第7章 合奏
最終的に音楽を作る人は誰でしょう。それは他でもない「指揮者」です。指揮者しだいで音楽ががらりと変わってしまいます。それだけ音楽における指揮者というのは、重要な存在なのです。しかし、コンクールでイマイチな演奏をする団体を見ると、指揮がめちゃくちゃな自己流の場合があったりして、指揮に対する意識の低さがしばしば問題になります。本番指揮を振る人は、指揮法を最低限身に付けておくべきです。それが奏者の信頼を得ると同時に、良い演奏につながります。身近に指揮のできる人がいれば教わるのが一番ですが、指揮法の教則本やビデオも出ていますので、独学も可能でしょう。指揮法入門の本としては『はじめての指揮法 -初心者のためのバトンテクニック入門-(斉田好男著/音楽之友社)』などがあります。
「悪い指揮者は口で語る。良い指揮者は棒で語る。最高の指揮者は目が語る。」と指揮者ワインガルトナーは言っています。指揮者が曲を止めて、「ここはこう振ります」「ここはこのくらいリタルダンドします」などと指揮の振り方やテンポの指示を出して、棒に従わせるのは良くありません。奏者は演奏中、そんな指揮者を見ようとは思いません。棒で指示を表現することが大事です。
奏者に「もっと表現豊かに」と注文をつける前に、指揮者自身で表現豊かな指揮ができているかを確認しましょう。表現豊かな指揮は、演奏を驚くほど良いものへと変えてくれます。最低でも、フォルテとピアノで振り方を変えましょう。
また、テンポを奏者に合わせて振って、テンポの決定権が指揮者でなく奏者にあるようなバンドは良くありません。指揮者が思い通りのテンポで振っているものの、奏者がついてきてくれないのは、指揮棒への信頼がないからです。独奏部をのぞき、テンポの決定権は指揮者にあることも忘れないでください。(ポピュラーの曲の時は、ドラムにテンポの決定権を持たせて、指揮は軽く振るという方法もあります)
奏者が楽器の練習を一生懸命やって、指揮者が指揮の練習をしないのはおかしいですね。指揮者の負担は大きいですが、奏者の期待に答えられるよう、がんばってください。
指揮者が指揮を振っているのに、奏者は楽譜とにらめっこ。そんなバンドを時たま見かけます。これでは、指揮者と奏者が隔離してしまっています。この場合、悪いのは指揮を見ない「奏者」でしょうか? いや、そうとは言い切れません。奏者が指揮を見ないのは、指揮者に原因がある場合もあります(実際、指揮者が変わると、とたんに奏者が指揮を見るようになることもあります)。ただテンポを示すだけで、ダイナミクスや表情の変化もまるでないような指揮を、奏者は見ようと思うでしょうか。そんな指揮を見るなら、楽譜を見ていた方がマシです。
奏者に「もっと指揮を見て」と注文をつける前に、自分は奏者が見る価値のある指揮をしているか、確認してください。
ある曲を指揮することになったら、まずその曲の「アナリーゼ(楽曲分析)」をします。その曲がどんな構造をしていて、この小節は全体の中でどんな役割をしているか、など曲を分析して、奏者に伝えます。学生である奏者に伝えるときはあまり専門的になり過ぎずに、分かりやすく伝えましょう。そして自分はこの曲をどう作っていきたいかを考えて、合奏の中で伝えていきます。指揮者は「ここはこうやりたい」とはっきりとイメージを持つことが大切です。ただし、あまり独断になり過ぎずに、ときには奏者に「ここはどんなイメージがいいかな」と意見を聞くことも大事です。奏者によって曲に対するイメージは多種多様ですが、それをまとめて一つのイメージとするのが指揮者の役目です。独奏部を除き「ここは各自自由なイメージで」という指示はやめましょう。まとまりません。
合奏での指導は、大きく分けて2種類あります。1.具体的な演奏法の指摘
「そこ、楽譜と違ってるよ」「アーティキュレーションをはっきり」「じゃあスラーをとってやってみて」など、具体的な指摘や練習法の提示。2.抽象論・精神論を語る
「もっとやさしい、水のようなイメージで」「表情豊かに、好きな人に聴かせるように」など、抽象的な説明。指揮者はまず1の「具体的な演奏法の指摘」を奏者に示し、奏者の信頼を得ることが必要です。その上で2の「抽象論・精神論を語る」の段階へいきましょう。奏者の側からすると、やはり具体的な指摘というのが嬉しいものです。その具体的な指摘が積み重なって、奏者が「あ、この指揮者の言うことは間違ってないな」と思い、奏者は抽象的な説明をより受け入れてくれます。
またパートリーダー・学生指揮者など素人は、無理に抽象論・精神論を語る必要はありません。下手な抽象論・精神論は、奏者を混乱させるだけです。むしろパートリーダー・学生指揮者は、具体的な演奏法の指摘に徹した方が良いと思われます。
具体的な演奏法の指摘をする際に指揮者に要求されるのは「楽器の知識」です。例えば、クラリネットがラとシを挟んだフレーズでなめらかにできないといったとき、「クラリネットは指使いの都合でラ−シの移行がスムーズにできない」という知識があるかないかで、指摘の仕方も変わってきます。「できないのはイメージが足りないからだ」と抽象論に頼っても、効果的ではありません。
指揮者の条件として「すべての楽器に精通していなければいけない」というものがあります。それはさすがに無理だとしても、少なくとも指揮者は、木管楽器1つ、金管楽器1つ、それと打楽器を経験しておくとよいでしょう。そうすると、合奏中、どうすれば演奏が良くなるのかを「具体的に」示すことができます。
指揮者はスコアを見ながら、全員が楽譜通りに吹けているかをまず確認します。基本的な合奏の進め方としては「曲の最初から見ていく→おかしい所があったら合奏を止める→その該当パート・セクションのみを取り出してやらせる」の繰り返しです。できていない箇所があったら、次の合奏までにパート練習でさらってくるよう指示します。ここで合奏の進め方の例をいくつかあげておきます。
・同じ動きをしている楽器同士でやらせる
「じゃあ、[A]から旋律をやっている人だけお願いします」など、同じ動きをしている楽器同士で吹いてもらう方法です。パターンとしては「旋律のみ(歌い方をそろえたり、旋律の受け渡しを確認する)」「伴奏のみ(マーチなら前打ち・後打ちをそろえる)」「木管のみ」「金管のみ」「打楽器のみ」など、色々考えられます。・少ない人数から合わせていく
縦の線、リズム、歌い方など、全員で合わせたい部分があるときは、まず少ない人数ずつで合わせてみましょう。はじめはパートごとでやらせて、パート内でしっかり合ったらこんどは「木管」「金管」という風にセクションごとで合わせてみます。そして最終的に全員で合わせます。時には一人ずつやってもらうのも良いでしょう。慣れてくると、合奏中に臨機応変に指導のパターンを考え出すことができますが、 慣れないうちは、その日の合奏をどう進めていくかをあらかじめ考えておくといいでしょう。
合奏で一番やってはいけないのは「ただ曲を全部通す」ことです。「ただ曲を通して注意を何個か言う」という合奏は、非効率的で奏者の信頼も得られません。曲を通した後に注意を並べるのではなく、おかしい所があったらすぐ合奏を止めて、その場で注意しましょう。
また、「そこはもっと〜〜して下さい」と注意しただけでは、奏者がその注意を理解しているか分かりません。ある箇所を注意したら、奏者がその注意を理解できたかを確認するため、必ず注意した該当パートだけ取り出して吹かせてみましょう。
合奏中は、どうしても音を聴きながらスコアに見入ってしまいがちです。しかし、指揮者はアナリーゼの段階である程度スコアを頭に入れておいて、合奏中はなるべく奏者の方を向いて指揮しましょう。その方が、奏者の信頼を得られます。
合奏をしていると、色々「もっとこうしてほしい」と思う所が出てくるでしょう。ここでは具体的に、この問題にはどんな練習法をしたらよいかの例をあげます。1.メロディーと伴奏のバランスが悪く、ごちゃごちゃしている
特に中低音・低音がメロディーになったときなどに起こる問題です。このときはまず「メロディーはもっとしっかりやってください。伴奏はもっとメロディーを聴いてやってください」と皆に言い、指示を楽譜に書き取らせます。そしてメロディーのパートだけやらせて、「伴奏の人は、このメロディーに軽く乗っかる感じで」と指示し、バランスを見ます。2.縦の線がそろわない
スラーがかかっているところで縦の線がそろわない場合は、まずスラーを取って、全部タンギングでやらせます。フレーズ感を無視し、縦の線を合わせることだけに集中させます。まだ合わないときは、テンポを落としてやってみます。タンギングで縦の線がそろったら、楽譜通りにやってみます。3.リズムがそろわない
複雑なリズムの時は、まず手拍子で合わせてみます。全員の手拍子がぴったり合ったら、次は楽譜の全部の音をベーにしてやらせます。音程を変えるという負担をなくし、ただリズムを合わせることだけに集中させます。そして最終的に楽譜通りにやらせます。
また、裏拍から出るリズムがうまく合わせられない時は、その表拍に音符を入れてやってみるのもいいでしょう。例えば「ッッタタター」というリズムだったら「タッタタター」にしてみるなどが考えられます。表拍に音符を入れるバージョンと入れないバージョンを交互に繰り返すなどして、楽譜通りのリズムでできるように合わせていきます。4.歌い方がそろわない
人によって、同じ楽譜でも「タータタ」「タンタタ」「タッタタ」と、微妙な歌い方の違いが出てきて、特にメロディーは、歌い方のニュアンスをそろえなければなりません。こういうときは歌い方の「基準」を作りましょう。メロディーを一人一人にやらせてみて、指揮者のイメージに一番近い歌い方をしている人を「基準」とし、他の人はその基準の人に合わせるようにします。「基準の人に吹いてもらう」→「奏者Aに吹かせる」→「基準の人に吹いてもらう」→「奏者Bに吹かせる」→……の繰り返しで、歌い方をそろえていきます。5.メロディーの和音のバランスが悪い
たいてい、メロディーは1stが担当し、メロディーの3度下などの「ハモリ(内声)」のパートは2nd,3rdが担当しています。しかし、特に金管パートにありがちなのが、1stの音域が高すぎてしっかり吹けていなく、逆にハモリの2nd,3rdの音が大きくなり、訳の分からないメロディーになってしまうことです。これを防ぐには、1stのレベルを上げることが一番ですが、どうしてもだめなら1stを増やすとか、他のパートに書き換えるとか、何らかの対策は必要です。6.音程・ピッチがそろわない
合奏中、音程がそろわずに生じる「うなり」を発見したら、指揮者は具体的に「どこのパートのどの音が合っていないか」を耳で判断して、奏者に伝え、実際に音を出させ、合わせます。また、和音が合わないときについては「4-01. 純正調を目指して・4-02. 純正調ヘの指導」をご覧ください。
ここでは、実際に合奏をどうやって進めていけばよいかを、以下の合奏風景を例にしてみてみましょう。部長「それでは、合奏を始めます。起立、礼」 ←挨拶はしっかりしましょう
全員「お願いします」
指揮者「では始めます。最初からいきます」
全員「はい」
[演奏]
指揮者「(ん?)はい、ストップ。[A]のアウフタクトからアルトお願い」←おかしいと思ったらすぐ止めて指摘
Alt.Sax.「はい」[演奏]
指揮者「あ〜。楽譜をよく見て。フラット落としてますよ」←「楽譜通りに吹けているか」の確認
Alt.Sax.「あっ、すいません」
指揮者「はい、もう一度」←指摘したら直ったかどうか必ず確認
[演奏]
指揮者「はい、OK。じゃあもう一度全員で頭から」←「だれが」「どこから」やるのかをはっきり指示
全員「はい」
[演奏]
指揮者「ストップ。ここの[B]からで、メロディーと伴奏とのバランスが悪いです。メロディーはもっとしっかり歌ってください。伴奏はもっとメロディーを聴いてやってください」
全員「はい」
指揮者「じゃ、そこのメロディーの人だけやって下さい」
[演奏]……
◆グループ分け
指揮者はスコアを見たら、各パートを下の3つに分類しましょう。1.メロディーを受け持つパート
2.オブリガートを受け持つパート
3.伴奏を受けもつパート3つに分類したら、各グループごとにやらせてみましょう。まずメロディーの人だけやってもらい、歌い方をそろえます。次に、メロディーにオブリガートの人を入れて、バランスを見ます。そして伴奏だけやってもらい、リズムをそろえます。こうして各パーツができ上がったら、全体で合わせてみましょう。大事なのは「ただ全員で通すだけの合奏にならないようにする」ことです。少人数のグループでやってもらいながら、工夫した合奏を心掛けましょう。
◆ダイナミクスの違い
スコアの分析の時に注意したいのが、同じ箇所でパートによってダイナミクスが違うといったときです(例えば、w.w.はmfなのにTp.はmpとなっているなど)。こんなときは「作曲者はなぜダイナミクスを違えて書いているのか」を考えて、的確なバランスの指示をしましょう。◆主題
スコア分析の際は、まずその曲の主題がどこに出てきて、どう変化していくかをつかんでおく必要があります。また、その曲の主題となる「リズム」が出てくる曲も多いものです。例えば「マーチ・グリーン・フォレスト(99年課題曲)」だったら「ターンターラタッタッタッタッター」というリズムが、旋律に、裏メロに、あるいは伴奏にと、様々な部分に同じリズムが出てきます。こういった曲の「主題リズム」は、全員で吹き方をそろえておくと、曲に統一感が出ますので、よく練習しておきましょう(試しに全員ベーでリズムを吹かせてみるなどして)。
合奏というと普通、曲の頭からやって、おかしい箇所があったら曲を止めて注意します。このように曲の頭から練習していくやり方だと、時間が無くなって曲の後半の指導が不徹底となる場合があります。それを防ぐために、時には曲の途中から合奏を始めることも必要でしょう。これと関連して、合奏での指導の際には、指導すべき場所の優先順位を曲全体の中で考えて決めましょう。合奏は限られた時間しかできません。他に目立つマズい箇所があるのに、あまり目立たない些細な箇所ばかり指導しているのは好ましくありません。細かい所はまず我慢して、目立つ重要な箇所を先に指導しましょう。練習箇所の取捨選択も必要です(特に時間のかけられない曲や、本番直前の場合はなおさら)。
1時間続けて合奏をしていると、指揮者・奏者共に、体力面でも精神面でも疲れてきます。合奏は適度に休憩を入れながら行いましょう。また、金管楽器は他の楽器よりも疲れやすいものです。合奏中は金管楽器奏者の様子を気にしてください。全員でただ曲を全部通して指揮者が注意をいくつか言い、また全員で通して……という合奏は、スタミナ的にも良くありませんし、非効率的です。指揮者は合奏中、まずい箇所があったらその場で止めて指摘をしましょう。またずっと全員に吹かせるのではなく、各セクションの人のみにやってもらうなど工夫をして下さい。ずっと全員に吹かせている合奏だと、金管楽器奏者のスタミナが持ちませんし、合奏の効果も薄れます。
楽曲を分析する「アナリーゼ」の他に、「作曲者はどこの国の人か、どんな時代の人か」「曲名に持たされている意味」を調べることも重要です。これが「曲の精神的理解」です。コンクール曲では必須事項です。こういったことが分かって演奏すると、分からず演奏していた時よりもっと表現豊かな演奏ができるでしょう。指導者が一括して調べてみんなに伝えてもよいし、個人で調べても良いでしょう。CDの解説書を見たりインターネットを活用したりしながら、演奏する曲について理解を深めましょう。
自分達が演奏する曲をプロの団体が演奏しているCDがあったら、ぜひ部員みんなで聴きましょう。特に原曲がオーケストラ曲の場合は必須です。演奏にあたっては「こう吹きたい」というイメージが必要です。しかしイメージは、口ではなかなか説明できません。しかしプロのCDがあれば、聴くだけで「こんなふうに演奏したい」というイメージを、奏者ひとりひとりに簡単に作らせることができます。
時には同じ曲を色々な団体が演奏していることがあります。そのときはその色々な演奏を聴いて、「ここの部分はこのCDのようなイメージで」ということを全員で統一する必要があります。
例えば楽譜にピアニッシモと書いてあったら、ピアニッシモで吹けというのではなく「聴衆の所にピアニッシモで聴こえるように吹け」という意味になります。ここを間違えないようにしてください。いくらピアニッシモで吹いているつもりでも、聴衆に伝わらなかったら意味がないです。特に金管楽器でミュートを付けているときは、指定ダイナミクスよりも少し大きめで吹かないと聴衆には伝わりにくいので注意してください。p以下の弱奏時に、音質が悪くならないようにしましょう。弱奏時でも、息のスピードは速く、また音の立ち上がりははっきりとするように指示しましょう。
指揮者・学生指揮者は「次の合奏は、テンポ○○でやるので、そのテンポでパート練習をしておいてください」とはっきり伝えましょう。曲を配りたての時はゆっくり目のテンポでやり、合奏を重ねるごとにテンポを上げていきます。本番2〜3週間前にインテンポに持っていければOKです。あせって速いテンポで練習しても効果は上がりませんので、注意しておきましょう。
特にコンクール曲のスコアは、コピーして全員に配っておきます。そして奏者は合奏中、指揮者が他のパートを指導しているとき、すぐに自分のスコアを取り出して、いまそのパートが注意されているページを見ましょう。「他パートの注意だから自分には関係ない」では、全体がまとまった演奏はできません。他パートが注意されていることを聞いて、じゃあ自分はどう吹かなければならないか、ということを考えてください。
全体合奏の他に、少人数で合わせる分奏・セクション練習も必要です。特に人数が多いバンドだと、全体合奏では気付かない箇所を指導するために、少人数ずつ分けて練習するのも効果的です。例えば合奏で、木管ができていないので木管の注意ばかりして、金管は休んでばっかりという状態は効率的ではありません。そのような時は、木管のみを集めて分奏し、他の楽器はパート練習をすることで、練習の効率化がはかれます。
合奏中の指摘は、どうしても旋律など目立つパートに多くなってしまいます。そうなると、合奏で一回も指摘しなかった人に「自分は今日の合奏でなにも注意されなかった…。」という思いを持たせてしまう危険があります(特に低音パートなどに)。確かに目立つパートには色々な指摘をしたくなりますが、だからといって目立たない伴奏パートに全然指摘しないのはいけません。目立たないパートだって、完璧にできているとは限りません。指揮者は合奏中、できるだけ色々なパートの音を聴いて、全員に最低一回は指摘できるようにしましょう。
合奏中は、指揮をしながらみんなの音を聴くので、どうしても客観的な耳で演奏を聴くことはできません。そこで必要となってくるのは「自分達の演奏を録音して、客観的に聴く」ことです。これにより、合奏中では分からなかった問題点が、はっきりと分かります。また自分達の演奏とプロの演奏を聴き比べて「どこが足りないのか」をつかみましょう。また、パート練習で録音を活用することもできます。1st, 2nd, 3rdのバランスを見たいときなどに役に立ちます。部室に録音機を常に置き、いつでも録音ができるようにしておきましょう。
指揮者は合奏中、「あまりできてないけど、こんなものでいいか」と、妥協するような発言はやめましょう。指揮者が妥協してしまったら、奏者は「こんなもんでいいのか」と考え、努力をしなくなります。満足してしまったら音楽はおしまいです。奏者に常に向上心を持たせられるような合奏をしましょう。同様に、指揮者の「時間がないから、まあいいや」という発言も好ましくありません。だったら「今は時間がないからできないけど、しっかりパート練習でやっておくように。次の合奏で確認します」と言って、妥協しない姿勢を見せましょう。
「うちのバンドにはOb.はいないが、Ob.でソロが出てくる」といった場合には、もちろん他のパートに書き換えなければなりません。特に中編成・小編成のバンドの指導者は、曲をやるときに、Ob., St.B.などバンドにない楽器が重要な動きをしていないかを確認する必要があります。書き換えの際は、Ob.はCl.に、St.B.はTub.に書き換える場合が多いのですが、その曲に合った最適な書き換えを考えましょう。ちなみに、St.B.の楽譜は1オクターブ高く書かれているので、書き換えの際注意しましょう。また、Tp.で特に多いのが「音が高くて出ないので、1オクターブ下げていいですか」といった問題です。1オクターブ下げたらバランスが崩れる場合も多いので、指導者はスコアを分析しながら、臨機応変な対応をしてください(無理して高い音を出させるのはダメですが)。またこういうときは必ず指導者に言ってから楽譜を変更するようにと指導しておきましょう(勝手に楽譜を変えられたら困りますので)。
吹奏楽の上手いバンドは、返事がきちんとできている場合がほとんどです。合奏中、指摘したパートがはっきりと「はい」と返事をする。これはとても大事なことです。返事は、指摘の内容を理解して実践へとつなげるきっかけとなります。また合奏中、指摘したパートが返事をしない場合、その指摘が分かりづらくて理解できないというサインとなります。合奏中はもちろんですが、普段の部活中から返事がしっかりできるように指導しましょう。(返事の例)
「[B]のクラ、ちょっとやってみて」「はい」「うーん、もっとスラーがなめらかになるといいな」「はい」「もう一回」
「明日部費を持ってきてください」「はい」
特にマーチでは「前打ち」と「後打ち」の縦の線とバランスが問題になります。まず縦の線です。前打ちの縦の線は揃えやすいのですが、後打ちはなかなか大変です。メトロノームを使って「タタタタ・タタタタ/ッタッタ・ッタッタ」と手拍子で練習したりしてマスターしておきたいものです。打楽器の人はもちろん、ホルンやトロンボーンに後打ちが来ることが多いので、しっかり練習しておきましょう。次にバランスです。一般にマーチでは、後打ちよりも前打ちがしっかりしていなければなりません。後打ちの方が音量が大きくなってしまうと、とても歩きづらい変なマーチになってしまいます。合奏で、バランスを調整しましょう。
合奏前に指揮者が、ひとりひとりハモデレを使ってチューニングをしていくバンドがあります。このようにするとチューニングは正確にできますが、合奏前のチューニングだけで20〜30分はかかってしまい、練習時間が短いバンドにはつらいものがあります。一つの方法としては、合奏前に各パートごとにチューニングをしてきてもらい、合奏ではパートごとやセクションごとにチューニングを確認するだけにする方法があります。これだと時間はかなり短縮できます。この場合、各パートリーダーにチューニングの方法をしっかり教えておく必要があります。例えば、チューナーでパート全員をチェックさせた後、パート内の全員で一つの音を出させてみて、うなりが無くなるように耳を使って合わせる、などの方法が考えられます。
曲中でダイナミクスの変化がある時、自分達は音量等を変えて吹いているつもりでも、聴いてる側からするとあまり変わったように感じない事がしばしばあります。ダイナミクスは「大げさにわざとらしく」変化させてやっと聴衆に伝わるものです。聴いてる側からすると、ダイナミクスの変化がまるで無い演奏はとてもつまらないものなので、工夫してダイナミクスの変化をはっきりとつけたいものです。まずcresc.の際には「始点は音量を抑え目にして入る」ことが大事です。始めから音量が大きい所からさらにcresc.しようとしても無理な話です。cresc.をする時は、その始点で音量が大きくなり過ぎないようにして、cresc.に入ったら効果的に音量を上げていきます。指揮の変化に注意しながら、全員でcresc.の仕方をそろえましょう。
次にdim.の際には「あまり早く音量を落とし過ぎない」ことが大事です。どうも奏者はdim.の指示を見た途端に音量をかなり落としてしまう傾向がありますが、これでは効果的なdim.とはなりません。dim.がかかっている範囲いっぱいを使いじわじわと音量を落としていくのが効果的なdim.を行なうコツです。これも指揮でdim.の仕方を指示して奏者と合わせていきましょう。