淡路大橋は世界でも有数の技術を駆使した吊り橋だそうで、中心の柱までの距離が世界最長の1.9kmくらいだったかな?
そんな凄い橋なのだ。
俺はこの橋もきっと一度、阪神大震災で崩れてしまったんだろうな、と思ったのだが、
高橋さんに依れば、その当時はまだ柱の位置を決めていたくらいの段階で、橋は形すらなかったそうな。
そんな最近できた橋だったとは。こんなにデカいのに。
人の技術とはホントに関心させられる。
どうやって作ってんのか?もうサッパリ訳がわからない。
ここまで来ると、こんなコンクリートの橋でもきっといつかは
「芸術」として取り扱われて、「○○式」だか「○○建築」みたいにギリシャの建築様式と並べられるような気がする。
無機質だけど、確かに美しいしなぁ。


そしてまたしてもマック(淡路大橋店)で充電をし、睡眠を取っていた。
そういや、明日は受験生達大奮闘間違いなしのセンター試験ではないか。
俺は久々に電話をかけた。

193の浪人生、高野に電話で「頑張れよ」と只、それだけだったが、実に懐かしい友の声に俺まで元気づけられた。
河合塾のみんな(注7)も、浪人した同級生も、母校の後輩達も明日に備え頑張って来たことだろう。
俺は遠く、きっと明日だから、岡山で、みんなの健闘を祈ってます。
早くみんな、受験終わらせて俺と飲みましょう。
早く一緒に飲みたいです。一緒に飲んでください。
つーかホントにお願いします。
しつこいけど、そのおかげで結構辛い一年でした、今年も。(飲みたかった)


そしてマックを発ち、俺はまた自転車をこぎ出す。

明石市に着いた。
駅前にネットカフェがあるはずなのだが・・・・閉まっている。
そりゃそうだな、だってもう23時
明日までここにいるのもダルいし、寒いし。
なんかある事を願って再び走りますかね。

と、やはり先へ進んでしまった。



(ターミネーターのテーマが頭の中で流れる)

ま、ま、まさか、あれは!!!

あのガソリンスタンドにも間違えそうなオレンジ色の看板・・・・!

し、しかしスタンドじゃない!

ガ、ガストだー!!!!!(直行)
ワーイワーイ。



(注7)河合塾の友達
当時俺は通ってる訳でもないのに友達がいるから河合塾に良く遊びに行っていた。