蝋人形展



僕は大学生だった。
卒業出来る見込みは全くゼロで、
何年も大学に居るのに未だに1年生の単位が何一つ取れていないのだ。
特に全くダメのが英語だった。

それでも僕は自分の不出来さ加減を笑いのネタにして陽気に振る舞っていた。
成績が悪いのに陽気な僕を観た、他の落ちこぼれたちは勇気を得て進学して行った。

女の子からは表面的には人気者だったけど、
みんな僕の事をホンキで好いてくれてる訳ではない事は僕自身も知っていた。

今日も僕は大学の食堂で、未だに1年生の基礎英語の単位が取れていない事をネタにして
みんなを笑わせていた。

そんな大学が博物館、美術館巡りを行った。
遠足ってやつですか。

僕はおおいにはしゃいで、美術館を走り回って、注意されたりしていた。

とある一角に蝋人形が展示してあるブースがあった。

人間が死ぬ、或は殺される直前の「断末魔の叫び」をリアルにかたどった蝋人形たちだった。
みなこちらをカッと睨みつけ、無念極まりない表情をこちらに向けている。

自殺を図り(睡眠薬?)、死ぬ直前に生命の生きようとする本性との壮絶な闘いが起こり、
「死にたい!生きたい!」の究極のコントラストをなす苦しみに悶えながら、片手をこちらに差し出している蝋人形。

下半身がもぎ取られ、なお生き続けようとして、悶絶の表情でこちらを見つめる人形。
すぐ横には貴族の服を着た若い男が斧を振りかざしている。
まさに最後のとどめをさされる直前の蝋人形。

僕はこの、切迫する蝋人形たちをみて
大笑いするのだった。
なぜか可笑しくて可笑しくてたまらないのだ。

今まで、人を笑わせてきたけれど、
自分が本当に心から笑えたのは、
これらの
死を直前とした人間の表情を表した蝋人形たちだったのだ。


投稿日時: 土 - 8月 14, 2004 at 12:25 午後          


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