Jul 2005
The Alchemist
★★★★★
1992
Paulo Coelho
初の洋書のレビュー。この一年間腐るほど洋書を読んだので、やっとこの程度の小説はすらすら読めるようになった。でもまだちゃんとつかめていない表現が時々出てくるし、日本語に比べればまだ大分読解のスピードも遅いかもな。この小説は簡単にいうと、羊飼いの少年が今までの生活を捨てて夢に見た宝物を探しにいく話だが、文章の美しさと展開の面白さ、機智に富んだ言葉の数々がどれも一品である。この本ほど洋書の小説がすらすら読めたのは初めてだったので、こんなにも物語にのめり込めることに驚いた。それはこの小説で使われていた表現が比較的難易度の低い言葉で書かれていたということもあるだろう。しかし、自分はまだ日本語と英語では理解力に明らかに差があると思うので、どういう焦点で自分は小説を読んでいるのかという疑問が湧いてきた。はたして小説を読むということはどういうことなのだろう?自分は小説の何を読んでいるのだろうか?まあなんにしろ、文学において言語の壁を超える事はそうもむずかしいことではないのかもしれない。
|
フィオナの海(Child of the Western Isles)
★★★☆☆
1996 ロザリー・K・フライ
映画にもなった、スコットランドのセルキー伝説をもとにしたゆりかごとともに海に消えた弟を捜す少女の小説。セルキーとはケルトの民間伝承にでてくるアザラシ族の妖精。
訳本は1996年に出たのがだ原書は30年以上も前に書かれたらしい。広い海とのどかさと寂しさが同居しているような田舎の町が目に浮かぶ。途中までもっと空想的で冒険的な話かなと思っていたためちょっと後半の展開に意表を食らった感じになったのだが、映画化されたことでもあるし、それならこういうストーリーだなと納得した。多分、少し前にオオカミ族の少年を読んでたからその印象が強かったのだろう。
フィオナは公害のひどい街での生活がなじめず、故郷の群島に養成に行くのだが、同時に街で共に暮らしていた働き詰めの父や兄弟にうとまれていたこともあり、フィオナは心までも病んでいたのだろう。自然にあふれた田舎の地方には神秘的なことであふれていて、フィオナはそこから生きる力を吸い取って元気になっているように感じられる。街というものはそれ自体が病なのかもしれない。
|
水曜の朝、午前三時
★★★★★
2001
蓮見圭一
…結局のところ、人は誰でも小さな世界に生きているのです。そこがよき世界であれば幸いですが、そうでなければどうすればいいのでしょう?そして、もしそこが個人の努力や決断では抜け出すことのできない場所であったとしたら?実を言うとこれから私はそのことについて書こうとしているのです。(本文引用)
この本を読んでいてまず思ったのが作者は本当に男なのかということ。小さな描写や表現の仕方がとても上手です。主人公の直美の生きてきた中で感じたこと、体験した事が鮮明に浮かび上がってくる気がします。ただ、告白テープの最後にくるまで、直美が彼女の人生を語る中でどのような結論に向かっているのかがわからず、作者の文才のためか、文中のいろいろな印象的な表現に気を取られているうちに物語をちょっと見失ってしまっていたかなと感じます。まあ、人生を通して人が変わらないでいるわけはありませんし、思い出話しなんてあちこち話が飛んでいってしまうものではありますが。
人は皆ちっぽけな世界に生きている。確かにその通りだと思う。直美が市の直前に吹き込んだテープには痛いほど感情がつめられている。だからこそこんなにも心にこたえるのだろう。
|
オオカミ族の少年
★★★★★
2005
ミシェル・ペイーヴァー、酒井駒子-画
ジャケ買いしました。表紙の酒井駒子絵いいですね。中にポストカードまで入ってました。リドリー・スコットが映画化するらしく、ほんとに衝動買いしましたがよかったです。数千年前の森を舞台にした作品で、作者は考古学を学んだらしく、世界観や登場する人々の生活にリアリティがあり、テンポ早く進む物語にすっと飲み込まれてしまいました。どちらかと言えば児童書に入る本である事もあるのか、描写は少し物足りなさを感じるほど簡潔ではあるが、主人公のオオカミ族の少年トラクから見た世界が想像力豊かに描かれている。壮大な世界観と、テンポの早さが、リドリースコットの作風とよく似ている。
この作品の魅力はどこにあるだろうか?考古学的に正確で、迫力のある描写は言うまでもないが、トラクとウルフの純粋でミステリアスな関係がとても魅力があるように感じる。現在ファンタジーは魔導師が魔法を操る物語が主流であるが、原始的で野性的なこれまでとは違った趣をもつこのファンタジーが、新たなブームの火付け役となっていくのだろうか。
|
肩ごしの恋人
★★★★
2001 唯川恵
なかなか面白い本だったと思う。主人公である二人の女性、萌とるり子を中心に話が進められていくが、二人の心情の変化がよくわかるストーリーだった。恋愛小説というよりは恋愛観小説といえるほど、萌とるり子が恋愛に対しどう向き合っていくかを中心に描かれていた。
この本を読んでまず思ったのが女性の描き方が生き生きとしていて、リアリティがあるという事。そして、作者の主張が強いというか、この本を通して作者が「私はこう思うのだが皆はどう思うのだろうか」という問いを投げかけているようにも感じ、読者が作者の考えを理解して、自分の考えはこうだという事を考えさせるように作られているのではないかと感じた。この本の面白いところはどこかといわれると、ストーリー自体に特別な面白みはないし、文学的な面白さもそれほど感じられなかったのだが、むしろ作者は恋愛に対するスタンスを大人っぽく、魅力的に描くことによって読者の共感を誘うことを念頭に置いていたのではないかと思った。実は自分がこの主題で一つストーリーを作ろうと思っていた事がこの本でベストといっていい形で描かれてしまっていたので、ネタが一つへって少し悔しかった。
|