第12章 コンクール
コンクールに向けて、部員同士の結束を高め、士気を盛り上げるために「団結式」みたいなものをやってもよいでしょう。部員全員でコンクールの目標を設定して、ひとりひとり抱負を述べるなどして、全員で一つにまとまり音楽を作っていこうという意識を持たせます。音楽のような、集団で一つのものを作り上げるという形態においては、こういった精神面でのまとまりも欠かせません。
コンクールの選曲はかなり苦労します。なにしろ、選曲で結果がある程度決まってしまうようなものだからです。そのバンドに合わせた編成で、効果的な曲を選ぶのはとても大変です。音源があれば参考にしつつ、自分のバンドの弱い所・強い所を考慮して、選曲します。なお、あまり楽譜上で簡単な曲はコンクール向きではありません。ある程度難度が高い曲の方が、コンクールという場の性格上有利です。
また同じ曲をやるにしても、色々な編曲バージョンがあるという場合もあります。注意しましょう。
コンクールにおいて、全国大会につながる部門(中学・高校は50人編成)では、本番「自由曲」の前に「課題曲」を演奏します。コンクール課題曲というのは毎年、一般公募から選ばれた4曲と、作曲者に委嘱(いしょく)して作ってもらった1曲の計5曲が課題曲として設定されます。「行進曲・マーチ」の年と「行進曲以外の曲」の年があり、交互に実施されています。
コンクールで課題曲を演奏する団体は、例年11月前後に課題曲の楽譜・CDなどの申し込みがあるので、そのときに買いましょう(バンドジャーナルや全吹連ホームページに申し込み要項が掲載されます)。
コンクールでなによりも怖いのが、出演順をきめるくじ引きです。午前の早い時間に当たってしまったら、かなり不利となります。特に朝一番「朝イチ」は、統計的に金賞が少なくなっています。もし午前の早い時間に当たってしまったら、その対策をしなければなりません。周囲の騒音問題もありますが、できるだけ練習を朝型に切り替えましょう。朝、音が出せないなら、みんなで集まってラジオ体操をするのもいいでしょう。とにかく本番の時間にベストコンディションに持っていけるように、工夫した練習をしていきましょう。
クラシック編曲作品に多いのですが、吹奏楽編曲版の調が原曲の調(原調)と変わっている場合があります。そのときは、楽譜を原調に書き直すか、あるいは原調で編曲したものを買い直した方がよい場合もあります。吹奏楽はフラット系の楽器が多いので、調号がたくさんつかないようにという配慮で調が変えられることが多いのですが、やはり原調でやるのが一番でしょう。
曲を練習していくときは、「もっと音楽的に」と表現面の研究にかたよりがちなバンドもあるでしょう。しかしコンクールという場では、表現面も大事ですが、縦の線・音程などの「技術面」の方もおろそかにできません。いくらよい表現をしようとしていても、縦の線がバラバラだったり音程が悪かったら、聴く気にはなりません。指導者はこういった技術面の練習を積極的に取り入れていきましょう。
コンクールでは制限時間に厳しく、たった1秒のタイムオーバーでも失格になります。制限時間におさまる曲なら良いのですが、どうしてもおさまらない場合はカットが必要となります。「コンクールだからカットはしょうがないや」と割り切って考え、時間におさまるようにカットしましょう。カットをするときは、音楽的につながるかどうかを確認しましょう。またカットは、遅くとも本番の1週間前には確定しておきましょう。あまり本番直前にカットすると奏者も混乱しますので。
コンクールでは、椅子や譜面台をどのように配置するかを書いたステージ配置表を提出します。当然ですが、見やすく分かりやすく書きましょう。Bs.Cl.やBar.Sax.は、普通の椅子の代わりにピアノ椅子を使った方が吹きやすいということがありますので、奏者に確認を取りましょう。また、楽器を持ち替えするために椅子が余分に必要になる人もいますので確認しておきましょう。
コンクールでの楽器の搬入・搬出は、タイムテーブルにより時間が設定されています。搬出のときは、あらかじめトラック内にどのように積むかを考えておいて、なるべく短時間で完了しましょう(他団体の迷惑にならないためにも)。また運が悪いと、搬入・搬出の時に雨がふることもあります。その時は、極力楽器を濡らさないようにしましょう(特に打楽器)。ビニール袋で作った雨よけシートなどを用意しておくと安心です。
コンクールでは、搬入してきた楽器や私物を一時的に置いておく楽器置き場が確保されています。各団体でスペースが決まっているので、できるだけつめて置き、隣の団体の邪魔にならないようにしましょう。
コンクールでは審査員が各団体の演奏に点数を付けて、賞や代表校が決まります。「音楽に点数をつけるなんて」という声もありますが、とりあえずコンクールという場の性格上、これは仕方のないことです。審査してもらいたくなかったらコンクールに出なければいいことです(コンクールに出なくても、活発な活動をしているバンドもあります)。審査方法は都道府県・支部により異なります。「技術」「表現」についてそれぞれ5段階で評価したり、またいわゆる「上下カット」という、最高・最低点を各1名分カットし集計する方法をしたりと、色々あります。
これも都道府県・支部により異なることですが、賞の設定にもいろいろあります。全国大会ではすべての団体に金賞・銀賞・銅賞のいずれかが与えられます(失格は除く)。この方式を採用している所も多いです。しかし地区大会・県大会あたりだと「銅賞=参加賞」のようになってしまい、銅賞の価値があまりなくなってしまいます。金賞・銀賞・銅賞は一部の団体に与え、他の団体は「賞無し」としている所もあります。また金賞・銀賞・銅賞ではなく「優秀賞」「奨励賞」といった賞を設けている所もあります。地域によって色々ですね。
コンクールの本番が終わり、開放感に浸っているときに「写真撮影」がある大会があります。楽器を持っての全体の集合写真を撮った後、各パートorセクションごとに写真を撮ります。ここでの写真はもう一生の記念になるでしょう。また、全国大会級の大会になると、ここでの写真がバンドジャーナルに載ったりします。
私たちはコンクールの舞台に上がって演奏するだけですが、その裏では多くの人々が裏方の「運営」として働いています。各学校の先生や高校生などが、進行・誘導・駐車場・舞台配置・放送などでがんばっています。こういった人達のおかげで、私たちは良い環境で演奏できるのです。運営の方々の苦労も、忘れないようにしましょう。
コンクールが終わり三年生が引退するというバンドも多いと思います。三年生は、部活を引退するときに、考えてみてください。「自分は、自分の持っている知識の全てを後輩へ伝えたか」。三年生は、これまで先輩から教わったことを、後輩へ伝える使命があります。それが何代も続きやがて、そのバンドの伝統ができてくるのです。楽器の奏法、楽譜の知識、果てはコンクールの裏話などを伝え切って初めて、後輩にバトンが渡せるのです。残された後輩が路頭に迷わないように、先輩としての最後の仕事をやり遂げましょう。