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レオロオジーの本を読まない to contents


 レオロジー入門、やさしいレオロジー、レオロジー講座...と世の中にはたくさんの教科書が出回っています。私自身、加担して書いた物もありますし、わかりやすい、皆さんが利用でできるレオロジーをといくつかの講座も行っていますが、とにかくわかりにくいのがレオロジーです。

 なぜ、このようにわかりにくいのかと考えますと方法がたくさんあるために混乱してしますのが一番です。次に呼び名が決まっていないことも問題です。

 たとえば、G’はジープライムと呼びます、決してジーダッシュとは呼びませんし、日本語では貯蔵剛性率、貯蔵弾性率、ストレージモジュラス、とか弾性成分、位相がひずみと同位相の成分とか色々な呼び方をします。

 また、似たようなE’(イープライム)があり、バネとダッシュポットを組み合わせたマクセルモデルとフォークトモデルが描いてあるためにたいていここらで挫折します。 ここを通りぬけると親切な?本ではテンソルが待ち受けていますので90%の人はここらで挫折します。

 このあたりの説明を読み飛ばしても今必要な測定とほとんど同じような系でないかぎり、たいていはどこが参考になるのかわからなくなってしまうのが普通です。

 従って、レオロジーの専門書を読むと嫌いになりますので、はじめは読まないほうがいいでしょう。


レオロジー測定の種類 to contents


 まずは静的と動的の区別があります。動的=Dynamicは一般には時間的に変化する状態をさす場合が多いのですが、レオロジーでは動的=Oscillationすなわし正弦振動を加える場合をさす場合がほとんどです。静的はその反対に一定方向の運動による測定をしめします。

 従って、液体の測定で定常流測定、チクソトロピック測定(等速昇降法)などは静的測定、正弦振動による測定を単に動的粘弾性測定と呼びます。

固体では引っ張り、クリープ測定、応力緩和などが静的測定でクリープ、応力緩和は静的粘弾性測定と呼びます、正弦振動による測定は液体同様に動的粘弾性測定と呼びます。

 次に、測定治具、測定方法による分類があります。液体では二重円筒(ボブシリンダー、コレット)、円錐円盤(コーンプレート)、平行円盤(プレートプレート)など測定治具で分類されます。固体では引っ張り、曲げ(1点支持、2点支持)、ねじりと測定方法によって分類される。

 次にレオロジーはひずみと力の関係を調べるために、ひずみ制御(Strain Contorol)、すなわち変形させえて力を測定する方法と、応力制御(Stress Control)、すなわち力をかけてどのくらい変形するかを測定する方法があります。


どんな装置があるのか? to contents


 さて、かなり混乱してきたでしょう?

 これが曲者で、装置メーカーの営業マンの口車に乗って買ってしまうと大変な思いをすることになってしまいます。

 そこで、比較的簡単に実在する装置を基準に整理してゆきます。

 まず固体の測定装置は一般に動的粘弾性測定装置と呼びますが、レオバイブロンという国内メーカーの装置が世界的に有名になったおかげで、どこどこのバイブロンと呼ぶ場合がよくあります。

 本物のバイブロンは引っ張り振動の装置ですが、現在では多くのメーカー(たとえばセイコー電子さんも)では曲げも含めて様々な装置を販売している。測定結果に装置メーカー間に大きな差はなく、使い勝手の良い装置を選べば良いように思います。

 次に液体の測定ですが、液体の動的粘弾性測定装置はレオメーターと呼ばれる。レオメーターと呼ばれる装置は一般にはひずみ制御(Strain Controol)で定常流、チクソトロピック測定、動的測定が可能であり、測定治具も二重円筒、円錐円盤、平行円盤は標準装備であるのが一般的であり、いわば液体なら何でも測定できる装置が多く、測定範囲が最も重要である。

もうひとつ、最近ヨーロッパあたりから流行しはじめたのが、応力制御(Stress Control)レオメーターである。応力制御では通常のレオメーターに加えてクリープや応力緩和測定が可能であるが、測定条件の設定が難しく素人には扱いにくい。しかし、低粘性の試料には大変適した測定方法である。

 以上、溶液ではレオメーター、固体ではバイブロン型の動的粘弾性測定装置を持っていれば一人前のレオロオジストとして仕事をすることができます。


装置はいい機械、フル装備で手に入れようto contents


 さて、装置は価ってしまったが何を測定したら何がわかるか?これが問題です。

レオロジーの入門講座をすると必ずある質問でバブル時代は特にあちこちの企業で申請したら買ってもらったのでどうしたらいいか五里霧中の人が沢山いらっしゃいますのでご安心ください。

しかし、このような場合は測定すれば答えは出ますので少しだけヒントをもらうと随分と伸びる人が多いように思います。従って、買ってもらう時はなるべくいい装置でいろんな測定ができる装置をお買いになる事をおすすめします。

 昨今のように景気が悪くなるともっと話がややこしくなります。やってる本人もよく理解できないレオロジーの効用を何もしらない人に説明する必要がありますし、けっこう高い装置ですから大きな効用を上げざるえずに自分の首を絞めることになっている人も多いようです。

この場合でも、いい装置でいろんな事ができれば大学との共同研究などの手段で活用できますが中途半端な装置ですと結局粗大ゴミになってしまいます。


何を測定するか? to contents


 そこで、何が測定できるかが問題です。最初に間違えないでいただきたいのはレオロジー測定はあくまで人間が感じとれる優位差のある場合にのみ有効であるということです。

電子顕微鏡や様々な分析機器のように人間の目では見えないもの感じることができない物を測定するのではないということです。

 従って、対象とする試料は絶対値的な評価ではなく必ず比較試料を一緒に測定するべきでその差がどのように感じられているかを測定すればよいわけです。

 たとえば、塗料のたれを考える場合にはゆっくりとじわじわと流動してしまう現象ですのでゆっくりした流動の抵抗を測定する、すなわち低剪断速度での定常流測定ということになります。

 プリンや寒天ゲルのようなゲル化過程は指でつついてみてぷりんぷりんとした感じでゲル化を判定しているわけですから、動的粘弾性測定をすればよいことになります。

 このように経験的に判断している方法を定量化する手段と考えるだけで多くの成果は得られる物だと思います。

それでも何を測定したらいいかわからない時は対象試料とレオロジーをキーワードとして文献検索をしてみてください。きっと何を測定すればよいかはわかるはずです。

 さて、それだけでは不親切ですのでここではいくらかの方向性をしめしますがそれがすべてではありませんので参考としてご利用ください。

・高分子成型加工:

定常流測定(応力制御)が有効である。すなわち、流動曲線/剪断速度−剪断応力/を測定する。

・高分子の構造:

動的粘弾性測定による温度分散が有効である。すなわち、弾性成分、粘性成分および位相差角のタンジェント/tanδの温度依存性の測定をする。

・分子の運動性:

応力緩和測定によりからみあいを定量化することが有用である。

・分散系の分散状態:

定常流測定による流動曲線測定および動的粘弾性の周波数分散が有用である。

・ゲル化過程/状態変化過程:

動的粘弾性変化の時間依存性(温度により状態が変化する場合は温度依存性)が有効である。

・テクスチャー:

一般にはクリープ、応力緩和などの静的粘弾性測定が行なわれており、大変形での力学特性の測定例が多いが、使用方法に応じて定常流測定や動的粘弾性測定を測定して解析することをおすすめします。

何がわかるのか? to contents


 液体の測定結果の評価は静的測定では剪断速度γ(/sec)と剪断応力σ(Pa)を動的測定では角速度ω(rad/sec)と 複素剛性率G*(Pa)または分解した貯蔵剛性率G’(Pa)、損失剛性率G”(Pa)をグラフにし剪断速度と角速度は コックス-メルツの経験則により等価とみなせるので一枚の両対数グラフにして流動のカルテを作成するとよい。

 縦軸は粘度でまとめる人が多く、実用上は分かりやすいとも言われるが分散状態や中での高分子の絡み合いの程度を考察する上では応力とするほうが望ましい。

剪断応力σが右上がりの直線であればニュートニアン(ニュートン流動)である。

両対数グラフでビンガム流動は表現できないが現実には起こりにくり流動なので両対数グラフでの検討が最も考えやすい。

 貯蔵弾性率G’は弾性成分で高分子中でのコイルの振動や凝集体構造などの構造が生じることによって発生する。

損失剛性率G”は粘性成分であり一般的には静的の剪断応力と等価なものである。

従って、損失剛性率G”を角速度ωで割った値を動的粘性率η’と呼び、静的での粘度ηと等価として考える事ができる。

 分散系などで見られる低剪断領域のG’平坦部は第2平坦部とよばれ分散体の相互作用力により弾性が生じるために起こる と考えられ、重要なポイントとなる。高剪断部はあまり大きな特長はなく、分子量の影響がでやすい。

   固体では横軸に温度を縦軸に貯蔵弾性率E’(Pa)、損失弾性率E”(Pa)、損失正接 tanδ(-)を片対数グラフにプロットする。

溶融粘弾性をレオメーターを利用して測定した場合は貯蔵剛性率G’および損失剛性率G”を3倍してE’、E”上にプロット することにより室温固体の状態から溶融状態までの高分子のカルテを作成することができる。

 このグラフからはE’から各温度でのヤング率、また変化から軟化温度や架橋密度、流動開始温度が、E”または tanδのピーク 温度からガラス転移温度、および側鎖の絡み合い状態、その形から相溶性、配向結晶化の程度、などを読み取ることができる。

 硬化過程では動的粘弾性を一定周波数で測定して変化を測定し、横軸を熱硬化では温度、時間による硬化では時間とし縦軸に 貯蔵剛性率G’と損失剛性率G”の変化を片対数上にプロットする。

 貯蔵剛性率G’の変化から硬化開始、硬化終了、形から硬化の速度がG’とG”の交点からゲル化温度を読み取ることができる。

 たいていのレオロジーの専門書では緩和スペクトルやクリープコンプライアンスなどに変換して解説しているが、 はじめからこの領域に足を踏み入れる必要もなく、かなりベテランの研究者でもG’、G”、E’、E”の挙動だけで充分である。

 スペクトルへの変換は高分子理論の研究者にとっては重要であるが、実工業界での現象把握や材料開発においては ここに上げたような整理で充分である。

 また、最近の装置はコンピューターソフトが充実しており色々な測定結果が出力されるしどんな形のグラフも描く ことができるが、むやみやたらと自己流の整理をしないことが最も重要である。


まとめ to contents


 いろいろ書いてきたが、レオロジーはむずかしいということは私自身日々切実に感じることである。 しかし、整理のしかたが決まれば測定経験のみが実力をつけるための手段となる。 従って、我々の研究室では理屈はあまり教えずにとにかく温度だけは気をつけるように指導した後は ひたすら測定をしてもらうことにしている。

 1つの結果を色々な方向から整理することばかり考える(最近はパソコンの発達とともにこの手のこと が好きな人が多いが)より、からだで測定を覚えることが最も重要であり一番の早道である。 そのためにもいい装置は最もよりパートナーである。

 私たち世代はギターを弾く人が多いが私も例外ではなく少々爪弾く程度はするが、 はじめて買ったギターは安い粗悪品であったのを友人が見かねて中古だがいい音色の するギターをゆずってくれたおかげだと感謝している。

 名人は道具ではないというが、素人は道具である。

充分に検討したうえで目的に適合した後悔のない装置選択こそがレオロジーを利用 できるかどうかで最も重要な課題だと思う。